新国立競技場とどちらが凄い?当初の見込みから11倍の工事費がかかったモントリオール・オリンピックスタジアム
FIFA女子W杯がカナダで開催されている。
24か国が参加し、以下の6つの会場で熱戦が繰り広げられている。
バンクーバー(BCプレイス)
エドモントン(コモンウェルス・スタジアム)
ウィニペグ(ウィニペグ・スタジアム)
オタワ(フランク・クレア・スタジアム)
モントリオール(オリンピック・スタジアム)
モンクトン(モンクトン・スタジアム)
これらの競技場の中に、2つオリンピックのメインスタジアムだった競技場がある。
ひとつは、バンクーバーのBCプレイス、もう一つは、モントリオールのオリンピック・スタジアムだ。
モントリオールオリンピックの開催は1976年。
商業オリンピックとして、オリンピック開催が黒字になるようになるのは1984年のロサンゼルスオリンピックから。
モントリオールオリンピックの時代は、まだ国家の一大事業だった時代だ。
オリンピック・スタジアムは、カナダ初のドームスタジアムを造るとして1973年に工事が始まった。
その当時の予算は1.34億カナダドル。
ところが、ストライキや工事の遅延がこれらのコストを上昇させた。
スタジアムの竣工は1976年の7月17日。この日までに2.64億カナダドルを費やした。
7月17日というのは、モントリオールオリンピックの開会式の日。
自慢の屋根も、目玉だったタワーも未完成のまま、ぶっつけ本番で開会式を迎えたのだ。
大幅に予算を上回り、その投資を回収するために、ケベック州政府はオリンピック開幕前の1976年5月から特別たばこ税を導入することにした。
気の毒なケベック州の住民は、なんとオリンピック閉幕の30年後の2006年11月まで、8%上乗せされたたばこの代金を支払い続けた。
この時点で7.7億カナダドルの工費を要し、さらに2006年から現在までのスタジアムの総工費は、14.7億カナダドルにまで膨れ上がることになる。
当初の予算の約11倍だ。
14.7億カナダドルは現在のレートに直すと約1477億円。
スタジアム自体は、オリンピックの翌年 1977年にMLBのモントリオール・エクスポスの本拠地として生まれ変わった。
1988年になって、簡易開閉式の屋根が設置され、オリンピックから12年経ってカナダ初のドームスタジアムとなったが、老朽化が進み、2004年にエクスポスはモントリオールを離れ、ワシントンDCに移り、ワシントンナショナルズとして再出発した。
ケベック州のたばこ特別税による借金返済は2006年まで続いていたわけだから、ケベック州の住民はエクスポスが移転してからも税金を支払い続けたことになる。
ちなみに23年のモントリオール・エクスポスの活動期間中、地区優勝が1回(1981年)あるだけで、Wシリーズ優勝はもちろん、リーグ優勝も一度もない。
ロンドンのウェンブリー・スタジアム、モントリオールのオリンピック・スタジアム、シンガポールのナショナルスタジアム。
人類史上、この3つのスタジアムが最も工事費が掛かっているだろうと思われるが、わが新国立競技場はその2~3倍の総工費を見込んでいるのだ。
▲モントリオールオリンピックスタジアム 70年代にこんな競技場造ろうと思ったらそりゃ金がかかる。
▲屋根を締めた状態