世界バレー赤字見込みの記事に対して
14日の朝日新聞朝刊にこんな記事が載った。
世界バレー、TBSが億単位の赤字見込み CM収入低迷
連日バレーボールの中継を楽しみにしている人にすれば、ショッキングな内容だろう。
赤字は事実としても、少し補足をしてみた。
世界バレーボール選手権を開催できる国は限られる。
競技力、アリーナの数、経済力等を考えて、日本のほかは、ブラジル、イタリア、ポーランドと中国くらいしかない。
朝日記事にタイも関心があるとされている。
タイ女子の近年の人気と実力の向上(ジャカルタアジア大会は中国に次いで2位)は著しいと思うが、他国同士の対戦の集客力が未知数だ。
男子はともかく、女子の世界バレーはまず24か国の出場国が多すぎ。
女子は16カ国で良いのではないか。(1998年大会まで16か国参加)。
ちなみに、バスケットボールのW杯(旧世界選手権)は、男子24か国(但し19年大会から32か国)、女子16か国で行われている。
世界バレー男子の2002年大会を開催したアルゼンチンは、不入りで大会中に組織委員会が破綻し、JVA(日本バレーボール協会)が補填したという経緯がある。
この大会以降、世界バレーの日本開催が多くなった。
女子98、06、10、18年
男子98、06年
W杯バレーの日本開催を続けている都合上、これ以前は、世界バレーの日本開催は遠慮していた気がする。
今年の世界バレーで、使用した会場は6会場。
2006年大会で、主会場だった代々木競技場第一体育館、東京体育館が再来年の東京五輪のため会場整備の影響で使えず、横浜アリーナが代替した。
横浜アリーナは、東京五輪のバレーボールのメイン会場に決まりかけたが、横浜はサブコート2面を用意できないため断念。370億円かけて新設の有明アリーナを作ることになった因縁のアリーナだ。
2006年世界バレーの会場
代々木競技場第一体育館 収容13,291人
東京体育館 収容10,000人
浜松アリーナ 収容8,000人
松本市総合体育館 収容7,000人
大阪市中央体育館 収容10,000人
日本ガイシホール 収容10,000人
2018年世界バレーの会場
北海きたえーる(北海道立総合体育センター) 収容8,000人
横浜アリーナ 収容12,000人
グリーンアリーナ神戸収容 6,000人
丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館) 収容8,200人
日本ガイシホール 収容10,000人
浜松アリーナ 収容8,000人
収用人数の大きいホール使いすぎが赤字の原因という説もあったが、2006年大会とほぼ同じ。
今大会は9月30日に、台風の直撃に遭い、鉄道が9時で止まってしまうというアクシデントがあったが、
その日を除き、入場者数が大きく落ちたということはない。
今大会の大きな相違点は、運営助成金としてFIVB(国際バレーボール連盟)から JVA に支払らわれていた2億円がなくなったこと。
さらに、これまでJVAの負担が50%だった外国チームの日本滞在の宿泊費、移動費が、全額JVAの負担になった。
恐らくJVAの赤字はこれだろう。
ただ、大会開催が決まった2014年から判っていたことだ。
TBSの負担は、2006年の放映権等が、男女合わせて23億円だったのが、今大会は女子のみで20億円になっている。
つまり、テレビで放送した試合数は半減したが、放映権はあまり変わらない。
そして、2006年の男子大会は、日本代表が8位に入る健闘を見せて盛り上がったため、関連収入が良かったというおまけも付いた。
2010年大会は女子のみの開催だったが、何と言っても日本が3位に入り盛り上がった。
世界バレーの視聴率は、サッカーW杯と箱根駅伝を除けば、今年最も高く、平昌五輪の一部の競技よりも高いはず。
それなのにスポンサー収入が集まらないというのは、それ以外の問題。
恐らくは日本のテレビ業界が時代についていけないのか、もしくは、企業の業績よくても国内消費は全く伸びてないので、CM打っても意味ない、テレビのCM効果に疑問が出ているということ。
FIVBの公式スポンサーは
Mikasa(ボール・日本)、
Senoh(体育施設機器器具メーカーでミズノの子会社・日本)、
Gerflor(床材メーカー・フランス)、
DBシェンカー(物流会社・ドイツ)
アシックス(スポーツウエア・日本)の5社だったが、この世界バレーの大会期間中に中国のGantenが加わった。
Gantenは清涼飲料水(ミネラルウォーター)の会社らしい。
今後バレー界において、中国の存在感が増すのは間違いない。
今年の世界バレーの男子大会にいいヒントがあると思う。
男子大会は、史上初めてイタリアとブルガリアの共催で行われた。
イタリアは、開幕戦を除くすべての試合を21:15開始、
ブルガリアは、全試合が20:40開始で、これは今回の日本女子と全く同じ開催国特権を行使。
ブルガリアは、アジア最強のイランに敗れるなどし11位。
イタリアは、第3ラウンドでセルビアに0-3で敗れるも、優勝したポーランドに3-2で執念の勝利を見せる。が、勝ち点の差で準決勝の4か国に入れず5位にて終了。
ちょうど今大会の日本女子と同じ状況だ。
イタリアは、ブラジル、ポーランドと並んでバレーボールの国内リーグの盛んな国。
目の肥えたファンが多いのだろう。
イタリアの出た試合は、何れも1万人前後の観客が詰めかけ、準決勝、3位決定戦、決勝の決勝トーナメントは、イタリアが出なかったにもかかわらず、12,000人の観客で埋まった。
とは言え、強豪でない国の対戦などでは、観客が1,000人に満たない試合もあった。
観客動員については、ほぼ、日本での今大会と同じようなものだ。
どの競技も男子に比べて女子の人気は低い中、1万人の人を集めるのはなかなかできない。
先日、スペインで開催された女子バスケットのW杯は、世界バレーの1/3程度の集客だ。
2022年の世界バレーは中国でやればいいと思うが、日本がどうしてもというなら日中で共催すればいい。
単独開催に比べて負担は半減、集客は2倍になる。
2019年に日本でW杯バレーが開催されるが、従来のような五輪出場権をかけた大会ではなくなる。
東京五輪のバレーボール出場12か国(男女とも)は、
1.開催国日本
2.2019年に行われる世界予選(ランキング上位24チームを6組×4で各組優勝国が五輪)
3.2020年1月に行われる各大陸予選(優勝国が五輪)
で決まる。
五輪開催年の春に日本で開催されてきたOQT(五輪最終予選)は、2020年にはない。
東京五輪がバレーボールの日本偏重を正す、きっかけになれば良いと思う。