マンチェスターシティとエティハド航空の世界戦略
8月5日の朝日新聞によると、MLBのニューヨークヤンキースの本拠地であるヤンキースタジアムで来季から米リーグサッカーMLSの試合が行われるという。
ヤンキースタジアムを本拠にするクラブは、新たにMLSに参入するニューヨークシティ(NYC)。
元スペイン代表FWビリャやイングランド代表MFランパードが入団するという。
NYCは、ヤンキースとイングランドプレミアリーグ昨年の覇者、マンチェスターシティー(マンC)が合弁で作ったチームだ。
昨シーズンのプレミアリーグを制したマンCは、世界戦略を進め、豪州では2009年に創設されたAリーグのメルボルン・シティFCの株式80%を取得、傘下に収めた。
そして2014年Jリーグの横浜Fマリノスの株式19.95%を取得、グループの一員に迎えた。
株式会社横浜Fマリノスの資本金が3100万円だから、マンCが出資した額は約620万円になる。
一方、マリノスの筆頭株主であり、親会社である日産自動車は、マンCのスポンサーになることを決定。
5年間で2000万ポンド(約34.4億円)の出資を決めている。
日産自動車は英国サンダーランドに従業員数は6000人規模の工場を持ち、2012年の年間生産台数は50万台を記録している。
過去10数年に渡り英国最大の自動車工場であり、作られた自動車は欧州各地に輸出されているのだ。
このブログでかつて
マンチェスターシティ(英プレミア)を買ったタイ元首相
という記事を書いたことがある。
タイの首相だったタクシン氏が、マンCを買収したという内容の記事だ。
これが2007年のこと、クラブは、翌年にはタクシン氏からUAEの投資グループの手に渡った。
現在、マンチェスターシティを傘下に持つ「CFGシティ・フットボール・グループ」の実態はAbu Dhabi United GroupというUAEの投資会社のことだ。
日産がマンCのスポンサーになって、ユニホームの胸にNISSANの文字が大きく踊ると思われる方も多いかもしれない。
が、マンCの胸のスポンサーはUAE、アブダビの航空会社エティハド航空が2009年から押さえている。
その額は10年でなんと6億4200万ドルだ。
マンCの海外戦略にエティハド航空はともに歩む。
メルボルン・シティFCのホームスタジアムのネーミングライツ(命名権)を取得し、NYCの所属するMLSの公式スポンサーの座も手に入れた。
近い将来Jリーグのスポンサーに名乗りを上げるかもしれない!?
今日、サッカー界で中東の航空会社の存在感は圧倒的だ。
エミレーツ航空はSONYやHYUNDAIなどとともに世界に6社しかないFIFAの公式パートナーだ。
チャンピオンズリーグの覇者リアルマドリードのほかアーセナル、ACミラン、パリ・サンジェルマン、ハンブルガーSVと欧州主要リーグの強豪とスポンサー契約を結んでいる。
一方、レアルのライバル、バルセロナの胸にはカタール航空のロゴがある。
なんと100年以上の歴史を持つこのクラブ史上初めて営利企業の名前が飾られているのだ。
英国の調査会社によると、世界の航空会社からスポーツ界への投資額は5億1500万ドル。
そのうちエミレーツとエティハドの2社で半分近くを占め、エミレーツだけでも1億8200万ドルに上る。
ドバイやアブダビは、世界の航空ハブにしなりたいと考えている。
地理的にも欧米とアジアとをつなぐ。欧米やアジアの潜在的な顧客を掘り起こすイメージ戦略だと思われる。
かつて、日本企業が欧州強豪クラブのスポンサーを務めていた時代があった。
マンチェスターユナイテッド SHARP
ASローマ MAZDA
アーセナル JVC
ユベントス SONY
アヤックス TDK
レッドスター TOYOTA
などいくつもあったが、今では随分少なくなった。
▲サッカー仕様のヤンキースタジアム 朝日新聞より