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July 07, 2004

巨大なオリンピックビジネス テレビ放映権

Q.アメリカで最も視聴率の良い五輪競技は何でしょう。

答え.フィギュアスケート(女子フリー)

アテネ五輪の女子バレーの試合時間が決まった。
1次リーグの内3試合が日本時間の午後8時から、1試合が午後10時から、1試合が午後5時からだそうだ。
ヨーロッパで開催される五輪はバルセロナ大会のように昼夜逆転になると思っていたので、ちょっとほっとしたが、恐るべきは日本のテレビ局である。
五輪最終予選で瞬間最高視聴率48.4%を稼ぎ出した女子バレー。
ウラの巨人戦を再びふっ飛ばしそうである。

五輪やW杯の度に放映権がクローズアップされる。
五輪のテレビ放映権はIOCと各国の放送局が交渉して決めている。
アテネ五輪の日本向け放送は、NHKと民間放送連盟が約1億5500万㌦で契約をした。

アメリカABC放送が、76年のモントリオール大会を独占放送し、3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)の視聴率争いで最下位から一躍トップに踊り出た。
北米で開催の五輪が、アメリカで高視聴率を取った良い例だ。
ABCにあやかろうと考えた(当時も今も視聴率の芳しくない)テレビ朝日が、モントリオール大会の4.5倍もの大金を支払い、独占放送を企てたのが80年のモスクワ大会。
五輪のような巨大国際イベントは民放には手が出せず、NHKの独占中継が当たり前だった時代、このニュースは、日本中をあっと言わせた。
社名がNETからテレ朝日に改称したばかりで、社運を賭けたCI事業だったと記憶している。
ところが、日本初の民間放送による五輪中継独占は、契約時は予期もしなかったボイコット騒動に巻き込まれていく。

日本の不参加で巨額の放映権料を埋めきることは当然出来ず。
日本選手の出ていない五輪に国民が関心をもつわけもなく、開会式、閉会式のほかは、早朝にダイジェスト放送、深夜は予選を延々と放送していた。
テレビ朝日のスポーツアナがモスクワに大挙して出張中、東京が手薄になり、入社早々の古館伊知郎氏がプロレス等に起用され頭角を現したというまことしやかな話も残っている。

東西冷戦の最中、ボイコットは予期できなかったとしても、何らかなアクシデントに巻き込まれる可能性はあり得たのだから、どの程度の保険をかけていたのか、詰めの甘さも感じられる。
テレビ朝日以外の他局は映像を使用するのは24時間後、ニュースでも3分以内といった、五輪放送の制限が細目まで決められていた。
余談ながら、テレビ朝日は第1回世界陸上(83年ヘルシンキ)も独占中継したが、その後NTVを経て現在はTBSが中継している。

NHKと他の民放は、その後の五輪においては独占をしないことで申し合わせ、以後、JP=ジャパンプール、JC=ジャパンコンソーシアムで契約することになっている。
放映権の負担はNHKが8割、民放の合計で2割といわれているが、今年のアテネ大会の日本向け放映権は円建てなら170億円強、モスクワ大会の10倍近くにまで高騰している。
4年前のシドニー大会は、日本にとっては時差が少なく、好条件のCMが集まった。
一方、世界最大の放映権を負担するアメリカでは、時差のため、視聴率が悪く、NBCはスポンサー企業に補償を余儀なくされている。

●日本むけ五輪放映権料
   年   ドル建て      円建て     契約対象
1960年     5万㌦                NHK
1964年     50万㌦   1億8000万円    NHK 
1968年     60万㌦   2億1600万円    NHK
1972年    105万㌦   3億7800万円    NHK
1976年    130万㌦   3億9000万円    JP
1980年    850万㌦   18億7000万円    TV朝日 
1984年   1850万㌦   46億2500万円    JP 
1988年   5000万㌦   77億5000万円    JP  
1992年   5750万㌦   88億円         JC  
1996年   9950万㌦  104億4750万円    JC  
2000年 1億3500万㌦  142億7000万円    JC
2004年 1億5500万㌦  170億5000万円    JC
2008年 1億8000万㌦       

●欧米向五輪放映権料
   年   対米ドル権料  ネットワーク  対欧州ドル権料
1960年      60万㌦    CBS      60万㌦
1964年     100万㌦    NBC      38万㌦
1968年     850万㌦    ABC      100万㌦ 
1972年     1350万㌦    ABC      170万㌦
1976年    2500万㌦    ABC      455万㌦
1980年    8500万㌦    NBC      595万㌦
1984年  2億2500万㌦    ABC     1980万㌦
1988年  3億㌦        NBC     2800万㌦
1992年  4億0100万㌦    NBC     9000万㌦
1996年  4億5600万㌦    NBC   2億5000万㌦ 
2000年  7億1500万㌦    NBC   3億5000万㌦
2004年  7億9300万㌦    NBC   3億9400万㌦
2008年  8億9400万㌦    NBC   4億4300万㌦

現在、五輪中継番組にはIOCやJOCのスポンサー企業が、選手の活躍を交えた映像で
企業イメージや製品をPRしている。
一連の放映権の高騰は、CMでの選手の肖像権を誰が保有するかの問題もクローズアップしている。

昨年の秋JOCは、新マーケティングプログラムを打ち出し、2005年以降は、選手の肖像権が個別管理されることになる。
これは、現在マラソンの高橋尚子や競泳北島康介、柔道田村亮子などが一括管理から外れ、
CM出演をほぼ自由にしているように、希望者は自由にCM出演が可能になるというものだ。

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