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January 12, 2016

陸上円盤投げ女子の永遠に破ることのできない世界記録

英国陸上競技連盟(UKA)は11日、陸上界にはびこるドーピングや汚職スキャンダルを受けて、すべての世界記録を見直すことなどを求めた。UKAは、「クリーンな陸上競技のための宣言書」を掲げ、重大な薬物違反は永久追放処分にすべきであると主張している。【AFP=時事】

英国陸上競技連盟はいいことを言った。全面的に賛成だ。
昨年、ロシア陸上競技連盟が組織的なドーピングを隠蔽し、今年のリオ五輪に出場できない可能性もあることは、ご存じだろう。
今年に入って早々に、あまりドーピングとは縁がないように思われていたオランダの元選手が衝撃的な告白をした。

1984年ロサンゼルス五輪の陸上女子円盤投げの金メダリスト、リア・スタルマン(オランダ)が8日、地元テレビ番組で現役時代のドーピングを告白した。現役引退前の約2年半、筋力増強作用のあるアナボリックステロイドを使用したという。AP通信などが報じた。 ロス五輪後に引退した64歳のスタルマン元選手は「東欧の選手に対抗するためにドーピングを始めた。 当時は抜き打ち検査もなかったのでリスクがなかった」と述べたと言う。【共同】


このブログでは、随分前から1980年代の陸上競技、特に女子は、ドーピングによると思われるとんでもない記録が世界記録として残り、『永遠に破られることはない』と指摘している。
女子の円盤投げは、灰色の種目の最たるものだ。

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女子円盤投げの世界歴代記録をご覧いただきたい。
1位から10位まですべてが1984年から1989年にかけて作られた記録であり、6人の選手が旧東ドイツ、残りの4人も共産主義だった東欧圏だ。
彼女らが記録を出した大会は自国もしくは隣国での大会、それだけドーピング検査が緩かったということだ。

先のドーピングを告白したスタルマン女史だが、自己ベストは1984年、ロス五輪の直前に出した71m22、この記録が世界歴代17位で、ロス五輪で金メダルを獲った時の記録はなんと65m36でしかない。
繰り返すが、ロス五輪で引退した彼女は、『現役引退前の約2年半、筋力増強作用のあるアナボリックステロイドを使用した』。
1982年からロス五輪までクスリ漬けになっても65m36しか投げられないのだ。
ロス五輪は、ご存じのように東側諸国がボイコットした大会で、女子円盤投げも本来のメダル候補が全く参加しなかった大会であり、スタルマン女史の金メダルは偶然の賜物でしかない。

IAAFが世界記録の見直しをしない限り、人類最後の日まで世界記録保持者であろうガブリエレ・ラインシュ。
1988年のソウル五輪。
東ドイツ、ソ連といった東欧諸国は、8年ぶりに五輪に参加した。
東ドイツから女子円盤投げにエントリーしたのは、マルティナ・ヘルマン、ダィアナ・ガンスキーとガブリエレ・ラインシュ。

マルティナ・ヘルマンの実績は抜群だった。
1983年の第1回世界陸上ヘルシンキ大会で優勝(68m94)、1987年第2回世界陸上ローマ大会で優勝(71m62)、そしてソウル五輪も72m30で制した。
ローマとソウルの記録はそれぞれ大会記録として今も残っている。
一方の世界記録保持者としてソウル五輪に臨んだガブリエレ・ラインシュは、70mを超えることができず、67m26がやっと、7位で五輪を終えた。
とは言え、記録をよく見てほしい。
2年半クスリ漬けだったリア・スタルマンのロス五輪金メダル記録65m36を2m近く超えているのだ。

東ドイツやソ連といった国がどれだけ組織的なドーピングしていたかが判るだろう。

2012年のロンドン五輪。
女子円盤投げの競技終了後の結果はこうだった。
  ①サンドラ・ペルコビッチ(クロアチア)69m11
  ②ダリア・ピシチャルニコワ(ロシア) 67m56
  ③李艶鳳(中国)67m22

ところが、2012年5月に採取したピシチャルニコワの検体からアナボリックステロイドのオキサンドロロンの陽性反応が検出された。IAAFは出場停止処分とし、2013年4月には、ロシア陸上競技連盟は10年間の出場停止処分とし、2012年5月以降の記録抹消とした。
そして、ロンドン五輪で獲得した銀メダルを剥奪した。
その結果、メダル獲得者は下記のようになった。

  ①サンドラ・ペルコビッチ(クロアチア)69.11m
  ②李艶鳳(中国)67.22m
  ③ヤレリス・バリオス(キューバ)66.38m

ピシチャルニコワには大きな前科があった。
2007年の大阪世界陸上競技選手権大会では自己ベストを更新する65m78を記録し、銀メダルを獲得するが、ドーピング違反の嫌疑をかけられ北京五輪には参加できなかった。
北京五輪後の10月、ピシャルニコワは薬物違反があったと認定され、他の6人のロシア人選手とともに2年9か月の出場停止処分を受け、大阪世界陸上の銀メダルも剥奪された。

ピシチャルニコワ自己ベストは2012年の70m69。
もちろん、正式な記録ではなくなっているが、世界歴代21位に相当する。
この選手のような10年間の出場停止を受けるような、悪質なドーピングを繰り返す選手よりもベスト記録が上の選手が20人以上いるのが、陸上競技の世界なのだ。

先に書いたようにほとんど1980年代の永遠に破ることのできない世界記録は、当時の検体が残っていないため、今この時代にドーピングを立証することは難しい。
昨年、IAAF会長にセバスチャン・コーが就いた。
陸上競技のすべての世界記録を見直すこと スポーツ界に根付く多くのタブーを壊してきたコーの手腕に期待をしたい。


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