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August 05, 2016

リオデジャネイロ五輪開会式は、ブラジルから世界に発せられるメッセージに注目だ

五輪開会式というとどういった印象を持つだろうか。
五輪の中でも最も華やかなイベントであり、入場券も最も高額になる。
実はこんな意味合いもあるのだ。

五輪の開会式は、開催国から全世界に向けてメッセージを発信する唯一の場所である。
これまでの五輪でも開催国からこんなメッセージが発信されている。

例えば1964年東京五輪、最終聖火ランナーは坂井義則氏(故人)。
後にフジテレビに勤務する人物だが、原爆が投下された1945年8月6日に広島で生まれた19歳の早大生だった。
「戦禍から立ち上がり、平和日本を象徴する若い力」を世界に披露した。

1976年モントリオール五輪
聖火は、17歳の少年(プレフォンテーヌ)と少女(へンダーソン)によりスタジアムに運ばれた。少年はイギリス系で、少女はフランス系だ。2人の手が1つの聖火を支え、力ナダの複合国家を象徴していた。
モントリオール市は、英語と仏語の二重言語都市であり、日本人選手を紹介する際の、JAPANに続けてアナウンスされるJAPONの耳慣れない響きが新鮮だった。
2人の青年は、カナダがボイコットしたモスクワ五輪の開会式にも現われた。その後結婚したという話もあったが、そちらはデマだった。

1988年ソウル五輪 蚕室五輪スタジアムに入ってきた聖火は、孫基禎(当時76歳・故人)から、女子陸上のヒロイン・林春愛(当時19歳)に渡された。
孫基禎氏は、朝鮮半島の日本統治下時代の1936年・ベルリン五輪に日本代表として出場し、マラソンで金メダルを獲った韓国の歴史的な英雄である。
老雄から若いアスリートへのリレーは、新しい韓国の出発を意味した。

近年の開会式の中で、最も印象深かったのは1996年7月、アトランタ五輪開会式ではないだろうか。
最終聖火ランナーとして姿を現したのは先に亡くなったモハメド・アリ。
アリは、パーキンソン氏病を患い、震える手を押さえながら聖火台に点火をし、世界中の感動を誘った。
アリが選ばれたのは病気を克服しようとしている姿をアピールするためだけではない。
舞台はアメリカ南部のアトランタ。人種差別を振り返り、人類の平等や平和を訴えるというさらに大きな意味を、アリを通して訴えていたのだ。

そして8年前の北京五輪開会式。
中国政府はこんなメッセージを世界に送った。

・発展する中国
・多民族国家中国
・悠久の歴史を誇る中国

ところが、CGによる花火、異なる民族の衣装を纏った漢民族の子どもたち、口ぱくの歌声・・・。
見栄を気にし、中華思想丸出しの開会式を覚えておられる方も多いだろう。

ロンドン五輪は、傑作でユーモアと人間らしさのある英国らしいものだった
エリザベス女王が007の主人公ジェームズ・ボンドを演じる俳優ダニエル・クレイグにエスコートされ、空からパラシュートで降下したかと思うと、直後にスタジアムに本物の女王が登場。会場は拍手に包まれた。

ロンドン交響楽団の一員には、Mr.ビーンことローワン・アトキンソンが入り込み、笑いを誘った。
「ヘイ・ジュード」を披露したポール・マッカートニーもよい老け方だった。
ロンドン五輪の開会式は、英国流の荘厳さとユーモアが同居し、大変素晴らしかった。

英国選手団の旗手は、選手の投票で旗手に選ばれた自転車トラックのクリス・ホイ。
クリス・ホイは初のスコットランド人旗手だったが、ユニオンジャックを堂々と掲げた。

南米初の五輪にリオデジャネイロはどんなメッセージを送るのか。
そして4年後東京は2度目の五輪に何を託すのだろうか。

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