市川崑監督の『東京オリンピック』を見る

先週、NHK-BSで市川崑監督の『東京オリンピック』1965年(昭和40年)が放送された。
本来であれば、今日が東京五輪開幕であった。
新型コロナの影響で1年延期になったが、中止になる可能性もかなり高いだろう。
東京五輪が昭和39年、この映画の公開は翌年の昭和40年、当時の興行記録を超えたとあるが、2時間50分の超大作である。

この映画は前にも見たことがあったが、開会式の様子からいくつか発見があった。

台湾の存在である。

1964年当時、中華人民共和国はIOCを脱退中で、台湾は正式メンバーだった。
中国は1979年にIOCに復帰するまで、戦後の五輪には参加していない。
一方の台湾が中華台北として五輪に参加するのは1984年の冬季五輪から。
なので、東京五輪は台湾として参加していることになっている。
が、開会式で台湾選手団が入場してくる映像を見ると

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プラカードには TAIWAN
その下に漢字で 中華民国
選手団の旗手は当時の陸上界のスター 楊伝広で掲げた国旗は 青天白日旗

これには少し驚いた。

この時代は、中国と台湾以外にも東西に分裂した国がいくつかあった。

西ドイツと東ドイツ

韓国と北朝鮮

北ベトナムと南ベトナム

だが、それぞれの参加状況は以下のようになる。

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ドイツが東西に分かれていた時代に、統一ドイツ選手団は、1956年のコルティナダンペッツォ冬季五輪から1964年の東京五輪までの6回の五輪で組まれている。
当時、日本は東ドイツと国交はなかった。

そして、もう今はないスポーツ大国ソビエトもアメリカのあとに堂々入場している。
旗手はジャボチンスキーだったはずだ。

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June 16, 2020

戦後唯一 オリンピックを返上したまち

オーストリアのインスプルックは、1964年と1976年に冬季オリンピックを開催したまちである。
これだけの短期間に2回オリンピックを開催したまちはない。
なぜこのようなことができたのだろうか

1964年と1976年のインスブルック冬季オリンピックの大会ロゴ ほとんど同じ Picture_pc_93798f59a0abcedc2e510026793cd

当初1976年の冬季オリンビック開催地に決定していたのは、アメリカ コロラド州のデンバーであった。
コロラド州はアメリカ独立から100年後の1876年に誕生した州で、州誕生100年目にあたる1976年に向けて、大々的なイベントを計画していた。
そこで持ち上がったのが、冬季オリンピック招致である。
他に立候補していたのは、シオン (スイス)、タンペレ (フィンランド)とバンクーバー(カナダ)。
デンバーとシオンのデッドヒートの結果、デンバーが開催地に決まった。

第69回IOC総会 オランダ アムステルダム 1970年12月5日

1976年冬季 デンバー 米国
シオン スイス
タンペレ フィンランド
バンクーバー-ガリバルディ カナダ
29
18
12

9
29
31

8
-
39
30
-
-

ところが、冬季オリンピックを開催するにあたり、地元コロラド州が負担する費用は500万ドル(当時)という莫大な金額。
そんな費用をかけてまで開催するべきかと、疑問の声が上がるようになった。
環境問題や観光への影響、直前のミュンヘン夏季オリンピック開催中に起こったテロの影響なども懸念され、市民グループによる開催返上運動が盛んになっていった。
そこで1972年11月、ニクソン対マクガバンの大統領選挙と同時にオリンピック返上が住民投票にかけられた。
開催派35万票に対して返上派は52万票、大会返上が決定した。
これを受けてIOCはインスブルックを代替開催地としたのである。

冬季オリンピックは夏季オリンピック以上に、施設を整備するのに時間がかかる。
デンバーが開催返上した時点で、新たな開催地を決めることは難しかった
そこで既に大会開催経験のあるグルノーブル(1968年開催 フランス)か、インスブルック(1964年開催 オーストリア)で行うのが妥当と判断し、オーストリア政府の後押しの強かったインスブルックに決まったというわけだ。

興味深いのはここからだ。
インスブルックでの2回目のオリンピック開催が決まると、1980年冬季才リンピック開催地にアメリカのレークプラシッド (ニューヨーク州)が正式に名乗りを上げた。
開催地決定の直前になって、対立候補のバンクーバーが立候補を取り下げたため、無投票で開催地に決定している。
商業主義が確立されていなかった1970年代は、最もオリンピックの開催が苦しかった時期である。
同じアメリカ人の都合で返上しておきながら、何ごともなかったようにまた手を挙げる。
こんなことができるのはアメリカだけだ。

 

 

 

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