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August 20, 2009

2009年のセメンヤと 1983年のクラトフビロバ

ベルリンで開催中の陸上世界選手権女子800mで圧倒的な強さで初優勝したキャスター・セメンヤに対し、IAAFが性別検査の調査中であることが分かった。
つまりは、セメンヤは男子選手ではないか?という疑いが持たれている、ということだ。
セメンヤは、南アフリカ国籍の18歳。
確かに容姿をみれば少年のようにも見える。
もし、男性であれば記録を抹消することになるが、相手は18歳、慎重な対応が求められる。

女子選手だと思ったら、男子だった。
こういった例は今始まった問題ではない。
特に陸上競技では昔からある。

クラトフビロワ
第1回の世界陸上が開催されたのは1983年 東西冷戦の華やかし頃のヘルシンキ。
このとき、チェコスロバキア(当時)に、とんでもない怪物選手がいた。
陸上や競泳のようなタイムを競う競技においては、時が経つに連れて記録は向上するというのが一般的だ。
例えば第1回世界陸上の男子100mの優勝はカール・ルイスで、タイムは何と10秒07。
先日世界をあっと言わせたベルリンのボルトの優勝タイムは9秒58。
なんと26年間で0秒49縮めてことになる。

Kratochvilovaところが、1983年当時は前述のように東西冷戦華やかりし時代。
東側諸国は組織的なドーピングによってメダルを浚い、国威発揚を諮っていた。
1980年のモスクワ五輪200mで銀メダルを獲っていたが、世界的な選手というほどではなかったヤルミラ・クラトフビロバ(チェコスロバキア)は、1983年になって急激に強くなった。
このとき彼女は32歳。
ヘルシンキの世界陸上では400mと800mに金メダルを獲った、のだが、その記録が26年経っても誰も足許にも及ばない不滅の大記録なのだ。
800mは1分54秒68、ヘルシンキの直前に彼女が出した1分53秒21の世界記録には及ばなかったが、男子かもしれない言われているセメンヤの昨日の記録 1分55秒45と比べると凄さが判るだろう。

セメンヤの昨日の記録は今季世界最高記録であるけれど、世界歴代13位という記録でしかない。
もちろん、現在も世界記録はクラトフビロバの1分53秒21。

この当時東ドイツ(当時)には、マリタ・コッホという短距離のスーパースターがいた。
コッホの400mのベストは47秒60。
これもまた、誰も足許にも及ばない不滅の世界記録なのだが、このコッホが、このシーズン(1983年)は400mではクラトフビロバには、適わない、とヘルシンキでは400mにエントリーを見送ったくらいクラトフビロバは充実していた。

ベルリンの世界陸上 女子400mではアメリカのサンヤ・リチャーズが自身初となる世界大会金メダルを獲った。
この記録が今季世界最高記録である49秒00。
26年前のクラトフビロバの47秒99と比べてみて欲しい。

クラトフビロバの当時の画像を見つけてきた。(上)
胸は全くなく、脚は男子選手よりも筋肉が発達していた。
当時から陸上関係者の誰もがドーピング違反を疑っていたが、今となっては立証できない。

1983年女子400m
1.47.99 ヤルミラ・クラトフビロワ (チェコスロバキア) 世界歴代2位
2.48.59 タタナ・コチェンボワ (チェコスロバキア)
3.49.19 マリヤ・ピニギナ (ソビエト)

1983年女子800m
1.1:54.68 ヤルミラ・クラトフビロワ (チェコスロバキア) 世界歴代3位相当(当時)
2.1:56.11 リューボフ・グリーナ (ソ連)
3.1:57.58 エカテリーナ・ポドコパエワ (ソ連)

2009年女子400m
1.49.00 サンヤ・リチャーズ (アメリカ) 今季世界最高 
2.49.32 シェリカ・ウィリアムズ (ジャマイカ)
3.49.71 Antonina Krivoshapka (ロシア)
サンヤ・リチャーズの自己ベストは48.70(世界歴代7位)

2009年女子800m
1.1:55.45 キャスター・セメンヤ (南アフリカ) 今季世界最高 世界歴代13位
2.1:57.90 Jジェプコスゲイ (ケニヤ)
3.1:57.93 ジェニファー・メドウズ (イギリス)

●参考記事
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録 400mリレー
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録 (中国人選手編)

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