新・冬季五輪の記憶(4) カナダ人の80%が見たアイスホッケー決勝
2010 Vancouver
面白いデータがある。
カナダの歴史上で最も多くの視聴者を集めたテレビ番組のランキングである。
10位までのうち、7つが2010年のバンクーバー五輪。
▼カナダにおける高視聴者番組ベスト10
1964年の東京五輪が、押しなべて高視聴率だったというのは想像できる。
五輪に合わせてテレビが普及し、五輪にチャンネルを合わせ日本人選手の活躍に見入り、外国人選手の活躍に世界を垣間見た。
ところが、文字通りの先進国であるカナダで、夏冬合わせて3回目の五輪になぜそんなにも盛り上がったのか。
カナダのアイスホッケーが活躍したからだ。
アイスホッケーはカナダの国技である。
しかし、カナダはなかなか五輪チャンピオンになれなかった。
長い間プロの参加が認められていなかった五輸の舞台では、“ステートアマ”軍団のソ連が強く、金メダルから遠ざかっていた。
1988年の地元カルガリー大会からは、五輪へのプロの参加が認められたものの、NHLシーズンと五輪開催時期が重なるため、一流NHL選手は出場を見送ってきた。
カルガリー五輪の金メダルはソビエト、フィンランド、スウェーデンと続き、カナダは4位に終わっている。
バルセロナ五輪でのNBAのスター軍団の活躍に刺激され、NHLは五輪をショーケースと捉えるようになり、長野五輪以降は一流スター選手が五輪に乗り込んでくるようになった。
ただし、NHLに欧州のスター選手も所属するようになり、五輪に出場するチームはいずれもNHL選抜、なかなかカナダ言えども毎回金メダルが獲れる訳ではない。
1次リーグA組に入ったカナダはノルウェーに8-0で勝利、スイスに3-2で連勝するも米国に3-5で敗れ2位で決勝トーナメント(8か国)に進んだ。
まず予備選でドイツに8-2で快勝、準々決勝ではロシアを7-3と圧倒する。
準決勝のスロバキア戦は3-2で手堅く勝利し、決勝は再び米国と対戦。
ともにNHLのスター選手で固めたカナダと米国は、延長の末3-2でカナダが勝利した。
カナダの人口は約3400万人。
その内の80%、最大2650万人、平均でも1667万人のカナダ人がこの試合をテレビで見たという。
移民の多いカナダでは、9つネットワークが8つの言語で放送した。
一方、銀メダルの米国でも、視聴者数は記録的な数字となった。
アイスホッケーの過去最大の視聴者は、ミラクルオンアイスと呼ばれた1980年レークプラシッド五輪決勝 米国対フィンランドの3280万人。
この数字には及ばなかったものの、全米で2760万人の人が、TVの前に釘付けになった。
(ちなみに米国の人口は3億人を超える。)
来年の平昌五輪では、NHLのスター選手の活躍は見られない。
長野五輪以来5大会連続でNHLの選手が五輪参加してきたが、リーグ中断による経済的損失などを考慮し、平昌五輪には参加しないことになった。
NHLは世界市場開拓の一環として五輪に参加してきたが、NHLが実施したアンケートによると、リーグを中断しての五輪参加に反対するファンは米国で73%、カナダで53%に上ったという。
五輪開催時の2月は、リーグ戦の最中で、NFLや大リーグの公式戦がほぼない。
その時期に約2週間中断することは、チケット収入や放映権料など経済的な面から大きな損失となるとしている。