ドーピングだけじゃない 陸上界を惑わす国籍変更選手
世界陸上ロンドン大会が閉幕した。
終盤になって、日本チームは男子4継リレーや男子競歩が活躍したが、多くの選手は予選突破さえままならぬ状況で、世界のトップクラスとの差を痛感した大会でもあった。
次回は2年後、2019年カタールのドーハ、2006年のアジア大会のメイン競技場だったハリーファ国際スタジアムで、2019年9月28日から10月6日に開催される。
カタールのスポーツ界の顔と言えば、ムタズ・エサ・バルシム。
世界陸上ロンドン大会の走り高跳びでも金メダル(2m35)を獲った。
バルシムは、2010年の世界ジュニア選手権で2m30を跳び優勝し、その名を世界に轟かせた。
余談だが、この大会の200mの金メダリストが日本の飯塚翔太で、3位に入ったのがカナダのアーロン・ブラウン。
飯塚とブラウンはロンドン世界陸上の男子 200m予選7組で同走した。
ブラウンが、飯塚に先着していたが、コースオーバーのため失格となり、飯塚が繰り上がった。
ムタズ・エサ・バルシムは、長身痩躯の小顔という見るからに走り高跳びの選手と言う風情。
度々、アフリカからの帰化選手と間違えられるが、父親もカタール人、ただ、母親がスーダン人で、やはりアフリカの血が流れている。
カタールと言えば、世界中から優秀なアスリートを招き、カタール代表に仕立てて活躍させるという国家戦略を持つ。
リオ五輪にも出場したハンドボールは顕著な例で、さながら世界選抜軍団、純粋なカタール人は一人しかいなかった。
このカタール型選手選抜方式は、ロンドン大会でも見られた。
男子400mで銅メダルを獲ったアブダレラ・ハルーンは、元々はスーダン人。
ほかにも男子400mハードルで7位に入ったA・サンバはモーリタニア人である。
ところが、カタール以上に海外選手を青田買いした国があった。
ペルシャ湾を挟んで北西に位置するバーレーンだ。
バーレーンは、女子マラソンでローズ・チェリモが金メダル、ユニス・ジェプキルイ・キルワが6位入賞したが、2人ともケニア出身。
日常生活もほぼケニアで行い、表彰などでしかバーレーンに行かないという。
女子3000mでロンドンでは5位だったが、リオデジャネイロ五輪金メダリストのルース・ジェベットもケニア出身。
この人のリオ五輪金メダルには、500万米ドルが支払われているとの報道もあった。
ほかにも男子100mで準決勝敗退したAndrew Fischerはジャマイカ出身。
男子1500m 19位の Benson Kiplagat Seurei
男子5000m 28位の Albert Kibichii Rop
男子10000m 12位の Abraham Neibei Cheroben の3人はいずれもケニア出身。
女子400m 銀メダルのサルワ・エイド・ナセル
女子200m で準決勝まで行った Edidiong Ofonime Odiongはいずれもナイジェリア出身といった具合だ。
この2カ国ほどではないが、陸上選手の国籍変更は様々な国で起こっている。
業を煮やした国際陸連は、今年2月の理事会で選手の国籍変更を一時凍結。
今後は新たなルールの下に行われることになりそうだが、現時点で国籍を変更している選手はそのままということになりそうだ。
ドーピングとともに悩ましい問題である。