2005年のロンドンのプレゼンを見てきた。
今日の朝日新聞に『東京五輪招致、「顔」決まらず ライバル国は豪華布陣』と題された記事が掲載された。
東京五輪招致には、一歩引き気味な朝日新聞も、IOC総会での東京の顔不在に気をもんでいるのだ(?)。
先ほど改めて、ロンドンに招致の決まった2005年のIOC総会のビデオを見てきた。
IOCのサイトに行けば、50分弱のロンドンのプレゼンを丸々見ることができる。
実は、このときのシンガポールのIOC総会のロンドン招致団のプレゼンには、ベッカムもブレア首相(当時)も出てこない。
ベッカムは、シンガポールに来ていたがプレゼンには参加せず、サミットを控えていたブレア首相は、ロビー活動のみで、プレゼンにはビデオでの出演だった。
プレゼンに登場したのは下記の人物だ。
①アン王女(IOC委員)
②エリザベス女王(ビデオ)
③Craig Reedie(IOC委員)
④セバスチャン・コー(陸上金メダリスト・招致委員会会長)
⑤Denise Lewis(陸上7種競技金・銀メダリスト)
⑥Ken Livingstone(ロンドン市長=当時)
⑦トニー・ブレア首相(=当時・ビデオ)
⑧ネルソン・マンデラ南ア大統領(=当時・ビデオ)
⑨Tessa Jowell文化長官(現五輪担当大臣)
⑩セバスチャン・コー
45分のプレゼンのほとんどは、セバスチャン・コーが話している。
ボイコットの応酬で、ともに片肺に終わったモスクワ・ロサンゼルス両五輪の陸上1500mで金メダルを獲ったコーは、アイドルというよりも神様のような存在だ。
今尚、そのカリスマ性、存在感たるや代わる人物はいないだろう。
「私が今日ここに立っているのは、自分自身が、オリンピックムーブメントによって感激させられたからです。
メキシコ五輪当時、私が12歳の時、私は学校の集会所にクラスメートとともに行きました。
私たちは古い白黒テンビの前に座り、五輪の映像を見ました。
その日が、私を新しい世界に連れて行ってくれる窓となったのです。」
そしてコーは、14歳のロンドンの二ューハム地区に住むバスケットボール選手Amber Charlesを紹介した。
その風貌はいかにも移民といった様子だ。
「なぜ彼女がロンドン招放団の一員なのか、私たちの目的は、若者たちに活気を与えることです。
ロンドン東部に住む彼女らは、最も直接的に五輪に触れることが出来るでしょう。
ロンドンに住む人の出身国は、200カ国にも及び、彼女らの家族は各大陸出身者です。
ロンドンの文化の融和は、彼らの存在は、世界のお手本になるでしょう。
彼女らのスポーツを愛する心、そして私たちのロンドンに五輪を招くことは、心からの夢なのです。」
通常、各立候補都市の最後のプレゼンテーションでは、施設の充実をアピールに終始する。
が、ロンドン招致委委員会会長のセバスチャン・コーは、五輪選手出身者らしい締め方をした。
「スポーツに親しむ子供たちを増やし、ロンドンからイギリス、そして世界中に広めていく、次の世代にオリンピック遺産を引き継ごう」
という訴えが、招致成功の決め手になった。
これに対し、ジャック・ロゲIOC会長は
「ロンドンの五輪をきっかけに若者がスポーツをする環境を整える計画は、IOCの理念と一致するものだった。」
と感想を述べている。
さて、朝日新聞記事にもあるようにIOC総会のプレゼンテーションでは、とくに近年は国家元首や世界的に知名度の高い人物が登場し、国を挙げた熱意を演出するのが恒例となっている。
東京は、皇太子も新首相も不在となるかもしれないが、室伏広治選手の総会出席が有力視されている。
父親の重信氏の応援で行ったロス五輪、自身が選手として初めて行ったシドニー五輪、金メダリストのドーピングが発覚し、自身のメダルの色が変わったアテネ五輪の話などをしてくれるだろう。
きっとセバスチャン・コーにも劣らないスピーチになると思う。
●参考記事
2012年夏季五輪開催地決定
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