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September 29, 2014

アジアに根を張る中国女子陸上の怪記録

仁川アジア大会も後半になり陸上競技が始まっている。
昨日の注目は男女の100m決勝。
2連覇を狙った福島千里は11秒49で、中国の韋永麗に0.01秒及ばず銀メダルに終わった。
福島千里は2010年の織田記念国際陸上(広島市)の女子100mで11秒21の自己ベストを出し、この記録は今も日本記録として残っている。
だが、今季の福島のベストは11秒44でアジアの中でも3位、トップはカザフスタンの選手、2位に中国の韋永麗が11秒40で着けていた。
それから考えれば、今の実力は充分出した銀メダルということだ。

近年、アジアの陸上女子短距離の選手で、最も実績を挙げた選手といえばスサンティカ・ジャヤシンゲだろう。
2000年シドニー五輪で、スリランカ人として1948年以来52年ぶりとなるメダル(銅メダル)を獲った選手だ。
その2004年のアテネ五輪、さらには2007年の大阪世界陸上の200mでも銀と銅メダルを獲っている。
200mを得意とし、100mでの実績はそれほど高くない。
が、100mの自己ベストは11秒04。
福島の日本記録を0.2秒近く上回る大変な記録だ。
ところが、ジャヤシンゲの11秒04はアジア記録ではない。
ジャヤシンゲが登場する以前に、100m10秒台という選手がアジアにも2人いたのだ。

一人は中国の李雪梅で10秒79、もう一人も中国の劉暁梅で10秒89。
この2つの記録は今から17年前の1997年に出されたものだ。
女子の100m世界記録は、フローレンス・ジョイナー(故人)の10秒49。1988年のソウル五輪の直前に出された記録だ。
女子の陸上では1980年代に出された世界記録がたくさん残っている。
当時隆盛を誇った東ドイツやソ連の組織的なドーピングの残滓であると見られている。

同様に女子のアジア記録は、1990年代に中国人選手によって出されたとんでもない不滅の記録がたくさんある。
中国には、日本の国体にあたる全国運動会(通称全運)が4年に一度開催される。
日本の国体と大きく違うのは、優勝者がほぼ五輪代表に選ばれること、そしてオモテにウラに報奨金と称する大金が動くことだ。
選手は出身の省(広東とか河北とか)、直轄市(北京とか上海)、自治区(内モンゴルとか新彊ウイグルとか)ごとに争い、勝ったときに支払われるその母体からの報奨金は、五輪のそれを上回ったり、家が贈られたりするともいわれている。

下記の女子アジア記録の表をみてほしい。
中国人によるアジア記録は、1993年と1997年に集中している。
1993年、1997年ともに全国運動会の開催された年だ。
1994年の広島アジア大会で中国競泳陣の大規模な組織的ドーピングが摘発された。
2年後の2000年のシドニー五輪の開会直前には、ドーピング発覚を恐れた中国選手団が、大幅な選手の入れ替えを行うといった事件を経て、中国のドーピングは表には出にくくなった。
が、実際にはドーピングは行われており、1993・1997年の全国運動会、特に陸上競技では、勝つためには手段は選ばなかった選手によって争われた、ということだろう。

*ジョイナーの10秒49を始めとする驚異的な世界記録は、ドーピングによるものではないかとの疑惑は誰しもが持っている。が、尿検体が既になく再検証することが出来ないため、記録を覆すことは出来ないでいる。


●陸上女子の主なアジア記録 トラック競技等
Chinaaa
400mH は2001年の広州全運で宋英蘭が同タイムの53.96を出している

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