ショートトラックで金メダル独占をする韓国になぜ欧州勢はルール改正で対抗しないのか、総括というほどではないけれど トリノ五輪
トリノ五輪が閉幕した。
総括といった大それたことはできないが、いくつか気づいたことを書いてみる。
▼勝てない優勝候補
開幕前に米スポーツイラストレーテッド誌のメダル獲得予想を紹介した。筆者の気になる種目を抜粋したのだが、ほとんどの種目で金メダルすら外した。
五輪には魔物が住むなどと昔から言われるけれど、特にウィンタースポーツは自然との闘いになるので、予想することは難しい。
アルペン回転のロッカ、ノルディック複合のマンニネン、ジャンプのアホネン、ヤンダ、スピードスケート500mのウォザースプーン さらにはメダルには絡んでくると思われた加藤条治などいずれも結果を残せなかった。
その中で、男子フィギュアの1位プルシェンコだけは圧倒的な存在感を見せ、金メダルを手にした。
ジャンプ界には、五輪年のジャンプ週間の王者が必ず金メダルを獲るという、ジンクスがあった。長野五輪の船木和喜まで金メダルを獲ってきたが、前回のハンナバルト、そして今回のアホネン、ヤンダともメダルすら獲れなかった。
同年代の伊東大貴が五輪出場で満足してしまったのに対し、一方、LH金メダルのモルゲンシュテルンは圧巻だった。
日本勢よりも10m余計に飛ぶのは技術か、メンタルなものか?
日本選手団はメダル1個で終ってしまったが、現在の実力相応だろう。
スピードスケートなど所属すら決まらない選手もある。練習環境も当然悪い。多くを望むのは酷だ。
▼韓国は金メダル6個
韓国がショートトラック男女合わせて8種目中6種目で金メダルを獲った。長野五輪の日本の5個を上回るアジア新だ。
整った練習環境、次から次へと出てくる若い世代、
こうした圧倒的な得意種目のある韓国がうらやましい面もある。
日本がノルディック複合やジャンプで活躍すると、欧州勢はすぐルール改正で対応した。
ショートトラックはなぜルール改正で韓国の勢いを止めようとしないのか。
おそらく、欧州各国は1992年に正式種目になったようなショートトラックには興味がなく、「日本人ごときに我々のスキー文化を取られてたまるか」と、日本を眼の敵にしたときのような発想がないのだろう。
●主な種目の予想(スポーツイラストレーテッド誌)と結果
アルペン男子回転
(予)1.G・ロッカ ITA 2.K・パレンダー FIN 3.T・リゲティ 米
(結)1.ライヒ AUS 2.ヘルプスト AUS 3.シェーンフェルダー AUS
フィギュアスケート男子
(予)1.E・プルシェンコ ロシア 2.S・ランビール スイス 3.J・ウィアー 米
(結)1.プルシェンコ 露 2.ランビール スイス 3.バトル 加
フィギュアスケート女子
(予)1.サーシャ・コーエン 米 2.イリーナ・スルツカヤ 露 3.荒川静香 日本
(結)1.荒川静香 日本 2.コーエン 米 3.スルツカヤ 露
モーグル女子
(予)1.K・トゥロー NOR 2.J・ハイル 加 3.M・ローク 米
(結)1.ハイル 加 2.トゥロー NOR 3.ラウラ 仏
アイスホッケー男子
(予)1.チェコ 2.カナダ 3.ロシア
(結)1.スウェーデン 2.フィンランド 3.チェコ
アイスホッケー女子
(予)1.カナダ 2.アメリカ 3.フィンランド
(結)1.カナダ 2.スウェーデン 3.米国
ノルディック複合個人
(予)1.H・マンニネン FIN 2.R・アッカ―マン 独 3.M・モアン NOR
(結)1.ヘティッヒ 独 2.ゴットワルト AUS 3.モアン NOR
ノルディック複合スプリント
(予)1.H・マンニネン FIN 2.R・アッカ―マン 独 3.F・ゴットバルト AUS
(結)1.ゴットバルト AUS 2.モアン NOR 3.ヘティッヒ 独
ノルディック複合団体
(予)1.ドイツ 2.オーストリア 3.ノルウェー
(結)1.オーストリア 2.ドイツ 3.フィンランド
スキージャンプNH
(予)1.J・ヤンダ チェコ 2.J・アホネン FIN 3.R・ヨケルソイ NOR
(結)1.ビステル NOR 2.ハウタマキ FIN 3.ヨケルソイ NOR
スキージャンプLH
(予)1.J・ヤンダ チェコ 2.J・アホネン FIN 3.M・ハウタマキ FIN
(結)1.モルゲンシュテルン AUS 2.コフラー AUS 3.ビステル NOR
スキージャンプ団体
(予)1.ノルウェー 2.オーストリア 3.フィンランド
(結)1.オーストリア 2.フィンランド 3.ノルウェー
スピードスケート男子500m
(予)1.J・ウォザースプーン 加 2.J・チーク 米 3.加藤条治 日本
(結)1.チーク 米 2.ドロフェエフ 露 3.イ・ガンソク 韓国
スピードスケート男子1000m
(予)1.J・ボス 蘭 2.S・デービス 米 3.D・ドロフェイェフ 露
(結)1.デービス 米 2.チーク 米 3.ベンネマルス 蘭
スピードスケート女子500m
(予)1.王曼利 中国 2.J・ウルフ 独 3.S・ジュロワ 露
(結)1.ジュロワ 露 2.王曼利 中国 3.任慧 中国
スピードスケート女子1000m
(予)1.A・フリージンガー 独 2.C・シミオナトー 伊 3.J・ロドリゲス 米
(結)1.ティメル 蘭 2.クラッセン 加 3.フリージンガー 独
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Comments
>ショートトラックはなぜルール改正で韓国の勢いを止めようとしないのか。
対策とりようがないからじゃないですか?
