韓国スピードスケート躍進の影に やはりサムスンあり
バンクーバー五輪のスピードスケートも、女子5000mが終了し、個人種目は全て終わった。
今大会は何と言っても韓国勢の活躍が目覚しかった。
4年前にアジアのスピード大国の座を日本から奪った韓国は、日本との差を一気に引き離した。
そのウラには何があるのだろうか。
日本が初めてスピードスケートでメダルを獲ったのが1984年。
それ以降の日韓が五輪のスピードスケートで獲得したメダルをまとめるとこのようになる。
バンクーバー五輪開幕以前に日本が獲得したメダルは12個、これに対し韓国は僅かに2。
ところが今大会日本が銀1銅1に終わったのに対し、韓国は金3、銀2。
確かに男子500mの韓国勢の前評判は高かった。が、女子500m、男子10000mでの金メダルには脱帽せざるを得ない。
この急速な実績の背景にはサムスン・グループの存在がある。
サムスンの李健熙前会長は、IOC委員である。
脱税と背任を受け、しばらく委員の資格停止だったが、李明博大統領の特別赦免により復職した。
というのも、2018年冬季五輪に韓国・平昌が立候補しているのに李氏の存在が必要だからだ。
韓国が最初に冬季五輪招致を表明したのはソウル五輪を無事に開催し終えた4年後の1992年だったが、2006年の冬季五輪は時期尚早と見送られた。
現在3回目の冬季五輪招致に乗り出している平昌の、最初の立候補は2010年の冬季五輪。
現在開催中のこの冬季五輪である。
韓国には、2010年の冬季五輪の自国開催に合わせて選手を強化しようとの計画があったのだ。
朝鮮日報にこんな記事があった。
1997年春、李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン・グループ会長(当時)が、サムスンスポーツ団の朴聖仁(パク・ソンイン)団長(現バンクーバー冬季オリンピック韓国選手団長)を呼んだ。「夏季スポーツの基本が陸上ならば、冬季スポーツの基本はスケートだ。韓国が冬季オリンピックを誘致するためには、スケート種目を育成する必要がある。だが、決して性急に考えてはならない。支援が干渉になってはならず、10年間は根気強く投資しなければならない」(朝鮮日報2010.2.20)
サムスンは、韓国のナショナルトレーニングセンター泰陵選手村に、それまであったスケートリンクを全天候型・屋内1周400mの国際基準のスケートリンクに作り変えた。
このスケートリンクは1年中、夏でも滑走できる。
ちなみに長野五輪のスケート会場エムウェーブの滑走可能時期は3月~10月でしかない。
この竣工が2000年1月。
今年2010年は、これからちょうど10年になる。
李前会長のいう10年間の根気強い投資と重なる。
韓国スケートの金メダル3個は、一朝一夕に出来たわけではない。
10年以上先を見通した投資の賜物である。
サムスンは売り上げ11兆円、営業利益9000億円。
これまでにスピードスケート界に投資した額は120億ウォン(約9億5200万円)に達する。
今の日本にスポーツにサムスン並み投資のできる企業はない。
●参考記事
サムスン 世界陸上スポンサー71億円の内幕
●オリンピックプラスの電子書籍 346円で発売中
冬季オリンピック 栄光と挫折の物語
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Comments
私も早朝この男子10000M見てましたがホントに圧倒されました・・・
スベン・クラマーは気の毒すぎましたがそれでも五輪新記録と12分台で滑走したのはこの二人だけ
白幡引退後、日本スピードスケート男子中長距離陣は世界で戦える人材がいなくなり競技生活を続けることさえ困難になっていましたが、この合間にも韓国は着々と土台を固め、それが今回花開いたのがよく分かる記事でした
イ・スンフンはわずか一年前ショートトラックから転向し10000mを公式戦で滑るのも五輪で三回目だと言ってましたから彼自身に関しては突然変異みたいなものでなかなか育成しようと思っても出てくるタイプの選手ではありませんが、短距離陣の活躍は間違いなく10年に渡って固められてきた土台によるもの
それがイ・カンソク、イ・ギヒョクの500mワールドカップランク上位二枚看板がコケてもモ・テボムという新星の誕生で層の厚さを世界に見せつけ、なおかつ5000・10000という長距離で金銀という大きなおまけをももたらしたのですから
日本も帯広にいい屋内リンクが出来ましたがそこでも年中滑走が可能なわけではありません
さらなる少子化が進むと予想される中、韓国を見習って選択と集中を推し進めねばなりませんね
たとえばそり競技ならドイツ勢が圧倒的に強いリュージュ、複数国が強化に力を入れているボブスレーはとりあえず後回しにしてスケルトンに人材と資金を注力する
クロスカントリースキーなら上位進出の可能性が見込めるスプリントに注力するなど・・・
韓国のように冬季五輪=スケートのようにまで絞り込むのは私も嫌でどの競技にも選手を送り込んでいる日本の方が好感は持てるしスポーツの裾野の広がりと言う点でも日本の方が健全ですが、このままじゃいけないと思わされる今回の五輪です
それとももっと単純な官民あげての単純な本気度の違いという問題なのでしょうか・・・
もう日本は五輪で盛り上がり、情熱を傾けることに体力(財力)も気力もなく熟し老いたる国家になったのでしょうか
それはそれで寂しい話ですが・・・・・
Posted by: boat-boy | February 26, 2010 12:41 AM
>韓国のように冬季五輪=スケートのようにまで絞り込むのは私も嫌でどの競技にも選手を送り込んでいる日本の方が好感は持てるしスポーツの裾野の広がりと言う点でも日本の方が健全ですが、このままじゃいけないと思わされる今回の五輪です
全く同意見です。
いや、今回というよりも2002年からその兆しはありました。
チームパシュートを見ても、韓国は日本以上に選手層が薄いのは見て分かります。
その少ない選手を育てる環境を早急に整えないと、ショートトラックと同じ運命になりますね。
橋本聖子さんは、何をするために参議院議員になったか、日本選手団団長で終わって欲しくないですね。
Posted by: 管理人 | February 27, 2010 09:55 PM
同僚の韓国の人に、男子スピードスケート500mの金を讃えたら、「韓国はスケート場はたくさんあるけれど、スキー場はあまりないんですよ」と言っていました。
たしかにこの20年ほどでできてきたスキー場が多く、平昌などは、行った人の言によれば、「どう考えてもオリンピックと結びつかない」雰囲気ということです。難易度の高いコースがある、というだけのようですね。
ということで、女子チームパシュート(カナ書きはこれで良いのだろうか?)は日本が決勝進出しました。それにしてもポーランドの最後の2周の追い上げはすごかった。
決勝の相手ドイツは、決勝はメンバーを入れ替えるでしょうね。でも、そうなれば実力的には下の人が出るのだろうから、チャンスですね。
それにしても、ずっと皆川が出るのを楽しみしていたのに、数秒で終わってしまった。悪条件の中、1秒遅れでいいから1本目は完走してほしかった。残念!
さて、チームパシュートの決勝まで起きていられるだろうか?(笑)
Posted by: でいのしん | February 28, 2010 06:23 AM
チームパシュート準決勝のドイツ・フリージンガーの最後の滑り込みのようなゴール。
こんな大選手のあんな必死のすべりは感動ものでした。
小平さん、穂積さん、田畑さん、ぜひ金メダルを!
もちろん佐々木明も。
Posted by: 管理人 | February 28, 2010 06:41 AM