女子バスケット五輪予選敗退から考える
女子バスケットの世界最終予選が終了した。
日本は、最後の1枠をカナダと争ったが63対71で敗れて、2大会ぶりの五輪出場はならなかった。
この大会はトルコのアンカラで行われ、5つの椅子を巡って12カ国が争うというシステムだった。
日本(世界ランク15位)は、トルコ(同21位)、プエルトリコ(同24位)と同じA組に入った。
トルコに敗れるも、プエルトリコに勝ち、五輪出場決定戦でチェコに敗れ、敗者復活初戦で韓国に勝ったものの、カナダに屈したということだ。
日本対トルコの試合をご覧になった方は気付いたであろうが、トルコには米国出身の196センチのセンター・ホリングスワースがいた。
アフリカ系であったためこの選手は目立ったが、他にもオランダ出身のEsmeral TUNCLUER 175㎝、ブルガリア出身のNevriye YILMAZ 194㎝がおり、12人中3人が外国出身だった。
これまで、五輪どころか、世界選手権にも出場したことのなかったトルコの女子バスケが、昨年の欧州選手権でロシアに次いで2位に入り、今回ロンドン五輪出場も決めてしまった。
日本でトルコといえば、ネスリハン率いる女子バレーボールが有名だが、トルコの女子バレーも実は近年急速に力を付けたチームで、ロンドン五輪が初出場となる。
ご存知のように、2020年夏季五輪にイスタンブールが立候補しているトルコにとって、各スポーツの国際競技力を上げることは、招致活動をスムースに進める要因になるのだ。
ロンドン五輪で日本が出場権を獲れた競技は、サッカー男女、女子バレー、女子ホッケーの僅かに4種目。
近年ではシドニー五輪の3種目に次ぐ少数だ。
もちろん、野球やソフトボールが正式種目から外れたことも原因だが、少子化や不況、様々な要因がある。
男子バレーの選手人口の減少は目を見張るものがあるし、男子ホッケーは五輪予選の日本開催を何度くり返しても、本番にたどり着けない。
そろそろ、帰化選手の代表入りを本気で考える時期だろう。
外国出身の技術の高い選手を招いて強化を計ることは、古今東西どこでもやっていることだ。
例えば、今年の1月に日本で行われた水球のロンドン五輪アジア予選で優勝し、五輪出場権を得たカザフスタンのGKは元ロシア代表でシドニー五輪で銀メダル、アテネ五輪で銅メダルを獲ったニコライ・マキシモフだった。
2年前にロシアからカザフに国籍を移したらしく、この夏はカザフ代表で4度目の五輪を迎える。
4年前の北京五輪のロシア選手団に、2人の変わったプロフィールの選手がいたことは、日本ではほとんど知られていない。
この2人というのは、アメリカからロシアに帰化したバスケットボールの選手のことだ。
ひとりは、ジョンロバート・ホルデン、JRホルデンと呼ばれるアフリカ系のピッツバーグ生まれのアメリカ人。
アメリカではプロのバスケットボール選手になれなかったホルデンは、ラトビア、ベルギー、ギリシアを経てロシアに渡り、名門CSKAモスクワに入団した。
CSKAは、2005-2006年シーズンにヨーロッパクラブ王者になり、このときのホルデンの活躍は、時のプーチン大統領の目に留まった。
ポイントガードに恵まれていなかった『ロシア代表のために帰化をしろ』、プーチンの後押しで、ホルデンは僅か10分でロシア国籍を取得、ロシア語も話せないままロシア代表に入る権利を手にした。
2007年の欧州バスケットボール選手権決勝 ロシアは地元スペイン相手に終了直前、ホルデンのシュートで1点差で勝利した。
肝心の北京五輪でロシアは9位に終わったため、ホルデンのことは話題にもならなかったが、アシストランキングでは2位になった。
一方、女子のロシア代表にはレベッカ・ハモンというやはりアメリカからロシアに帰化した選手がいて、ロシアの銅メダル獲得に貢献した。
この例からわかることは、ロシアはスポーツでの国威発揚のためには、比較的簡単にロシア国籍を出しているということだ。
2年後にソチ冬季五輪を控えたロシアは、さらに海外の有能なウインタースポーツ選手に門戸を広く開けた。
フィギュアスケート・ペアの川口悠子がロシア国籍を取得したことは、知っているだろう。
韓国からは、トリノ五輪のショートトラックで金3、銅1を獲得したものの、連盟から追われた安賢洙が、ロシアに新天地を求め、ソチ五輪をめざしている。
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