昨日、ノルウェーのリレハンメルでハンドボールの欧州選手権決勝が行われ、デンマークがクロアチアに24-20で勝ち、北京五輪の出場権を手にした。
リレハンメルはご存知のように1994年の冬季五輪開催地。人口23000人の村ながら、素晴らしい五輪を開催した。
今回のハンドボールの試合は五輪時にはアイスホッケーの主会場だった「ホーコンホール」ホーコンとはリレハンメル五輪のマスコットの名前だ。
会場の収容人数は11000人、この日の観客は9052人だから死角になる席を除いてほぼ満員だった。
ヨーロッパはハンドボールの本場、非常に盛り上がる。
この日国際ハンドボール連盟の(IHF)のハッサン・ムスタファ会長(エジプト)が記者会見し、IHFの管理下で予選をやり直す決定が最終的なものであるとして、反発するアジア・ハンドボール連盟(AHF)の意向にかかわらず、29日から東京で開かれる予選の勝者が五輪出場権を得ると明言した。
以前にも指摘した通り、ムスタファ会長はエジプト人であり、クウェート王子のアーマド氏の肝いりでIHFの会長についたとされる。
公式の場でIHFの会長が始めてこの問題について明快に答えた。そして「韓国や日本はIHFに従っており、何のミスも犯していない」とも述べ、AHFが両国に処分を科した場合は認められないとの見解も示した。
今回ここまでIHFが踏み込むのには、アンフェアな状態が続くと五輪の種目からハンドボールを外すと、IOCが警告したためだ。
これに対し、アジアハンドボール連盟会長であるクウェート王子のアーマドは「日本で五輪予選を開催した場合、東京五輪招致を私は支持しない」と日本協会の渡辺会長に発言していたことがあきらかになった。(朝日新聞)
朝日の記事は、
アーマド会長はアジア・オリンピック評議会(OCA)の会長でもあり、中東やアフリカを中心に「30票を持っている」と言われる実力者。日本オリンピック委員会や東京都が力を入れている五輪招致活動に波紋を投げかけそうだ。と結んでいる。
アーマドが会長を務めるアジア・オリンピック評議会(OCA=OLYMPIC COUNCIL OF ASIA)は、1982年に、前身のアジア競技連盟(AGF)を継承して設立された。
実は日本も日本主導でも別の組織を作ろうとしたのだが、イスラム圏の結束と潤沢な資金に適わなかった経緯がある。
このOCAはいわばIOCのアジア版であり、憲章にはスポーツ振興、体育施設の建設、そして凄いことにフェアプレーの奨励などもうたっている。
OCAは設立当時からイスラエルをメンバーから外すなど伝統的にアラブ色が強く、イラクのクウェート侵攻後はイラクを長い間追放していた。
オイルマネーを背景にアーマドの父親のシェイク・ファハドが初代会長となり、本部をクウェートに作った。
このシェイク・ファハドこそが、1982年のスペインW杯のフランス対クウェート戦で、アラン・ジレスのゴールを取り消したその人だ。
1990年のイラクのクウェート侵攻でシェイク・ファハドが死亡すると、その息子であるアーマドが後を継いだ。
現在アーマドは下記のようなスポーツ界の要職にある。
OCAアジアオリンピック評議会会長
AHFアジアハンドボール連盟会長(常任理事6人のうち3人はクウェート人)
IHF国際ハンドボール連盟理事(理事の2人がクウェート人)
そして国際オリンピック委員会IOC委員だ。
気になるIOC委員30票を動かすアーマドだが、北京や大阪が立候補していた2008年五輪招致レースにおいては1998年8月の段階では「OCAの会合を招集し、アジアでの夏季五輪開催に向けて大阪支持を取り付ける。OCAもオリンピック・ムーブメントの一本部として、単なるバックアップだけではなく、キャンペーンを張っていかなければならない」と、大阪支持を打ち出していた。
にも拘らず、僅か4ヵ月後には「開催地をアジアに持ってくることが最も重要。北京が最も強力な候補と思う」と北京支持に変わっている。
そしてOCAが先頭に立って積極的な北京の招致運動をバックアップした。
中東やアフリカさらにはイスラム圏の国のスポーツ関係には莫大な額の援助がクウェートから出ている。
30票もあながち誇張ではない。
2016年五輪に立候補しているのは次の都市
アゼルバイジャン バクー
アメリカ合衆国 シカゴ
カタール ドーハ
スペイン マドリード
チェコ プラハ
ブラジル リオデジャネイロ
日本 東京
書類選考で3~4都市に絞り、IOC委員による投票になると思われる。
7都市のうち、ドーハはアラブのグループ、バクーはイスラム仲間だ。
だが、ドーハもバクーも最終選考には残らないだろう。
とすると、アーマドのまとめる30票はどこへ?
photo:IOCのサイトより
アーマドはAhmad Al-Fahad AL-SABAHと綴るが、AhoMadのほうが良かったのに・・・。
●参考記事
国際ハンドボール連盟の会長は再試合反対?
クウェートの王子が牛耳るハンドボール