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July 01, 2004

松下電器のオリンピック戦略

Q.オリンピック会場に広告はない。

 

1.○
2.×

 

現在、佳境を迎えているサッカーの欧州選手権EURO、スタジアムにはMASTERCARD HYUNDAI JVCなどのW杯でもおなじみの企業のロゴが並んでいる。巨大なスポーツイベントと企業スポンサーとは蜜月状態であるといわれている。

一方のオリンピック、メイン会場、プールあるいはサッカースタジアムを思い起こしてほしい。企業ロゴはあっただろうか。
実はない。オリンピック会場に広告は一切ないのである。

オリンピック商戦たけなわである。HDDレコーダー、プラズマテレビ、景気回復の兆しが見える中デジタル関連商品の売上が日本の景気を押し上げている。
松下電器のCMを見たことがあるだろう。浜崎あゆみ、ボブサップあるいは塚原直也、室伏広治の出演しているCMにはオリンピックマーク(五輪ロゴ)が使われている。

6月6日に聖火リレーが40年ぶりに東京を走った。東京からソウル、北京へ行き現在はヨーロッパを回っている。
この世界を回る聖火リレーをサポートしているのはサムスン電子とコカコーラ。
松下電器もサムスンもコカコーラもTOP企業なのである。

TOPとはIOCが1988年に導入したスポンサー制度の略称で、全世界で五輪ロゴを利用した広告や製品販売の権利が認められている。
現在TOP企業は11社。
次のようなカテゴリー分けがなされている。

ノンアルコール飲料  コカコーラ(米)
クレジットカード  VISA(米)
国際英字出版  タイム誌(Sports Illustrated)(米)
フィルム・写真画像  イーストマン・コダック(米)
コピー・ファックス機器  ゼロックス(米)
レストランサービス  マクドナルド(米)
生命保険  ジョン・ハンコック(米)
時計・計測機器  スウォッチ(スイス)
無線通信機器  サムスン電子(韓)
AV/放送機器・記録メディア  松下電器産業(日)
IT関連   アトス・オリジン(仏)

公式サイトによると、19億6200万ユーロ、約2650億円これがアテネオリンピックの予算額である。
この内スポンサー企業がで5億7000万ユーロ(約770億円)以上を提供する。そしてこのTOP企業が支払う契約料は11社で合計2億7200万ユーロ(約367億円)。詳細は秘密といわれているが、平均すると1社あたり33億円になる。

TOPスポンサーになれる企業は、一つのカテゴリー(事業分野)で1社のみ。
協賛することによって得られる権利は、1.全世界で五輪のマークやマスコットを宣伝活動に使える 2.五輪の運営委員会に納入する第一交渉権を獲得できる 3.五輪のチケットやホテルを優先的に購入できるの3種類。

コカコーラ、VISA、タイム誌、コダック、スウォッチ、そして日本の松下電器産業は、TOPスポンサー制度が導入された1988年のカルガリー/ソウルオリンピックから連続してスポンサーとして名を連ねている。

松下電器の当時のカテゴリーはビデオ機器分野。
リレハンメル/アトランタオリンピックではAV機器のカテゴリー。
このときに世界の多くの放送局で放送機材にソニー製品に変わって松下製品が採用されたとも聞く。
ソルトレークシティ/アテネオリンピックではSDカードやディスクなど、記録メディアにまで拡大されている。

TOP企業は先述の契約料以外にもイベント運営や機器の提供を行なう。
松下の場合、機器の負担が大きいため総額では100億円、さらに大会中200人の技術者を動員するといわれている。
果たして、それだけのメリットはあるか。

先に、オリンピック会場内には一切の広告がないと書いた。が、実際は1カ所だけ企業ロゴが表になっているところがある。
それはメイン会場の巨大な映像設備。
アトランタでもシドニーでも「Panasonic」の文字が輝いていた。
アテネオリンピックの開会式、Panasonicのロゴがあるかどうか、確認してみよう。
                        ★
TOP企業制度が始まる以前から、IOCと二人三脚でオリンピックを育ててきたIBMがTOP企業から撤退したのは、インターネットの権利を巡る衝突が原因であるといわれている。(アトランタオリンピックで不手際が問題になったのも事実だが)
IBMは「eビジネス」戦略の一環としてインターネットに関する権利を独占しようと考えていた。
対するIOCは、インターネットがテレビに並ぶ有力メディアに育つと考え、IBMの権利をハードウエア及びソフト開発に限定しようとし、決裂したといわれている。

さほど遠くない将来に、インターネットがテレビを超える時代が来るのではないだろうか。
またインターネットとテレビの合従連衡が起き、新たな巨大メディアの誕生も予想の範囲内である。

 

 

 

 

 

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