巨大なオリンピックビジネス テレビ放映権
Q.アメリカで最も視聴率の良い五輪競技は何でしょう。
答え.フィギュアスケート(女子フリー)
アテネ五輪の女子バレーの試合時間が決まった。
1次リーグの内3試合が日本時間の午後8時から、1試合が午後10時から、1試合が午後5時からだそうだ。
ヨーロッパで開催される五輪はバルセロナ大会のように昼夜逆転になると思っていたので、ちょっとほっとしたが、恐るべきは日本のテレビ局である。
五輪最終予選で瞬間最高視聴率48.4%を稼ぎ出した女子バレー。
ウラの巨人戦を再びふっ飛ばしそうである。
五輪やW杯の度に放映権がクローズアップされる。
五輪のテレビ放映権はIOCと各国の放送局が交渉して決めている。
アテネ五輪の日本向け放送は、NHKと民間放送連盟が約1億5500万㌦で契約をした。
アメリカABC放送が、76年のモントリオール大会を独占放送し、3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)の視聴率争いで最下位から一躍トップに踊り出た。
北米で開催の五輪が、アメリカで高視聴率を取った良い例だ。
ABCにあやかろうと考えた(当時も今も視聴率の芳しくない)テレビ朝日が、モントリオール大会の4.5倍もの大金を支払い、独占放送を企てたのが80年のモスクワ大会。
五輪のような巨大国際イベントは民放には手が出せず、NHKの独占中継が当たり前だった時代、このニュースは、日本中をあっと言わせた。
社名がNETからテレ朝日に改称したばかりで、社運を賭けたCI事業だったと記憶している。
ところが、日本初の民間放送による五輪中継独占は、契約時は予期もしなかったボイコット騒動に巻き込まれていく。
日本の不参加で巨額の放映権料を埋めきることは当然出来ず。
日本選手の出ていない五輪に国民が関心をもつわけもなく、開会式、閉会式のほかは、早朝にダイジェスト放送、深夜は予選を延々と放送していた。
テレビ朝日のスポーツアナがモスクワに大挙して出張中、東京が手薄になり、入社早々の古館伊知郎氏がプロレス等に起用され頭角を現したというまことしやかな話も残っている。
東西冷戦の最中、ボイコットは予期できなかったとしても、何らかなアクシデントに巻き込まれる可能性はあり得たのだから、どの程度の保険をかけていたのか、詰めの甘さも感じられる。
テレビ朝日以外の他局は映像を使用するのは24時間後、ニュースでも3分以内といった、五輪放送の制限が細目まで決められていた。
余談ながら、テレビ朝日は第1回世界陸上(83年ヘルシンキ)も独占中継したが、その後NTVを経て現在はTBSが中継している。
NHKと他の民放は、その後の五輪においては独占をしないことで申し合わせ、以後、JP=ジャパンプール、JC=ジャパンコンソーシアムで契約することになっている。
放映権の負担はNHKが8割、民放の合計で2割といわれているが、今年のアテネ大会の日本向け放映権は円建てなら170億円強、モスクワ大会の10倍近くにまで高騰している。
4年前のシドニー大会は、日本にとっては時差が少なく、好条件のCMが集まった。
一方、世界最大の放映権を負担するアメリカでは、時差のため、視聴率が悪く、NBCはスポンサー企業に補償を余儀なくされている。
●日本むけ五輪放映権料
年 ドル建て 円建て 契約対象
1960年 5万㌦ NHK
1964年 50万㌦ 1億8000万円 NHK
1968年 60万㌦ 2億1600万円 NHK
1972年 105万㌦ 3億7800万円 NHK
1976年 130万㌦ 3億9000万円 JP
1980年 850万㌦ 18億7000万円 TV朝日
1984年 1850万㌦ 46億2500万円 JP
1988年 5000万㌦ 77億5000万円 JP
1992年 5750万㌦ 88億円 JC
1996年 9950万㌦ 104億4750万円 JC
2000年 1億3500万㌦ 142億7000万円 JC
2004年 1億5500万㌦ 170億5000万円 JC
2008年 1億8000万㌦
●欧米向五輪放映権料
年 対米ドル権料 ネットワーク 対欧州ドル権料
1960年 60万㌦ CBS 60万㌦
1964年 100万㌦ NBC 38万㌦
1968年 850万㌦ ABC 100万㌦
1972年 1350万㌦ ABC 170万㌦
1976年 2500万㌦ ABC 455万㌦
1980年 8500万㌦ NBC 595万㌦
1984年 2億2500万㌦ ABC 1980万㌦
1988年 3億㌦ NBC 2800万㌦
1992年 4億0100万㌦ NBC 9000万㌦
1996年 4億5600万㌦ NBC 2億5000万㌦
2000年 7億1500万㌦ NBC 3億5000万㌦
2004年 7億9300万㌦ NBC 3億9400万㌦
2008年 8億9400万㌦ NBC 4億4300万㌦
現在、五輪中継番組にはIOCやJOCのスポンサー企業が、選手の活躍を交えた映像で
企業イメージや製品をPRしている。
一連の放映権の高騰は、CMでの選手の肖像権を誰が保有するかの問題もクローズアップしている。
昨年の秋JOCは、新マーケティングプログラムを打ち出し、2005年以降は、選手の肖像権が個別管理されることになる。
これは、現在マラソンの高橋尚子や競泳北島康介、柔道田村亮子などが一括管理から外れ、
CM出演をほぼ自由にしているように、希望者は自由にCM出演が可能になるというものだ。
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