続・陸上競技の短距離は、なぜ第1レーンを使わないのか
新しくなった国立競技場、旧国立競技場と大きく異なる点がある。
陸上競技用のレーンが9レーンあるのだ。
▲左が現在の国立競技場 右が旧国立競技場
旧国立競技場は、1964年の東京五輪だけでなく、1991年には世界陸上を開催した。
1964年の東京五輪当時、約7万人を収容できたが、改修とともに観客席は少なくなって最後は約5万席、レーンは五輪当時の8のままだった。
ワールドアスレティックス(世界陸連・旧IAAF)は、2002年から五輪、世界選手権のメイン競技場は観客席が7万人以上、陸上競技用のレーンは9レーンを必要としている。
▲五輪の開催された競技場 近年は曲走路、直走路ともに9レーン
何故9レーンが必要なのか?
中・長距離走の場合、トラックの内側が有利なので、1レーンの使用頻度が必然的に高くなる。
10000mでは1人が25周、5000mでも12.5周、主に第1レーンを走ることになる。
そのため短距離種目では、第1レーンを避け、2~9レーンを使用している。
この方が環境にもよく、競技場維持費も負担が少ないのだ。
であるから旧国立競技場はメイン競技場として不適格となり、新競技場が必要だった。
8レーンで行われた1964年の東京五輪の男子100m。
金メダルのボブ・ヘイズは1レーンを走った。
手動計測の世界タイ記録である10秒0、電気計時で10秒06(ただしこの時代は非公式)であったが、これが他のレーンであれば、更に驚くべき記録が出ていたかもしれない。
1936年から2004年までの五輪で1レーンを走って金メダルを獲った選手が3人いた。いずれも記憶に残る選手だ。
1936年 ジェシー・オーエンス(米国)10秒3
1964年 ボブ・ヘイズ(米国)10秒0
1976年 ヘイズリー・クロフォード(トリニダード・トバゴ)10秒06