IOCのロゲ会長が東京と北京を訪れ、ソウルに行かなかったのは何故か
先週のことだ。IOCのジャック・ロゲ会長が、東京と北京を訪れていた。
ロゲ会長の訪日は2001年に会長に就任以来4回目である。
この間、IOC猪谷千春副会長、天皇陛下、安倍晋三首相、さらには日本のIOC委員の岡野俊一郎氏と竹田恒和JOC会長に会い、日本の五輪選手とJOCがオリンピックムーブメントの中で重要な役割を果たしてきたと称賛した。
日本は3回の五輪(東京1964、札幌1972、長野1998)を開催した世界の6つの国のうちの1つだ。
そして、東京は2016年の夏季五輪への立候補を表明している。
ロゲ会長一行の訪日の間、IOC委員のリチャード・カリン氏は2010年冬季五輪と2012年の夏季五輪のテレビ放映権の日本側との最初の交渉についた。
またIOCのTOPパートナーである松下電器産業、IOCサプライヤーであるミズノ、そして、長年に渡って五輪を強力にバックアップしている電通をも訪れた。
日本人は、五輪に大変な情熱を持つ五輪好きといわれている。
日本がアテネ五輪の金メダル争いで5位なった。
この成功は若い世代に最新技術のトレーニング施設を提供してきたJOCによる相当な努力の成果である。
アテネ五輪開催中、日本では、700時間以上のテレビ放送があった。
これは、4年前のシドニー五輪の2倍であり、平均的日本人が29時間の五輪中継を見たのは、日本が金メダル争いで5位であったことと相関する。
日本のテレビ市場は非常にダイナミックであり、そして、日本のテレビネットワークとの議論を始めることはIOCにとって重要である。
ロゲ会長は東京の2016年夏季五輪招致について日本記者クラブで次のように話した。
「日本は、過去に多くの大会を安全に成功させている。立候補都市として全ての資質を兼ね備えている。しかし、他の都市も優秀。決定はどうなるかわからない。」
東京が有力候補であることを認めたうえで、マドリード、リオデジャネイロ、米国の都市との争いが厳しくなることを示唆している。
さて、アジアツアーで東京と北京を訪問したロゲ会長は、なぜソウルに行かなかったのか。
1998年の長野五輪、2002年のソルトレークシティ五輪の招致過程において一部のIOC委員が買収され、大スキャンダルになった。
サマランチ体制が終り、ロゲ体制になるとロゲ氏は強力なリーダーシップにより、開催都市決定投票に公正なプロセスを運用しようとしている。
現在韓国では2014年冬季五輪に平昌が、ザルツブルグ、ソチとともに立候補、最終選考に残っている。
公正を期するロゲ会長は、平昌側との不要な接触を避け、東京と北京のみの訪問にしたと思われる。
2016年東京招致については、北京五輪から8年と短いことを挙げ、難しいと指摘する人がいる。
これに対し、ソルトレークスキャンダルがまだ尾を引き、IOC委員の中に嫌米感情があること、アジアが経済・スポーツでも台頭している今日、北京の8年後に東京五輪があっても不思議ではない、というのがJOCの見方だ。
ところが2007年7月のIOC総会で2014年冬季五輪が平昌に決定してしまうと、東京の目論む2016年の2年前にもアジアで五輪が開かれてしまう。
さすがにアジアで8年間に3回の五輪は難しいだろう。
東京招致を本気で考えるならば、平昌対策を考えねばならない。
●最近の五輪開催都市
1996年 アトランタ
1998年 長野
2000年 シドニー
2002年 ソルトレークシティ
2004年 アテネ
2006年 トリノ
2008年 北京
2010年 バンクーバー
2012年 ロンドン
2014年 平昌?
2016年 東京?
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