平昌オリンピックをめざす韓国のアイスホッケー
札幌市と帯広市で開催されている冬季アジア大会、男子のアイスホッケーの日韓戦は4-1で韓国が勝利した。
冬季アジア大会が1986年に始まって以来8回目の歴史の中で、アイスホッケー日本男子代表が韓国に負けたのはこれが初めてだ。
●冬季アジア大会における男子アイスホッケー日韓戦の結果
2017年札幌大会
日本1-4韓国
2011年アスタナ/アルマトイ大会
日本6-1韓国
2007長春大会
日本3-0韓国
2003青森大会
日本11-2韓国
1999江原道大会
日本13-1韓国
1996ハルビン大会
日本6 –1韓国
1993年札幌大会
日本11 –7韓国
1986年札幌大会
日本20 –1韓国
元々韓国でアイスホッケーは盛んではなく、五輪開催国でありながら出場出来ない可能性もあった。
アジア大会でも日本にとっては、好敵手というには程遠い存在だった。
ところが、特に男子は急速に実力を付け、男女ともに開催国枠での韓国の出場が決まった。
短期間にアイスホッケーの強化を図るにはどうしたら良いか。
彼等がモデルとするのはもちろん日本である。
1960年から6大会連続五輪出場を果たしてきた日本代表も、1980年を最後に五輪の舞台に立てなくなり、1991年に長野五輪開催が決定した当時、その競争力は落ちていた。
地元の五輪で恥ずかしくない成績を求める声に、日系カナダ人を呼び、帰化してもらい、代表チームを強化することを実践した。
ライアン•藤田、ダスティ妹尾、マシュー•樺山、ライアン•桑原、スティーブ辻占、クリス•ユールといった日本にルーツを持つカナダ人が日本代表に加わり、日本は長野五輪で1勝(オーストリア戦)を挙げ、14か国中13位となった。
韓国でも代表チームの強化のために、外国人選手の帰化を進めることを決めた。
韓国では最近、特別帰化制度とよばれる制度が始まっている。
◆特別帰化=特定分野で優秀な能力を保持しており韓国の国益に寄与するものと認められる場合、特に国籍を付与する制度。一般帰化とは違い、既存の国籍を放棄しなくても良い。
この制度により5人のカナダ人と1人の米国人のアイスホッケー選手が韓国籍を取得した。
元々の国籍を放棄することなく二重国籍。
以下の6名である。
エリック・リーガン(カナダ)
マイケル・スイフト(カナダ)
マット・ダルトン(カナダ)
ブライアン・ヤング(カナダ)
ブロック・ラダンスキー(カナダ)
マイク・テストウィード(米国)
現在開催中の札幌冬季アジア大会には、ブロック・ラダンスキーを除く5名が韓国代表に名を連ねている。
しかし、アイスホッケーは代表チーム同士の実力差があまりにも大きく、先述の長野五輪の日本以外にも、2006年トリノ五輪を開催したイタリアは、11人も帰化選手を獲得した。
1992年のアルベールビル五輪にもフランス系カナダ人がメンバーにいたはずだ。
平昌五輪を控える韓国代表が、少し違うのは、韓国系カナダ人ではない、「白人」のカナダ人をメンバーに入れていること。
来年、平昌五輪本番で初めてアイスホッケーを見る韓国人は、違和感を感じないだろうか。
欧米のメディアも「青い目の韓国代表」には興味があるらしく、ニューヨークタイムスはマイク・テストウィードにインタビューしている。
「今はまだ私は正しい選択をしたのか疑問を感じる時があるが、韓国選手としてプレーすることは、大きな責任感が続くことであり、巨大なプレッシャーを感じている。韓国人たちは、平昌で、私たちが戦う相手を知らない。彼らは、帰化選手を連れて来たので、カナダとも対等に戦えると思っている。」と話している。
ニューヨークタイムスの記事は、韓国の帰化選手たちはアイデンティティの混乱に加えてアイスホッケーへの無関心、またそれとは正反対の過度な期待と戦っていると付け加えている。