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July 24, 2009

財政保証できないシカゴは脱落寸前?

五輪招致において使われるhost-city contractという言葉がある。
通常、IOC総会で開催都市が決まった際に、市長がIOCとの契約書にサインすることをいう。
ところが、2016年夏季五輪招致において、頻繁にこの言葉が出てくる。
対象になっているのはシカゴ、しかも10月2日のIOC委員による投票の前にシカゴ市長に「シカゴ市が赤字の際には全額補填する」とサインせよ、と迫っているのだ。

近年、五輪開催に際し、IOCは不測の事態に備えて、開催都市の国家による財政保証を求めている。
ロンドン、ソチいずれもそうであり、2016年をめざす東京、マドリード、リオデジャネイロも政府による財政保証を謳っている。

ところが、招致レースの先頭を行っていると思われたシカゴは違った。
アメリカは連邦政府が財政保証ができない。
これはアメリカ国内法によるためだ。
そのためシカゴ市及びイリノイ州がそれぞれ5億ドル、2億5千万ドルを保証することになり、シカゴ市議会も同意していた。

ところが、IOCが要求している保証額は20億ドルから25億ドル。
随分と開きがある。
シカゴ側の皮算用では、競技場や他設備建設を含めた五輪開催費用を48億ドルと見積り、黒字を5億ドルとしている。
保証の5億ドルの根拠はここから来ていた。

IOCが保証額にこだわるのは、テロへの危惧からだ。
アメリカは同時多発テロの当事国であるので、杞憂では済まされない。

また、予想外の経済状況の変化もあり得る。
実際問題、2012年夏季五輪開催地のロンドンは、招致レース中の見積りの49億ドルが、現在は135億ドルに膨らんでいる。

6月にスイスのローザンヌで開催された立候補4都市によるプレゼンテーションに際し、デイリー・シカゴ市長はIOCの要求通り、契約書にサインすると約束した。
これは、東京を始めとする3都市に条件で並ぶには、サインせざるを得ないとの判断からだ。
これに市議会が反発、市内50ヶ所での説明会とIOCと交わす全額保証契約の内容公開を求めている。

デーリー市長は次のように話す。
「シカゴには既に大型競技施設がそろっており、米国で開催された過去の五輪は成功を収めている。保険会社の保険の拡充も図り、市民が税金を払わされるリスクは低い」。

とはいうものの、ローザンヌのプレゼンテーション以降、アメリカのメディア、市民の五輪熱が急速になえているのは間違いない。

シカゴの反対運動グループ NO GAMES CHICAGOは過去の五輪の総費用が、招致段階と実際とどの位異なるか、次のように発表している。

2002年ソルトレークシティ冬季五輪
見積もり $800million
最終費用 $2billion
2.5倍

2004年 アテネ五輪
見積もり $6.3billion
最終費用 $15billion
2.4倍

2006年 トリノ冬季五輪
見積もり $2.1billion
最終費用 $3.6billion
1.7倍

2008年 北京五輪
見積もり 不明
最終費用 $40billion
?倍

2010年 バンクーバー冬季五輪
見積もり $600million
予想費用 $2.5billion
4.2倍

2012年 ロンドン五輪
見積もり $4.3billion
予想費用 $16.6billion
3.7倍

なんといっても凄いのは1976年のモントリオール五輪。
商業五輪の前の時代だが、モントリオール市民は、2006年まで30年間に渡り、この赤字を埋めるべく税金を払い続けた!
見積もり $124million
予想費用 $1.47billion
11.9倍

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