韓国勢は、逃げてよし、まくってよし、差してよしと、圧倒的な力でどんな勝ち方もできますからね。
Posted by: kenji47 | February 28, 2006 12:29 PM
kenji47 さん
おっしゃるとおりです。
前回韓国男子はメダルゼロに終った借りを3倍くらいにして返した、という感じですね。
ショートを8種目も実施するなら、日本もモーグルにデュアルモーグルを追加するとか、働きかけるべきとも思うのですがね。
Posted by: 管理人 | February 28, 2006 01:13 PM
ショートトラックについては、欧州や北米の強い選手達もどちらかというと小柄の選手が多くて、韓国、中国や日本などの小柄の選手に不利なルールを作ると、自国(つまり欧州や北米)の小柄な選手達にも結果的に不利になる。だから、ルール改正しても意味があまりない。
例えば、アメリカのオノは父親が日本人だし、アメリカの女子代表にも韓国系アメリカ人の子がいたりして、小柄の選手が有利な競技のままでも、さほど困っていない。実際、アメリカやカナダなどは、日本のショートトラックチームより強い。前回アメリカのショートトラック代表のショニー•デービスは大柄なので、ロングトラック(つまり普通のスピードスケート)に今回のオリンピックで転向して、金メダルと銀メダルをとっているが、小柄のオノは前回も今回もショートトラックで勝負して、メダルを沢山取っている。ということで、小柄の人が有利な競技のままでも北米はそんなに困っていない。
それに、前回のオリンピックでオノが韓国の選手に勝ったときの判定で、韓国内で相当の抗議があって、オノがその後に韓国のワールドカップに行ったときなどは警備の人が10人くらい彼一人についていて、大変だったりして、そういうことでもルール改正が簡単にできない。それに比べて、ノルディックスキー種目のルール改正のときは、日本のスキー連盟のとった対応は英語のできない人間を会議に連れていき、そしてお願いしていただけだ。もっと強気な態度を取れば、ルールが改正されたとしても、ここまで不利なルール改正にならなかったかもしれない。ただ、新興国である韓国としてはなりふりかまわぬ抗議もできるが、一応先進国である日本はなかなか脅しとか、強引な行動は取れない。
そういうことも含めて、日本が世界のスポーツ界でどのような位置づけを行っていくかは、色々考えてみる必要があるが、今のJOCのメンバーでは無理なので、単に昔の名選手をJOCのメンバーにするのではなくて、名選手でなくとも欧州や北米だけでなく、アジア、アフリカ、南米など異なる文化を知っていて、そういう文化に会わせて話し合いや交渉をできる人を登用しなくてはいけないと思う。そうでなければ、今回の日本の遅塚団長のように、荒川選手が金メダル取ったときに泣いたりして、恥ずかしい団長をまた選ぶことになる。彼が泣いたのは、彼女の演技や偉業に感動して泣いたのではなく、帰国後に自分が責められることがなくなったので安心して泣いていただけで、荒川選手のために泣いていたわけではない。
それから、スキージャンプ関係の番狂わせについては、ある程度予想されていたこと。今回の会場は、だいたい標高が1700mくらいで、前回のソルトレークが2000mくらいで、どちらもある程度番狂わせが予想されていた。
標高の高いところでは空気が薄いので、選手は空中で風圧をあまり感じない。例えばフィンランドの選手は世界各地を転戦しているとはいえども、練習拠点はフィンランドの標高の低くて空気密度の高いところだ。そういう低地環境では、大型のアホネンとかマニネンとかも空中でも楽で、飛距離を伸ばせる。しかし、高地に行って空気密度が薄くなると、大型の選手は空中で苦しくて、低地で使っていた技術をそのまま使えなくて、よって距離も思ったより伸びない。
前回ソルトレーク五輪前もワールドカップでは長身のドイツ勢が強かったのに、本番では小さなアマンが二勝。アマンは比較的小柄であるので高地でも空中で楽であるということ以外に、スイス人で高地育ちなので空気の薄いところでの空中感覚や技術が元々優れているといわれていて、ソルトレークの高地に行って、その利をいかしたことになる。今回は練習で転倒して膝をいためるなどダメであったが、そういう意味では今回も大会前は期待されていた。
