アリソン・フェリックスは不滅の世界記録を破るかも知れない
大阪世界陸上が終わってしまった。
この大会の主役だったのはタイソン・ゲイか、1500mと5000mの2冠バーナード・ラガトか、個人的にはアリソン・フェリックスを挙げたい。
とにかくアリソン・フェリックスには改めて驚かされた。
168cm・57kg 体格は日本人ともさほど変わらない。マイルリレーで優勝したアメリカチームの4人の中でも最も小柄だ。
が、脚は一番長いかもしれない。とにかくカモシカのようだ。
アリソンの特筆すべきところは4×100リレーと4×400リレーの両方で金メダルを獲ったこと。
昨夜の番組中継内で織田裕二も言っていたが、リレー2冠は過去には1983年ヘルシンキ世界陸上のマリタ・コッホ以来という歴史的快挙だ。
マリタ・コッホについてはドーピングの噂もないわけではないが、80年代というよりも20世紀最高のスプリンターであり、東ドイツスポーツ科学が作り出した最高傑作である。
1983年の世界陸上の結果を見てみよう
100m
1.マルリース・ゲール 東ドイツ 10.97
2.マリタ・コッホ 東ドイツ 11.02
3.Williams Diane アメリカ 11.06
200m
1.マリタ・コッホ 東ドイツ 22.13
2.マリン・オッティー ジャマイカ 22.19 ←この人はまだ現役
3.Smallwood-Cook Kathy イギリス 22.37
4×100mリレー
1.東ドイツ 41.76
4×400mリレー
1.東ドイツ 3:19.73
金メダル3個、銀メダル1個と大阪のアリソン・フェリックスを上回る結果を残している。
コッホが最も得意としていた種目は400mなのだが、この年はチェコスロバキア(当時)の怪物ヤルミラ・クラトフビロバが急速にタイムを伸ばしていたため、出場を見合わせた。
ちょうど1988年のソウル五輪に合わせてジョイナーが急に強くなったのと似た状況だ。
そして、クラトフビロバは世界陸上で400m、800mで世界新を出すのだが、1984年以降陸上界から姿を消した。
その容貌は男子選手そのもので、ドーピングによる後遺症と噂されたものだ。
1985年にマリタ・コッホはクラトフビロバの400mの世界記録を破ったもののその後誰も越せない。800mは24年後の今もだれも届かない大記録である。
さて、200mを最も得意としているアリソン・フェリックスだが、世界記録更新は可能か。
●女子200m世界歴代記録
21.34 F・G・ジョイナー 米国 ソウル五輪 29 09 1988
21.62 M・ジョーンズ 米国 Johannesburg 11 09 1998
21.64 M・オッティー JAM Bruxelles 13 09 1991
21.71 M・コッホ 東独 Karl-Marx-Stadt 10 06 1979
21.71 H・ドレクスラー 東独 Jena 29 06 1986
21.72 G・ジャクソン JAM ソウル五輪 29 09 1988
21.72 G・トーレンス 米国 バルセロナ五輪 05 08 1992
21.74 M・ゲール 東独 Erfurt 03 06 1984
21.74 S・グラディッシュ 東独 ローマ世界陸上 03 09 1987
21.75 J・カスバート JAM バルセロナ五輪 05 08 1992
21.77 I・ミラー 米国 セビリア世界陸上 27 08 1999
21.81 V・B・フックス 米国 ロス五輪 09 08 1984
21.81 アリソン・フェリックス 米国 大阪世界陸上 31 08 2007
21.83 E・アシュフォード 米国 Montréal 24 08 1979
大阪でアリソン・フェリックスが出した記録はなんと世界歴代13位。
2位に0.5秒もの大差を付けた圧勝の記録の上にまだ12人もいるのだ!
ただし、記録の変遷を見ると
2007年 21.81 大阪世界陸上 31 08 2007
2006年 22.11 シュツットガルト 09 09 2006
2005年 22.13 Carson 26 06 2005
2004年 22.18 アテネ五輪 25 08 2004
2003年 22.11(高地記録) メキシコ市 03 05 2003
2002年 22.83 Norwalk 01 06 2002
2001年 23.31 WALNUT 21 04 2001
この1年で0.3秒も自己記録を縮めている。
ひょっとすると(北京の大気汚染が奇跡的に改善され、競技運営がスムーズにいけば)来年の今頃世界新が出ているかもしれない。
●参考記事
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録
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