オリンピック放送における中国のあまりに大きな存在感
8月21日午前
リオ五輪女子バレーボール決勝、NHK総合では中国対セルビアの試合が生中継されている。
中国の人たちが五輪中継に見入るとどういうことが起きるか。
過去に書いた文章を再度掲載する。
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2004年のアテネオリンピック期間中、世界中で最もテレビ観戦されていた競技は何か。
普通に考えれば、陸上や体操、競泳、あるいはバスケットボールといった花形競技を挙げる人が多いだろう。
次に挙げる資料は、アテネオリンピックの公式報告書
(http://olympic-museum.de/o-reports/report2004.htm)による、競技別のテレビ視聴者数である。これをご覧いただくと分かるが、アテネ大会で最もテレビ観戦された競技、それはなんとバレーボールなのだ。
●アテネオリンピック視聴者数 (公式報告書http://olympic-museum.de/o-reports/report2004.htmより)
305,500万人 バレーボール
270,700万人 バスケットボール
255,700万人 陸上
140,200万人 体操
138,500万人 卓球
128,200万人 サッカー
121,000万人 競泳
108,600万人 飛び込み
-80,300万人 柔道
-78,000万人 射撃
-54,300万人 バドミントン
-53,500万人 ハンドボール
-52,200万人 ビーチバレー
-48,800万人 ホッケー
-46,200万人 テニス
-43,000万人 重量挙げ
-42,800万人 ソフトボール
-42000万人 野球
-39,100万人 ボクシング
-34,900万人 自転車(トラック)
-25,900万人 レスリング
-25,900万人 フェンシング
-23,000万人 シンクロナイズドスイミング
-22,500万人 新体操
-21,300万人 アーチェリー
-19,900万人 馬術
-19,700万人 水球
-18,400万人 テコンドー
-18,300万人 ボート
-16,000万人 自転車(ロード)
-15,900万人 トライアスロン
-15,700万人 カヌー(カヤック)
-11,900万人 カヌー(スラローム)
-11,600万人 マウンテンバイク
-9,800万人 セーリング
-4,900万人 近代五種
-3,100万人 トランポリン
意外にもバレーボールが、アテネオリンピックでは視聴者数1位となった理由。
そこには中国の存在が大きく関わっている。
中国はアテネ大会において史上最高のメダル争いを演じており、多くの国民がテレビに釘付けとなった。アテネ大会の総放送時間は3万5000時間に及び、世界で延べ400億人が視聴している。中国だけを見ても延べ90億人が8時間、中継を見ており、国内での注目度の高さが伺える。中でも、ロサンゼルスオリンピック以来20年ぶりに金メダルを獲得した女子バレーは、多くの視聴者を集めた。
2004年8月29日に行われた女子バレーの決勝は、中国とロシアの対戦となった。中国全土で生中継されたこの試合は、中国時間で午前1時開始という遅い時間ではあったが、土曜日の深夜(日曜日未明)ということもあり、多くの中国人がテレビ観戦をしている。試合は、ロシアが2セットを先取する波乱の展開を見せたが、中国が後半3セットを連取して優勝を決めた。
20年ぶりの金メダルにマスコミの興奮はなかなか冷めず、「奇跡の金メダル」のシーンは、繰り返し全国ネットで流された。帰国した選手、監督は相次いでテレビに出演し、アイドル並のスケジュールをこなしていた。13億人もの人口を擁する中国の代表が世界最強となり人気を獲得したこと、これこそが、バレーボールの視聴者数を飛躍的に伸ばした理由と言えよう。
一方、男子バレーはブラジルがイタリアを破り、優勝を果たした。ブラジルの人口は約2億人強、もともとバレーボール人気の高いブラジルでは当然、多くの人が決勝戦を見ている。この時のテレビ占拠率は70パーセントにも達したという。ブラジルチームの金メダルもまた、視聴者数1位の要因であろう。
話を中国に戻すと、バレーボール以外の競技の視聴者数にも、中国の存在感が見える。
たとえば卓球が5位に入っているが、中国は言わずと知れた卓球王国である。またオリンピックをはじめとする国際大会を見ると分かるように、中国出身の選手が世界各国で活躍し、打倒中国に燃えている。他国でプレイする裏切り者の元中国人を、中国選手が叩く。この様子をテレビで見て、溜飲を下げた中国人が多いというわけだ。
ほかにも飛込みが8位、バドミントンが11位に入っているが、これらの競技も中国の得意種目である。中国人選手が次々と勝利をおさめていく様子を「自国の誇り」と応援する国民。中国の存在は、大会全体の視聴者数を大きく揺るがすだけの力があるのだ。
IOCやスポンサー企業が、北京オリンピック開催に並々ならない意欲を持っていたのは、こういった理由がある