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June 18, 2012

アジアの陸上界に根を降ろす中国女子の怪記録

ロンドン五輪の陸上短距離に出場する福島千里は100m、200m両種目の日本記録保持者だ。
100mの日本記録は2010年4月29日の織田記念国際陸上で出した11秒21。
今季のベストは今年の織田記念で出した11秒34。
とはいうものの、男女ともにジャマイカとアメリカが圧倒的に強い短距離界にあって、福島の記録は今季世界80位にも入らない。
だが、五輪や世界陸上のように1カ国3名のエントリーとして各国の4番目以降の選手を切っていくと世界33位くらいになる。とはいうものの、目標とする準決勝進出のためにはかなり記録を縮めなければならない。

2010年広州アジア大会100m、200m金メダルの福島だから、当然のことながらアジアで福島の記録を上回る選手はいない。
福島の次に中国の韋永麗が11秒41、そして日本の16歳土井杏南奈が11秒43で続く。

近年、アジアの陸上女子短距離の選手で、最も実績を挙げた選手といえばスサンティカ・ジャヤシンゲだろう。
2000年のシドニー五輪で、スリランカ人として1948年以来52年ぶりとなるメダル(銅メダル)を獲った選手だ。
その3年前のアテネ世界陸上、さらには2009年の大阪世界陸上の200mでも銀と銅メダルを獲っている。
200mを得意とし、100mでの実績は高くない。
が、100mの自己ベストは11秒04。
福島の日本記録を0.2秒近く上回る大変な記録だ。

ところが、ジャヤシンゲの11秒04はアジア記録ではない。
100mに10秒台というとんでもない記録を出した選手が2人もいたのだ。
一人は中国の李雪梅で10秒79、もう一人も中国の劉暁梅で10秒89。
この2つの記録は今から15年前の1997年に出されたものだ。

女子の100m世界記録は、フローレンス・ジョイナー(故人)の10秒49、1988年のソウル五輪の直前に出された記録だ。
女子の陸上では1980年代に出された世界記録がたくさん残っている。
当時の東ドイツやソ連の組織的なドーピングの残滓であると見られている。


同様に女子のアジア記録は、1990年代に中国人選手によって出されたとんでもない不滅の記録がたくさんあるのだ。
中国では日本の国体にあたる全国運動会(通称全運)が4年に一度開催される。
日本の国体と大きく違うのは、優勝者がほぼ五輪代表に選ばれること、そして表にウラに報奨金と称する大金が動くことだ。
選手は出身の省(広東とか河北とか)、直轄市(北京とか上海)、自治区(内モンゴルとか新彊ウイグルとか)ごとに争い、勝ったときに支払われるその母体からの報奨金は、五輪のそれを上回ったり、家が贈られたりするとも言われている。


下記の女子アジア記録の表をみてほしい。
中国人によるアジア記録は、1993年と1997年に集中している。
1993年、1997年ともに全国運動会の開催された年だ。*
1994年の広島アジア大会で中国競泳陣の大規模な組織的ドーピングが摘発され、2000年のシドニー五輪の開会直前には、ドーピング発覚を恐れた中国選手団が、大幅な選手の入れ替えを行うといった事件を経て、中国のドーピングは表には出にくくなるのだが、1993・1997年の全国運動会、特に陸上競技は、勝つためには手段は選ぶことはしないクスリ漬けだった、ということだろう。


*ジョイナーの10秒49を始めとする驚異的な世界記録は、ドーピングによるものではないかとの疑惑は誰しもが持っている。が、尿検体が既になく再検証することが出来ないため、記録を覆すことは出来ないでいる。


●陸上女子アジア記録 トラック競技等
100m 10.79 李雪梅 中国 上海全運 1997.10.18
200m 22.01 李雪梅 中国 上海全運 1997.10.22
400m 49.81 馬玉琴 中国 北京全運 1993.09.11
800m 1:55.5 東劉  中国 北京全運 1993.09.09
1500m 3:50.5 曲雲霞 中国 北京全運 1993.09.11
5000m 14:28.1 姜波 中国 上海全運 1997.10.23
10000m 29:19.12 王軍霞 北京全運 1993.09.08
マラソン 2:19:12 野口みずき 日本 ベルリン 2005.09.25

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