もちろん技術も大切だが、こういう空気の薄いところではそういう空気力学的な有利な技術を持っているという事以上に、自分のパワーで飛び上がるということが大切で、それをできたのが今回のオーストリアである。ワールドカップ前半首位のチェコのヤンダも小柄であるが、彼は飛び上がるというよりうまく空気の層に入っていく感じなので、今回の設定では勝てなかった。彼はオリンピックのノーマルヒルで惨敗したあと、気分転換に南仏のイゾートに行って3日間バケーションをしてからラージヒルに望んだが、やっぱりダメであった。もしかしたら、その時点であきらめていたかもしれない。ということで、今回のような高地、それも追い風が吹くところでは、背が高くなくてジャンプ力などのパワーが優れている選手に有利に働く。オーストリアの選手はジャンプ技術ではフィンランドの選手より劣るが、パワー負けしてはいない。そういうことで、今回のオーストリアのジャンプやノルディックコンバインドの活躍につながった。
そういうオーストリア選手と似たような条件を持っているのが日本では原田選手であるので、一応連れていったが、5-6年前ならともかく、もう賞味期限切れの選手はやっぱり賞味期限が切れていたということを示すだけに終わった。
Posted by: rule | February 28, 2006 01:52 PM
ショートトラックやメダル予想とは全然関係ないのですが、今回の五輪で気になった事をひとつ。
カーリング女子代表の活躍で、カーリングの面白さがクローズアップされて、人気が上昇しているようですが。
これって、8年前にも同じ現象があった様な。
敦賀・敦賀って騒がれていたよなあ。
敦賀氏が2000年頃書いている文章に、
「五輪の時は3000人だった競技人口が、今では3万人になってます」と書かれている。
この前の新聞には、競技人口2500人となってた。
ブームに乗って、10倍にもなった競技人口がブームが去って、また元に戻ってしまったのでしょうか。
テレ朝のやじうまプラスで、コメンテーターが
「こんなスポーツ、他の競技がメダルラッシュなら見向きもされない」といった感じで話してました。
日本人のスポーツへの理解度の限界を感じた瞬間でした。
メダル取れない訳です。
Posted by: sawasawa | March 01, 2006 02:17 AM
ショートトラックの対策なら、体重別にするとか、ハンデ戦にするとか、なんとでも手が打てそうな。
ただ、欧州がそこまでやっきになるほどの伝統はないって事でしょうね。
Posted by: sawasawa | March 01, 2006 02:35 AM
sawasawa さん
敦賀さん NHKのハイライト番組に出演していましたよね。
やや老けたかなあ。
競技人口が3000人→3万人→2500人とのことですか、
日本人の熱しやすさもありますし、練習環境の貧弱さもあるでしょう。
バレーボールが年がら年中 国際大会をやって、スター選手を作り出して
いかないと、すぐ忘れられてしまう、という手法を取る意味がよく判ります。
どの競技団体もそうだと思うのですが、民間から人を招いてマーケティングを
任せてはいかがでしょうかね。
>やじうまのコメンテーター
誰ですか?
Posted by: 管理人 | March 01, 2006 10:31 AM
勝谷誠彦氏です
Posted by: sawasawa | March 01, 2006 12:34 PM
実際には
「もしメダルラッシュが来てたら、正直カーリングなんて見ませんよ」
「メダルが取れなかった分、このような地味な競技に目がいってよかった。ホリエモンの対極にあるこのような若者こそ今の日本に必要」
と言っていたらしいです。
Posted by: sawasawa | March 01, 2006 12:52 PM
勝谷誠彦氏ですか。
灘高出身者らしい頭の回転のよさを見せる一方、人種差別、国家差別的な思想も多いですよね。
今井メロがトリノ五輪で予選落ちしたときも罵詈雑言を用いて批判したとか。
Posted by: 管理人 | March 01, 2006 02:23 PM