空席が目立つアジア大会 なぜ仁川は大会を招致したのか
連日アジア大会の熱戦が繰り広げられている仁川だが、観客席は空席が目立つ。
報道によれば入場券の売れ残りも多いと言われるが、こうなるとなぜ仁川はこの大会を招致したのか疑問だ。
仁川市がアジア大会を招致しようとした最も大きな理由国際ハブ空港としての「仁川」の名前を売ること。
もう一つは膨大な経済的効果のためだ。
仁川が立候補した2006年に、韓国の対外経済政策研究院は、アジア大会の開催に伴う経済効果を下記のように発表している。
・生産誘発=韓国全体で13兆ウォン(仁川のみで10兆6000億ウォン)。
・付加価値誘発=韓国全体5兆6000億ウォン(仁川のみで4兆5000億ウォン)。
・雇用誘発=韓国全体27万人(仁川のみで20万人)。
さらに、韓国の国会で特別支援法が制定されることにより、道路、交通、通信などのインフラ設備が新たに構築されることを望んだようだ。
実際にアジア大会を開催するにあたって17の会場の建設費は合計で1兆7200億ウォン(1720億円)。
運営費を含めた開催費は2兆2000億ウォン(2300億円)に達する。
08年末に1兆5400億ウォンだった仁川市の負債は、昨年末で3兆1500億ウォンまで膨らみ、財政状況は国内自治体で最悪レベルに陥っている。
それでも予定通りの経済効果が得られれば、市としては成功となるのだろう。
先に書いたように会場はどこも空席が目立つ。
人口1000万人を超すソウルに隣接する街であればもっと観客が多くてもいい。
日本から近いため、応援ツアーが多く催行されているかと思いきや皆無。
日韓関係の悪化に伴ってツアーが組まれなかったのかは不明だが、スタンドで応援している邦人はほとんど個人手配で現地に行っていると思われる。
観客の少ない理由、一つ考えられるのは韓国で国際競技大会が頻繁に開かれすぎるのではないだろうか。
夏季五輪 ソウル1988年
アジア大会 ソウル1986年、釜山2002年、仁川2014年
ユニバーシアード 大邱2003年、光州2015年
世界陸上 大邱2011年
世界水泳 光州2019年
*冬季大会を除く。
1986年以降の8回のアジア大会のうち、韓国で3回、中国で2回、日本・タイ・カタールが各1回ずつ。
西アジアで開催されたのが1回のみであることを考えると東アジアに偏りすぎであるのは明らかだ。
しかも韓国はどうしてアジア大会の翌年にユニバーシアードを開くのだろうか。
しかも2002-03と2014-15の2回もだ。
実は韓国は1970年のアジア大会の開催が決まっていた。
「決まっていた」というのも開催を返上した不名誉な出来事があったのだ。
当時の大統領は朴正煕。現韓国大統領朴槿恵の実父である。
1968年1月に北朝鮮の特殊部隊によるソウル侵入事件(青瓦台襲撃未遂事件)が勃発。
大会の安全が図れないという理由で1968年4月に韓国政府は大会を返上。
前回1966年大会を開催したバンコクが代替開催した経緯があるのだ。