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October 18, 2010

反日デモは大丈夫か?来月は広州アジア大会

尖閣諸島の領有権問題に絡んだ中国・四川省や河南省での反日デモは一部暴徒化する様相を見せている。
気になるのは、来る11月12日に第16回アジア競技大会が、広東省広州市をメーン会場に開幕する。
果たして、反日の嵐の中大会は開幕するのか、中国政府はこれを強引に納めるのだろうか。

アジア大会の中国での開催は1990年の北京大会以来2回目で、大会は11月27日まで続く。
北京五輪からわずかに2年、中国は再び世界的スポーツイベントの開催国となる。


中国市民は、1990年代の江沢民政権時代に、過去の歴史を利用した徹底的な愛国教育を受けている。
当局は、統制された学校教育、マスコミなどを通じ、旧日本軍の「罪状」を徹底的に宣伝、その視点で現代日本も批判してきた。
そのため多くの市民は「反日は正義、親日は売国」という屈折した民族主義的感情を持つといわれる。
言わば中国人観客が見せる反日感情は、中国共産党政権自身が育ててきた側面があるのだ。

中国では今なお、共産党一党独裁の言論統制下にあり、日本に対するこうした感情は矛盾にも当局の監視が届きにくいインターネットを通じ、広く共有されている。


▼2004年サッカーアジア杯
この10年あまり、中国での国際競技会は常に反日と隣り合わせに行われてきた。 
何と言っても最も歴史に残るのは、2004年のサッカーアジア杯だろう。

「私の記憶する限り、このようなことが北京で起きたことはない。怒りを禁じ得ない」。
阿南惟茂駐中国大使(当時)はアジア杯決勝戦終了後、日本公使が乗った公用車が中国人観衆に襲撃された事件に不快感をあらわにした。
16カ国が参加したアジア杯、日本は決勝で中国を3-1で下し3度目の優勝を遂げた。
日本に敗れたことを不服とする中国市民は、日本公使公用車を襲撃する。
後日 後部ガラスが盛大に壊れるなど、無残な状態で公用車は公開された。
日本側の抗議に対し、北京市公安局は「警備上の不手際」を謝罪したものの、中国メディアは事件の発生、経緯についてほとんど報道しなかった。
一方、決勝の行われたスタジアム(北京工人体育場)では、日本人サポーターは決勝戦終了後2時間もスタンドに足止めされ、日の丸が焼かれるなどもした。

このアジア杯の時の中国での反日の暴動と、事実上これを放置した中国側の対応は異常だった。
なぜか、日本の対戦相手国の小旗が、必ず会場で配られた。
予選リーグから決勝までの全ての試合で、国歌演奏時や試合中で激しいブーイングや反日行為に晒された。
これに対しては当時の日本代表監督ジーコも「国歌演奏のときにブーイングするのは納得がいかない」とあきれて批判した。

▼2001年北京ユニバーシアード
スポーツにおける反日行動が顕在化してきたのは、2001年の北京ユニバーシアードの頃からではないだろうか。
男子サッカーの決勝 日本対ウクライナ戦は異様な雰囲気の中の試合となった。
日本に対する声援はかき消され、日本選手がウクライナ選手を倒そうものなら、日本をののしる罵声が飛んだ。
ユニバーシアードの開催を支えていた中国の大学生ですら「かつて中国を侵略した日本への正常な反応」と言ってみせた。
中国のサッカーが敗退した腹いせかと思いきや、そうではない。
数100人規模の人民武装警察隊員が通路に5mおきに立つ中、中国人の小学生から、大人までもが一緒になって、大声で日本代表に罵声を浴びせる試合は尋常ではなかった。

▼2007年サッカー女子W杯
浙江省杭州市で行われたサッカー・女子W杯のドイツ戦で「反日ブーイング」の中で敗退した日本チームが試合後、「ありがとう、中国!」とローマ字、中国語などで書いた横断幕を広げ、中国の観客に感謝のメッセージを伝えた。
女子日本代表チームは、ブーイングを浴びせた中国の観客に感謝の気持ちを示したのだ。
これに対し新華社の発行する「国際先駆導報」は、「日本女子代表は我々に、『過去に生きる者は過去の中に消え去り、未来に生きる者は未来に向かって前進する』という現実に相対すべきことを教えた」とする論評を掲載した。
一方ネットにも、「日本は試合に負けたが、中国は人で負けた」と題し、「我々は成り金のように教養や文化が欠けている。本当に強い国になるためには、啓発運動が必要だ」説くブログもあった。

▼2008年北京五輪
国際的な注目度が他の競技会とは全く違う五輪。
北京五輪では、市民が暴走しないように中国当局の監視は半端ではなかったとされる。
それでも男女のバレーボールや女子サッカーでは日本に対するブーイングが目立った。
バレーボールで日本選手がサーブミスをすると、中国人観客の喜ぶこと…。

▼2005年上海世界卓球選手権
中国で開催された競技会では、こういったこともあった。
2005年4月、大規模な反日デモが起きた直後の上海で開かれた世界卓球選手権。
中国で最も知られた日本人のひとりである福原愛。
彼女に対しては、ブーイングはもちろん全くなかった。
福原は、東北なまりとも言われるが流暢な中国語を操り、日本に辛口な中国のメディアも「日本生まれの中国育ち」と福原だけは扱いが違った。

上記以外にも中国で行われた競技会で、日本人選手が標的になったケースは多い。
2005年蘇州で行われたハンドボールの東アジアクラブ選手権は、中国人観客が暴徒と化すのを危惧し、一般観客を入場させずに無観客試合を行った。
同じ年の北京国際駅伝では日本チームに主催者側から「ユニホームの日の丸が見えると危険なので隠してほしい」と要請があった。

選手に試合に専念できる環境を提供するのが、国際大会の最低の条件だろう。
仮にも夏季五輪を成功裏に開催させた中国。
アジア大会で、選手や応援団の安全確保に不都合が生じるのであれば日本からOCA(アジア五輪評議会)や国際競技団体へ問題提起すべきだ。

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