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July 04, 2016

アリソン・フェリックスも届かない、陸上女子400mの永遠に破ることのできない世界記録

米国では,、リオデジャネイロ五輪の選考会が,、陸上競技でも行われている。
けがが心配されたアリソン・フェリックスが400mに出場、49秒68で制し、4大会連続の五輪を決めた。
アリソンは、リオ五輪本番では200mと400mの金メダルを目指す。

アリソンのこの日のタイム49秒68は今季世界1位であるが、彼女の自己ベストは昨年の北京で行われた世界陸上で出した49秒26。
とんでもなく凄い記録なのだが、世界記録よりも1秒6以上遅く、世界歴代17位でしかない。
世界記録の47秒60を出したのは東ドイツ(当時)のマリタ・コッホ。
1985年にオーストラリアの首都キャンベラで陸上W杯が開催されたときの記録だ。

Josi400m

この前年にロサンゼルス五輪が行われたが、ソビエトをはじめとする共産圏と呼ばれた国々の多くは、モスクワ五輪の報復ボイコットをし、多くの選手が涙を飲んだ。
この当時世界陸上は4年おきに開催されており、東独スポーツ科学の成果を晴らす大会としてキャンベラのW杯がターゲットにされたのだろう。
YOUTUBEに動画があったが見てほしい、とにかくすごい走りだ。
このレースで2位になったオルガ・ブリズギナ(ソビエト→ウクライナ)も48秒27(世界歴代4位)の凄い記録を出している。

マリタ・コッホ(当時・東ドイツ)が「薬物を使用していた」という証拠は見つかっている。
が、コッホの記録が抹消されるとか、取ったメダルがはく奪されるとか言った話はない。

実は、このキャンベラの大会の100mにベン・ジョンソンが出場し、10秒00で勝っている。
2015年12月23日の朝日新聞に、ベン・ジョンソンのインタビューが掲載されているのだが、この大会の話しもしている。
自らのドーピングは、この大会のマリタ・コッホがきっかけだと言いたいようだ。

 

私は84年ロサンゼルス五輪の100メートルで銅メダルを取った。その翌年、オーストラリアで開かれた陸上ワールドカップの女子400メートルで、東ドイツのマリタ・コッホが47秒60というとてつもないタイムで走った。30年経った今も破られていない世界記録だ。この大会で10秒ちょうどで優勝した私は、コーチのチャーリー・フランシスと一緒にそのレースを見ていた。ゴールした後、チャーリーは「今まで誰もドーピングをしていないと思っていたけど、東ドイツで何が起きているかわかった」と私に言ったんだ。

 

ベン・ジョンソンが一度は優勝しながら失格したのはソウル五輪。
同じソウル五輪の女子100mに金メダルを獲ったのは、フローレンス・ジョイナー。
この2人のソウルまでの道のりはよく似ている。
ジョイナーの金メダルの記録は10秒54(追い風)だが、同じ年に10秒49という驚異的な世界記録を出している。
ソウルの4年前のロサンゼルス五輪では200mに出場、22秒04の記録で銀メダルを獲っているが、東ドイツ勢が出ていないから銀メダルが獲れたと言われた。 
ソウル五輪は200mでも21秒34の世界新記録で金メダルを獲った。
(このあたりの経緯もベン・ジョンソンにそっくりだ。)
ジョイナーの100m、200mの記録はもちろん今も世界記録だ。

だが、あまり知られていないが、ジョイナーのソウル五輪で最も凄かったのは、専門でないのに出てきた4×400mリレーではないだろうか。
これもYOUTUBEに動画がある。

 

結果から言うと、ソビエトチームが3分15秒17の世界新記録で金メダル。
メンバーはタチアナ・レドフスカヤ、オルガ・ナザロワ、マリヤ・ピニギナ、オルガ・ブリズギナ。
一方の米国は、ディニアン・ハワード、ダイアン・ディクソン、バレリー・フックス、フローレンス・ジョイナーのメンバーで3分15秒51で銀メダル。
この2つの記録は28年経った今も世界歴代1・2位の記録として残っている。

しかも

ソビエトのアンカー、オルガ・ブリズギナは47秒81(世界歴代2位相当)、米国のアンカー、フローレンス・ジョイナーは48秒08(世界歴代3位相当)で400mを走った。

もちろん、リレーの記録と単独種目の400mの記録を比較することはナンセンスだが、このレースは五輪史に残るレースと言ってもいいだろう。

IAAFに今も残るフローレンス・ジョイナーのプロフィールのページに400mの記録はない。
400mの世界歴代100傑の中にもジョイナーの名前はない。
ジョイナーは公式な大会で400mを走ったことはほぼないのだ。
にも拘らず、五輪の4×400mリレーの決勝にアンカーとして出てきて、48秒で走ってしまうとは…。

オルガ・ブリズギナもフローレンス・ジョイナーもドーピングの疑惑はあるものの、発覚したことはない。
が、ジョイナーはソウル五輪の10年後、1998年9月21日に心臓発作で急死した。享年38歳。
ドーピングの影響ではなかったのかと今なお言われているが、真相は分からない。

オルガ・ブリズギナの娘で、陸上短距離選手になったエリザベタ・ブリズギナは、ウクライナ代表としてロンドン五輪の4×100mリレーに出場、銅メダルを獲った。が、アナボリックステロイドの使用が発覚、2013年から2015年まで2年間の出場停止処分を受けている。

 

やはりドーピングの闇は深いのだ。

 

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