女子フィギュア台所事情
先週末 韓国の江陵(カンヌン)国際アイスセンターでフィギュアスケートの四大陸選手権が行われた。結果はご存知の通り、村主章枝が恩田美栄を抑え優勝。荒川静香、安藤美姫に次ぐ3人目の世界選手権代表の座を手中にした。
日本の女子は強く、世界的にも注目が高いが、この大会の模様を伝える朝鮮日報(韓国)に興味深い記事を見つけた。
『日本では過去にも伊藤みどり、佐藤有香、村主章枝などが活躍し、最近でも荒川静香、安藤美姫ら世界トップを争う選手たちを輩出している。
こうした背景には政府の積極的な投資があった。90年代初めから世界的なコーチを招き、米国や欧州での合宿を集中的に行うなど、支援を惜しまなかった。』
ちょっと待てよ、日本政府がフィギュアスケートに対して積極的な投資をしているとは知らなかったな…(笑)。
「支援を惜しまない」なんて、湯水のごとく強化費が使えるみたいじゃないか。
どっからこういった誤解が生じるのだろう。
確かにアテネ五輪のあとこんな記事も出ている。
『日本政府は「JOCゴールドプラン」の実現を目指し「ニッポン復活プロジェクト」を創設した。その一環として今年、JISS周辺用地買収費用として約70億円の予算を計上。スポーツ先進国には必ず存在する「ナショナルトレーニングセンター」の創設に動き出した。医科学・研究施設の意味合いが強いJISSが拡充されれば、日本スポーツ界待望のトレセンが完成する。(スポーツニッポン2004年8月31日)』
ナショナルトレーニングセンターについては政府主導で創設に動き出しているようだが、特定の競技強化に政府が意向を示していくなんて事はあるの?
昨年の12月にはこんな記事だ。
『「ニッポン復活」に72億円=JOC補助は3億円増-05年度予算財務省原案
2005年度予算の財務省原案が20日に内示され、文部科学省の世界トップレベル競技者育成を目標とする「ニッポン復活プロジェクト」に72億800万円が計上された。日本オリンピック委員会(JOC)に対する国庫補助金の増額に伴い、全体で前年度比2億6200万円増となっている。
JOCへの国庫補助金は23億400万円で、前年度よりも2億7800万円増加。概算要求の約5億円増には届かなかったが、空前のメダルラッシュに沸いたアテネ五輪の好成績を背景に、3億円近い拡充が認められたとみられる。JOCは国内外の強化合宿の充実や専任コーチの増員などに充てる方針。 (時事通信 2004年12月20日)』
どうやらJOCが国庫補助金を受け、これを各競技団体に分配しているらしい。
それでもスケート連盟は金メダル8個の柔道よりも強化費が高い。
『強化費配分は4年で15億円
日本オリンピック委員会(JOC)の小粥義朗マーケティング委員長は12日、2001年からの4年間のマーケティング事業収入が約54億円となり、傘下の競技団体への強化費配分は4年間で約15億円となったことを明らかにした。当初予定の収入40億円、強化費配分10億円を大きく上回った。
2004年度の競技団体への強化費配分は、最高が日本水連への約5000万円で、日本スケート連盟、全日本柔道連盟と続くという。(デイリースポーツ2005年1月13日)』
長野五輪から7年、当時とは強化費は全く違うようだ。
読売新聞にはこんな記事も出ている。
『冬の競技団体 強化費足りない “長野バブル”今は昔
来年2月のトリノ冬季五輪に向け、選手強化を進めている日本の冬季競技団体が、資金不足に悩んでいる。選手強化費が大盤振る舞いだった1998年の長野五輪に比べると、現在の冬季スポーツ界は“バブル崩壊”の状況だ。最も金メダルに近いフィギュアスケート女子の荒川静香(プリンスホテル)を抱える日本スケート連盟でも、台所事情は厳しい。
競技団体の強化費は、日本オリンピック委員会(JOC)などからの資金で賄われている。その種類は大きく分けて二つ。一つは、JOCの自主財源からの交付金。競技団体の負担がなく、用途指定もない。競技団体には使い勝手の良い資金だ。長野五輪当時は、この交付金が「長野対策」などの名目で冬季競技6団体に3年間で約6億円が配分された。しかし、その後は大幅に減らされた。
このため、競技団体はもう一つの資金に頼らざるを得ない。それが助成金。競技団体に助成額の3分の1の負担を求められ、用途も指定される資金で、使えば使うだけ自己負担が増える。自己資金の少ない競技団体は緊縮予算となる。日本スケート連盟によると、海外遠征の選手団に支給される一日の滞在費は一律1万5000円。大会開催地が物価の高い都市なら足が出てしまう。
昨季、ドイツで行われたフィギュアスケート世界選手権では、主催者側が選手2人に1部屋を用意したが、日本選手団は選手を試合に集中させるため、7人に個室を与えた。これで3部屋分の部屋代が追加され、その他の経費も含め数十万円の差額が発生。これをスタッフが立て替える事態となった。
ショートトラック関係者の悩みの種は、航空機の重量超過料金。スケート靴は機内に持ち込めず、スケート刃の砥石(といし)などの用具も多く、超過料金が50万円に上ったこともあった。また、ホテルの食事が高いため、コーチ陣は肉まんやカップラーメンで済ませることもある。資金不足に悩む日本スケート連盟関係者は「助成金の負担割合が3分の1から4分の1、5分の1に減れば、競技の現場は活気づくはずなのだが」と話している。(読売新聞2005年1月5日)』
そして荒川静香が昨年、日本人として3人目の世界チャンピオンとなったあとにはこんな記事が出ている。
『さきのフィギュアスケートの世界選手権(ドイツ・ドルトムント)女子で初優勝した荒川静香(22)=早大(当時)=が30日帰国、 日本女子3人目の世界女王になった喜びをかみしめた。だが、4月以降の進路は未定。
日本スケート連盟は06年トリノ冬季五輪の金メダル候補のために、スポンサーや所属企業を異例の“公募”で募る計画も浮上した。
この3月に早大を卒業。今後はフィギュアに専念…といきたいところだが、いまだに進路が見えないのだ。
トップ選手はスケートリンクの使用料、コーチへの指導料、海岸遠征費用など年間に数千万円の活動費用がかかる。
さらにロシア人のタチアナ・タラソワ・コーチに米国で指導を受け続けることを希望しているため、これまでよりも多額の費用が必要だ。
日本スケート連盟関係者は「連盟などからの強化費もありますが、フィギュアは実業団チームがないので、
選手の自己負担は他の競技よりはるかに多い。今回の金メダルをきっかけにスポンサーが集まるといいので、募集したい」。
日本連盟は7月1日からが新年度。それまでに、なんとか日本初の五輪フィギュア金メダル候補にどうぞ救いの手を…。 ( サンケイスポーツ2004年3月31日)』
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