スター軍団 チェコに屈す 98年長野五輪アイスホッケー
カナダ人のアイスホッケーへの関心はこんなにも高いのか、開通したばかりの長野新幹線にはカナダ人と思われるグループがあちこちに乗っている。
海を越えてサッカーを追いかける日本人と同じだ…などと考えている内に新幹線は長野に向かっていった。
1998年2月20日、長野冬季五輪男子アイスホッケー準決勝。華やかなプロで固めた優勝侯補筆頭のカナダはチェコの堅い守りを崩せず、1対1の末のペナルティーショット(PS)戦で敗退した。
学生主体のチームだったとはいえ、カナダは1994年のリレハンメル大会決勝でもスウェーデンに屈しており、五輪PS戦の悪夢再びだった。
気落ちしたカナダは3位決定戦でも敗れた。
カナダといえばアイスホッケーで、子供たちはプロ・ホッケー選手を目指す。
ワールドシリーズを制したこともあるトロントブルージェーズもカナダにはある。
けれども、子どもたちが目指すのはNHLだ。
しかし、カナダはなかなか五輪チャンピオンになれなかった。
1952年のオスロ五輪が最後の金メダル。
長い間プロの参加が認められていなかった五輸の舞台では、“ステートアマ”軍団のソ連の台頭で金メダルから遠ざかっていた。
1988年の地元カルガリー大会からは五輪へのプロの参加が認められたものの、NHLシーズンと五輪開催時期が重なるため、一流NHL選手は出場を見送ってきた。
バルセロナ五輪でのNBAスター軍団の活躍に刺激され、長野五輪以降、NHLシーズンを中断、一線級選手が五輪に乗り込んでくるようになった。
カナダは不世出の名選手、ウェイン・グレツキーやエリク・リンドロスを擁するNHLスター軍団。100億円を超える年俸総額といわれ、誰もが金メダルを獲ると思っていた。
しかし、チェコのGKドミニク・ハシェクが立ちはだかる。
PS戦ではカナダの5人とも得点できなかった。
ハシェクはロシアとの決勝でも守護神ぶりを発揮し、1対0の完封勝ちでチェコを初の金メダルに導いた。
プラハでは夜明け前に興奮した人々が集まり、その数は14万人といわれた。
チェコ首脳陣の選手選考方針の勝利だった。代表メンバーの半数を愛国心にあふれた国内リーグの選手にして、残りが高い技術のあるNHL選手。両方の強みをうまくミックスした。チェコの勝利への執念は、ひたむきにプレーする国内リーグ選手に導き出されたものだった。
●アイスホッケーの五輪メダル獲得国
68年 グルノーブル五輪 1)ソ連 2)チェコスロバキア 3)カナダ
72年 札幌五輪 1)ソ連 2)米国 3)チェコスロバキア
76年 インスブルック五輪 1)ソ連 2)チェコスロバキア 3)西独
80年 レークプラシッド五輪 1)米国 2)ソ連 3)スウェーデン
84年 サラエボ五輪 1)ソ連 2)チェコスロバキア 3)スウェーデン
88年 カルガリー五輪 1)ソ連 2)フィンランド 3)スウェーデン
92年 アルベールビル五輪 1)EUN 2)カナダ 3)チェコスロバキア
94年 リレハンメル五輪 1)スウェーデン 2)カナダ 3)フィンランド
98年 長野五輪 1)チェコ 2)ロシア 3)フィンランド
02年 ソルトレークシティ五輪 1)カナダ 2)アメリカ 3)ロシア