英国のアン王女と日本の皇太子
石原都知事は、皇太子夫妻のIOC総会参加について、ローザンヌのプレゼンテーションの前に麻生太郎首相に宮内庁への要請を求めたことを明らかにした上で、こう話した。
「スペインの王室は参加するし、アメリカは大統領が来る。こういうときのための、国民のための皇室なはずだ。」
この話を聞いてイギリス王室のアン王女を思い出した。
アン王女とは、エリザベス女王の長女で、チャールズ皇太子の妹にあたる。
1976年のモントリオール五輪に、馬術のイギリス代表で出場した経験を持つ。そして現役のIOC委員の一人でもある。
かつてこのブログでも書いたことがあるが、欧州の王室には五輪出場経験を持つ人物が少なからずいる。
そして引退後には、IOC委員を務めていることが多い。
イギリスは、マンチェスターが1996年、2000年の夏季五輪に立候補したが、いずれも落選、招致は失敗した。
マンチェスターの都市の規模、インフラ等を考えると五輪開催は高望みだったと思う。
そして、立候補国のIOC委員は、投票には加わらないことになっているため、アン王女も投票に参加しなかった。
すると、マンチェスターの招致失敗がイギリス国会で問題となり、アン王女までが野党から
「アン王女ら、我が国のIOC委員がなんの運動もしなかったから失敗した」
と非難されてしまった。
するとアン王女は、報道陣の質問にこう答えた。
「何より必要なのは、フェアプレー精神なのです。IOC委員はオリンピックの行商人ではありません。」
こんなアン王女だが、北京に決まった2008年夏季五輪招致レースでは、自らの意志をはっきりさせた。
イギリス王室は、昔からチベットを支援している。
チベットの独立を阻止し、チベット民族の人権を弾圧する中国政府は目の敵である。
アン王女は、IOC総会の投票前にも、北京五輪招致関係者とは一切会わなかった。
2008年夏季五輪は、始まる前から、「北京在りき」で進んだ招致レースだ。
それがIOCの総意であるかのように見られたが、アン王女は、どんな状況でも北京を支持しない、投票しないと表明までしたのだ。
日本の皇室は、特に五輪運動と接点はない。
イギリス王室や、スペイン王室とは五輪運動とのかかわりが、根本的に異なるのだ。
1972年のミュンヘン五輪の、ヨットのスペイン代表だったファン・カルロス国王が、IOC総会に来られるから、日本も皇太子に、とは単純にならない。
とは言うものの、コペンハーゲンのIOC総会で皇太子が出席されれば、インパクトが大きいのは間違いない。
筆者も出席を是非願う。
さて、アン王女だが、北京五輪の開会式には、夫君とともに「鳥の巣」にいたのは言うまでもない。
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