« リオデジャネイロ五輪はこれを見逃すな③ テコンドー大国は韓国かそれともイランか? | Main | NBCテレビが、リオ五輪の開会式の選手団入場の順番を変えるよう迫っているのだが »

July 26, 2016

ロシア選手はリオに行くべきだ

Moscow

これは朝日新聞の記事なのだが、モスクワ五輪を紹介する際に「西側諸国がボイコット」と必ず書いている。
が、本当にそうか?
カーター米大統領(当時)から圧力を受けて日本や西ドイツ(当時)や韓国はもちろん同調してボイコットしたが、実は西ヨーロッパの主要国は多くが参加している。

イギリス、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、オーストリア、オランダ、スイス、ベルギー、ギリシャ、アイルランド等
ほかにもブラジル、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドなども参加している。

だから、前述の朝日の記事にはとても違和感を感じる。
朝日にも当時を知る人が少なくなったのだろうか。大高宏元さんも昨年亡くなったと聞いたし。

この当時JOCは、日本体協に属する一委員会に過ぎず、政府から14億円の国庫補助金の打ち切りを示唆されてあっさりとモスクワ五輪不参加を決めた。
この当時の読売新聞の社説には『五輪より外交』などという文字が並んでいるが、米国追従は今も昔も変わらない。

当時のIOC委員は、選手出身の委員よりも、欧州の王族や経済的な成功者が多くを占めるブルジョアクラブのようなものだったため、スポーツの世界、あるいは社会全体の動きに疎い連中の集まりだった。
そのため、「モスクワ五輪ボイコット」を突如ぶちまけたジミー・カーターを説得するでもなく、打開案を見出すでもなく、みすみす五輪の崩壊を指をくわえて見ていただけだった。

日本もJOCは不参加を決めたが、日本バレーボール協会や日本レスリング協会は個別に参加できる道を必死に探した。
が、IOCはついに動かなかった。

今のロシアの状況を見るとモスクワ五輪当時のことを思い出してしまう。
各競技の統括団体が認めるのであれば、ロシア選手はリオに行くべきだ。

今日の朝日には山下泰裕氏のコメントが出ている。

山下泰裕氏は「ドーピングは許されない。不正が疑われる選手には厳粛な対応を取らなければいけない」と語った。現役時代、「幻の五輪」といわれた1980年モスクワ大会で日本選手団のボイコットを経験した。「個人的には不正に関わっていない選手の思いが気になっていた。五輪は一生に1回しか出られない人が多い。そういう意味で、出場の道が開けたのはよかったんじゃないか」

全くそう思う。
山下泰裕氏と同様にモスクワ五輪が幻となり、涙した柔道の代表は7名。
その内4年後のロサンゼルス五輪に参加できたのは山下氏のみだ。
五輪は一生に1回しか出られない人が多い。そういう意味で、出場の道が開けたのはよかったんじゃないか
には実感がこもっているのだ。

●モスクワ五輪柔道幻の代表
60kg級 森脇保彦 1981年世界柔道金
65kg級 柏崎克彦 1981年世界柔道金
71kg級 香月清人 1979年世界柔道金
78kg級 河原月夫 1970年全日本選手権2位
86kg級 藤猪省三 1971・73・75・79年世界柔道金
95kg級 恵谷正雄
95Kg超・無差別級 山下泰裕 1979・81・83年世界柔道金 ロサンゼルス五輪無差別級金メダル。

モスクワ五輪が閉会し、新たにIOC会長になったばかりのアントニオ・サマランチは、銀行家から外交官になり、IOCに入った人物だ。
社会の変化と現状を示そうと、1981年の五輪コングレスに初めて、現役選手に発言の場を設けた。

このときIOCを舞台に、選手の立場から初めて演説をしたのがセバスチャン・コー。
世界に3人しかいないモスクワ・ロサンゼルスの両五輪で金メダルを獲った人物だ。
ロンドン五輪組織委員会会長を経て現在は、IAAF会長を務める彼は、モスクワに選手を送らなかった国、送ることを妨げた国を痛烈に批判した。
「五輪選手の負担は大きく、その犠牲は無視すべきでない。IOCには、選手への社会的配慮を保証する、道義的義務がある」と。

|

« リオデジャネイロ五輪はこれを見逃すな③ テコンドー大国は韓国かそれともイランか? | Main | NBCテレビが、リオ五輪の開会式の選手団入場の順番を変えるよう迫っているのだが »