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July 11, 2005

テコンドーはどうしてオリンピック種目に残ったのか

2016年夏季五輪日本招致関連はこちらへどうぞ。

野球とソフトボールが五輪種目から除外された一方、同様に存続が危惧されていたテコンドーはロンドン五輪でも正式種目として残ることになった。

今回のIOC総会を前に、IOCは「テコンドーはテレビ放映権による収益もなく、審判の判定が不公正であり、試合の興味も劣る」と題した報告書を出している。
実は、アテネ五輪ではジャック・ロゲIOC会長の見守る御前試合で誤審騒ぎを起こしている。審判の判定が不公正の根拠はここにある。

そもそも韓国生まれの格闘技テコンドーは、2000年のシドニー五輪から正式種目になった。
IOC副会長(当時)金雲龍氏の強力な政治力で採用されたいきさつがある。
当の金氏は、会長を務めた世界テコンドー連盟(WTF)の公金を横領した罪などで実刑判決を受け、5月にIOC副会長を辞任。
強力な後ろ盾を失い、「テコンドーは五輪の舞台で空手に取って代わられるのではないか」と、韓国ではささやかれていたのだ。

朝鮮日報によると世界179か国で競技人口6000万人を有するテコンドーは、大韓民国を象徴するスポーツ文化の輸出品として韓国の国際的イメージの向上に大きく貢献してきた、とある。
そんな大切なスポーツ文化を失わないために、彼らは次のような行動に出た。
                         ☆
韓国オリンピック委員会(KOC)の金正吉会長はIOC総会期間中、ロゲIOC会長に1通の手紙を渡した。
五輪実施競技から除外しないようお願いする、盧武鉉大統領の書簡だった。
金会長はサマランチIOC前会長とも会談。
聯合ニュースによると、両者から存続に前向きな言葉を得たという。さらにWTFは改革委員会を設置し、審判の不正防止、採点法の見直し、ルールの簡素化にも取り組んだ。
総会会場に連日足を運び「80人以上のIOC委員と握手した」と豪語した姜錫哉WTF広報部長は「我々はアジア発祥の競技で、欧州発祥の競技ではない。
だからこそ安心せず、全力で存続活動をしたんだ」と振り返った。(asahi.com7.09)

これに対して、野球側はどういう対応をしたか。
まるで、ソウル対名古屋だった1988年の夏季五輪招致みたいだ。
日本プロ野球組織(NPB)の根来泰周コミッショナー、「韓国、台湾などと手を組みながら、ジャック・ロゲ会長をはじめ関係各位にも手紙を出すなど、あらゆる手を尽くした」そうだ(爆)。
もちろん、この方は日本プロ野球組織のコミッショナーであり、国際野球連盟IBAFという表に出なければならない組織は別にある。
しかし、IBAFの会長はMiquel Ortínというスペイン人だそうだ。
IOCは欧州中心の組織であり、その欧州での普及の低さが、正式種目除外を招いた訳でもある。
このOrtin氏がどういったロビー活動をしたのかぜひ聞いてみたい。

IBAFをサポートしているスポンサー企業はミズノ、キャノン、SSKと、4社中3社が日本企業である。
ミズノ、SSKとも野球を世界に普及させ、製品販売の拡大を狙っていたのだろうに。

サマランチ前会長は何でも取り込むことを五輪の繁栄とした。
76年モントリオール大会には21競技に約6千選手が参加(アフリカ諸国はボイコットだったけど)。
昨夏のアテネは28競技、約1万600選手に膨らんだ。肥大化で宿泊、交通など運営上のトラブルが多発。
「先進国の大都市でしか五輪は開けない」と批判が続出した。
そこへ2001年に就任したIOCのロゲ会長の公約が、五輪の規模適正化である。

ロンドン五輪決定、2種目の除外、ロゲ会長のもとのIOC総会に不満を持つIOC委員も多かったのではないだろうか。
この総会の最終日、シドニー五輪を成功させた、ロゲ氏と親密なゴスパー元IOC副会長(オーストラリア)が猪谷千春IOC委員と2人目のIOC副会長の座を争った。(定員4の内改選2)
猪谷氏は1人目を選ぶ選挙では17票の最下位に終わっていたものの、2人目を選ぶ選挙の決選投票でゴスパー氏を51対42で退けた。
IOCの中にかなりロゲ氏への不満があるとみていい。

●参考リンク
dans la rueさん 悲しきリストラ

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