アメリカにおいて進むオリンピック離れ ① 逃げ出すスポンサー
IOCの最高位スポンサー契約は「TOPプログラム」と呼ばれ、協賛金額は1社年間約100億円以上といわれている。
商業化路線が推進された1984年ロサンゼルス大会以降、五輪マークの独占的使用権など制度が整備され、企業からの協賛金は、各国・地域の国内オリンピック委員会や五輪組織委員会に分配されている。
日本ではパナソニックが1988年から務めていたが、長い間1社のみが続いていた。
ところが、2013年9月に東京五輪の開催が決まってから、ブリヂストン、トヨタが参入、特にトヨタは2024年までの総額1000億円にも上る大型契約と言われている。
これまでの長いTOPプログラムの歴史の中で、自動車会社の契約は初めて。
BMWや日産なども検討していたが、契約に至らなかったほど負担が大きい。
これだけでもIOCにしてみれば「東京を選んで良かった」になる。
一方、コカ・コーラと並んで、長い間五輪を支えてきたマクドナルドが、契約を3年残してTOPから撤退した。
民間企業だから、その理由は様々あるのだろうが、米国のメディアによるとリオ五輪の米国での視聴者は、4年前のロンドン五輪よりもかなり減らしたのが大きいという。
世界地図を見て頂くと判るが、米国とブラジルは経度がかなり重複している。
リオデジャネイロは、米国東部と時差が2時間(サマータイム時を除く)。
昼夜逆転していたロンドンや北京五輪と比べて、条件はかなり良かったはずだが、ロンドン五輪の米国内(NBCテレビ)の平均視聴率は17.5%、平均視聴者数3110万人だったが、リオ五輪の平均視聴率は14.4%、平均視聴者数2540万人は、ロンドンと比べてそれぞれ11%と8%下落した。
●夏季五輪開会式と閉会式/米国内での視聴者数
米国において、あるいは世界中どこでも、五輪離れが進んでいるという話がある。
東京五輪では、5競技が追加されて実施される。
野球・ソフトボールや空手はともかく、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンを実施するのは、これまで五輪を見なかった層にアピールするための追加だ。
さらには、東京五輪で新たに16実施される新種目の中にある3×3バスケットボールは、見事にテレビを意識した新種目だ。
マクドナルドのTOP撤退よりも、ひょっとしたら衝撃的ではないかという話がある。
USOCという組織がある。
JOCと同格の米国五輪委員会のことだが、USOCがこれまで契約していた以下のような多くの米国内向けスポンサーが、この一年で一斉に契約を終了させているのだ。
AT&T(通信)
Budweiser(ビール)
Hilton(ホテル)
Citi(金融)
TD Ameritrade(証券)
いずれも米国を代表するブランドではないか。
(ただし、Budweiserは現在はベルギーの企業の傘下にある。)
AT&Tに代わって、ComcastがUSOCのスポンサーに名乗りを上げているが、この会社はNBC放送の子会社だ。
米NBC放送がIOCと契約した2014・16年五輪の米国向け放送権料は43億8000万ドル。
何とも莫大な金額だが、この金額の12・75%が、実はUSOCに配分されている。
USOCの2016年の税務申告を見てみると、総売上高7億5,600万ドルに対し7,850万ドルの黒字を計上している。
IOCからテレビ放映権の配分として1億7300万ドル、スポンサー契約の配分が1億2100万ドルとある。
USOCは、米国内のスポンサーの動向に関わらず、潤沢な資金が常にあるのだ。