東京に厳しい評価 2016年夏季五輪
五輪招致やマーケティングの専門のニュースサイトAROUND THE RINGSは、4~5月の2016年夏季五輪候補都市へのIOC評価委員会の視察を踏まえ、どの都市が優勢であるか、11の項目ごとにポイント化しランキングを発表した。
それによると、110点満点中シカゴが80点で1位、2位に78点のマドリード、東京はリオデジャネイロと並んで77点としている。
AROUND THE RINGSは、IOC評価委員会に同行し、評価委員会の反応、感想を取材している。
が、あくまでも1民間企業の評価である。
以下、東京の評価を中心にまとめてみた。
Accommodation(宿泊設備)
シカゴ、マドリードと東京が、品質、量ともにランキングの最上位。
Ambience(環境) 旅行者にとっての都市環境
最高点は、マドリード。空港から競技会場、ホテルまでの道はマドリードが4つの都市で最も洗練されている。
Bid Operation(招致活動・リーダーシップ・戦略と広報)
石原慎太郎東京知事の、IOC評価委員会の記者会見での日韓問題についてのコメントに、批判が集中した。
リオデジャネイロは、初の南米開催を訴え、感情的にすらなっている。
Games Cost and Finance(予算と財政)
リオは、五輪開催のために多くの費用を必要としている。インフラ整備のためにブラジル政府から300億ドルの支援がある。
東京の建設費10億ドルという壮大な五輪スタジアムの計画は、他の都市に例を見ない。
シカゴは政府による財政保証が得られず、立候補辞退すべきという意見もある。
Last Games in the Country(過去の五輪開催)
マドリードとシカゴは、過去に国内での五輪開催の経験があり、東京は、4都市中唯一自ら開催経験がある。
2012年夏季五輪はロンドンであり、1948年と52年を除いて同一大陸での夏季五輪開催はないため、マドリードには厳しくなる。
Legacy(遺産、五輪の影響)
リオデジャネイロは五輪で得られるものが、他の都市より多くなりそうだ。
絶望的な貧困層と乏しいインフラ、五輪を機に生まれ変わる。
シカゴは、若者とスポーツのために、五輪が影響を及ぼす方法に、最もはっきりした考えがある。
東京とマドリードは、若いスポーツマンのために、新しい競技場を造る。
しかし、五輪がどのように、この都市を変えるかは判らない。既に繁栄しており、知名度も高い。
同じことは、シカゴにも言えるだろう。
Marketing(マーケティング)
楽観的な数字だが、シカゴのマーケティング収益は25億ドルと見込まれている。リオデジャネイロはその半分。
東京とマドリードは16億ドルとしている。
東京の周囲には、成長を続けるアジア30億人という巨大市場があり、五輪史上において未だかつてない規模のテレビ放映権の可能性がある。
Government(政府及び国民の支持)
マドリードとリオデジャネイロは、IOCによって今年始め行われたたIOCの調査において85%の支持を得た。
東京は56%、シカゴは60%台。
東京は、最新の調査では72%の支持があると訴えている。
4都市とも政府によってよく支持されている、しかし、シカゴだけ中央政府から、正式な財政保証がない。
Security(保安・危険の認識)
東京は、セキュリティカテゴリー(実際には世界で最も安全なそして、最も礼儀正しい都市のうちの1つ)で、最高の評価だ。が、翻訳で道に迷うことは訪問客のために最も大きい危険であるかもしれない、また、地震と台風のような自然現象も起こり得る。
Transport(輸送)
マドリードと東京は、近代的で効率的な交通インフラがある。
東京の大きい欠点は、成田空港から都心までの距離と、都市が“無秩序に拡大するスプロール現象だ。
シカゴのオヘア空港は、世界で最も重要なハブ空港のうちの1つだ。
Venues and Overall Plan(会場と全体的な計画)
五輪村を中心にした5マイルの中の会場が最大で、東京はその計画が最もコンパクトである。
10億ドルの予算で建設されるスタジアムは、 4都市の計画の中でも最も高価な競技会場だ。
これらの会場とメインプレスセンター、国際放送センターは、東京の埋め立て地の東にある。
アラウンドザリングについて、過去にも紹介したことがあるが(下記参照)、その記事も東京に非常に厳しい内容だった。
そういったサイトだと思えば良いのだろうが、気になる点もある。
石原都知事の韓国に関する発言、これは2018年平昌冬季、2020年釜山夏季五輪招致をめざす韓国人が、ネット上で盛んに吹聴してまわっていること、と認識していたのだが、アメリカ人のコラムストもこの件を取り上げているのを見たことがある。
ことが大げさにならないようにした方がいい。
国民の支持56%には、わずか6点の評価しか得られていない。
10億ドルのメインスタジアムも、環境に配慮といった点は全く考慮されず、ただ金額のみが一人歩きしている状況のようだ。
●参考記事
新オリンピックスタジアムの建設費用は898億円
危機的支持率 東京五輪賛成は56%(IOC調査) 大阪に並ぶ低さ
The comments to this entry are closed.
Comments
ATRの評価は非常に主観的だと思います. 採点方式が非常に単純です. 一般人誰もが評価することができる水準. むしろ gamesbids.comの評価が精巧だと思います.
Posted by: Tokio | June 09, 2009 07:01 PM
全くその通りです。
ただ、アメリカの主要紙はATRの数字を取り上げ、「シカゴの招致は最終段階まで来た」といった論調が目立っています。
この影響は少なからずあり、IOC委員たちもどこかでこの記事を目にすることでしょう。
無意識のうちに「シカゴ優位」が、IOC委員にインプットされる可能性があります。
あるいは、アメリカは意識的にこうした情報操作をしているのかもしれません。
そこへいくと日本語は、スペイン語、ポルトガル語よりも影響力が弱く、不利といえるでしょう。
Posted by: 管理人 | June 09, 2009 09:16 PM