森元首相 19年ラグビーW杯で新国立が使えなくて100億円払う!?
ラグビーの2019年W杯日本大会組織委員会の森喜朗副会長は15日、メーン会場として想定した約8万人収容の新国立競技場が使えなくなったことで生じる減収分を補うため、組織委が国際統括団体のワールドラグビーに「100億円を払う」と東京都内での講演で述べた。
さらにその内訳について、大会協賛宝くじと、日本スポーツ振興センターからの助成金が原資になると説明したという。
この記事、一部の新聞でしか取り上げられておらず、海外のメディアでは全く触れられていない。
恐らく、14日に新国立競技場の2案が公表された際に、森氏はB案がいいと言ってしまい、馳文科大臣等に窘められた。
その目くらましに適当なことを言ってしまったのではないか。
ラグビーのW杯は、五輪やサッカーW杯とは少しシステムが異なる。
一口で言うと、ラグビーW杯は開催地の負担が大きい。
開催国は、まず、国際統括団体のワールドラグビー(WR)に、大会拠出金9600万ポンド(約180億円)を払わなければならない。
そして、スポンサー料やテレビ放映権料も全てWRが手にする。
WRは、得た拠出金をW杯後4年間のWRの活動資金とするのだ。
一方、大会組織委員会の主な資金源はチケット収入がほとんどで、こうした収益構造がより大きな会場で、高額な入場券という形で、会場を整備する自治体やラグビーファンの負担を大きくする。
2019年の日本大会で、新国立競技場が建設計画の白紙撤回で使えなくなったが、文部科学省によると入場料収入の減少は約20億円と試算されている。 8万人収容の新国立では開幕戦や決勝など7試合を行う構想だったが、開幕戦は5万人収容の味の素スタジアム、決勝は7万2千人収容の日産スタジアムに変更になった。
5週間に及ぶ大会を通して、入場料収入は200億〜260億円になると見込まれている。
近年、五輪でも開催国は政府による赤字補償を求められるが、同じようにWRは、入場料収入が大会拠出金を下回った場合=赤字になった場合、サッカーくじから最大36億円の助成金が入ることが決まっていた。
さらに文科省は、新国立競技場が使えないと分かった時点で、サッカーくじを運営している日本スポーツ振興センター(JSC)に対して20億円を追加するよう要請している。
北は札幌市から、南は熊本市まで、日本大会は12の都市が会場になっているが、各自治体は3億円という拠出金を負担し、合計36億円は、大会組織委員会に入る。
もちろん、自治体が行うラグビー場の改修費などはこれに含まれていない。
さらに、財界から総額38億円を目標に集める寄付金を募る予定だ。
以上のように2019年の日本大会の入場料収入が芳しくなくて、WRに拠出金が払えなかった際に初めて補填というはなしが出て来るのであって、森氏の100億円は、思い違いか、理解不足ではないだろうか。
もしくは、ザハ・ハディッドに支払う違約金がほぼ同じ金額であるので、混同しているのではないだろうか。
●サッカー、ラグビーの主な大会の1試合あたりの平均観客数
①1994年 サッカーW杯アメリカ大会 68,991
②1980年 モスクワ五輪サッカー 56,926
③1988年 サッカーユーロ西ドイツ大会 56,656
④2014年 サッカーW杯ブラジル大会 53,592
⑤2006年 サッカーW杯ドイツ大会 52,401
⑥1968年 サッカーユーロイタリア大会 52,183
⑦2015年 ラグビーW杯イングランド大会 51,621
⑧1966年 サッカーW杯イングランド大会 51,094
⑨1970年 サッカーW杯メキシコ大会 50,124
⑩2010年 サッカーW杯南アフリカ大会 49,670
サッカー、ラグビーの主な大会の1試合あたりの平均観客数をまとめてみた。
ベスト10の内、サッカーが9、ラグビーが1だが、その1が今年のイングランド大会だ。
イングランドは、史上初めて開催国ながら決勝トーナメントに進めなかったが、大会そのものは大成功。
1試合当たりの平均観客数は、50年近く前のサッカーW杯イングランド大会とほぼ同じという興味深い結果が出ている。
1966年のサッカーW杯イングランド大会は、サッカーの母国であるイングランドで初めてW杯が開催され、イングランドが初優勝を飾った大会である。
その伝説のW杯とほぼ同じ観客を集めた、イングランドのラグビーファンの懐の深さが窺い知れる。