バスケットボール

March 06, 2020

リオ五輪の男子バスケットボール決勝は NBAファイナルの1/3の視聴者しかいなかった

3月4日(日本時間5日)。
NBAワシントン・ウィザーズは敵地モーダ・センターで、ポートランド・トレイルブレイザーズ戦に臨んだ。
八村塁は憧れの選手だというカーメロ・アンソニーとマッチアップをすることになった。

カーメロ・アンソニーは35歳。
20歳のときのアテネ五輪から前回のリオ五輪まで、4大会連続で全米代表に選ばれ、銅、金、金、金と4つのメダルを獲った選手だ。

先日急死したコービー・ブライアントやレブロン・ジェームスもご五輪の金メダルは2個。
3個の金メダルを含む4個のメダルを獲ったバスケット選手は、米国五輪史上男子では、カーメロ・アンソニーが唯一の存在だ。

NBAのドリームチームが五輪に出場するようになって、米国が金メダルを獲れなかったのはアテネ五輪の1回のみ。
さぞかし米国のバスケットファンは、五輪のバスケットを楽しみにしている…と思うだろう。

 

興味深いデータがある。
2016年の米国で最も視聴者があったバスケットボールの試合ベスト10だ。
キャバリアーズ とウォリアーズによって争われたNBAファイナルが上位に来ているが、キャバリアーズが優勝を決めた7戦目は、なんと3100万人もの米国人が視聴している。

Tophoops2016-1

ベスト10には、NCAA(学生)の試合が2つランクインしているが、五輪の決勝 米国 対 セルビア はそれよりも下10位でしかない。
1170万人が視聴しているが、NBAファイナルの1/3でしかない。

ご存知のようにIOCの最大の収入源はテレビ放映権料だ。
NBCテレビは、2014年ソチ五輪から夏冬10大会の米国向け五輪放映権を計120億ドル(約1兆3000億円)で取得している。
夏冬含めた一大会平均は12億ドル

では、米国のテレビは、米国内のバスケットボール中継にはいくら支払っているのか。

NBA 27億ドル (ABCテレビ)
NCAA 7.7憶ドル (ターナー)

この金額は1シーズンの全ての試合を含んでいるのだが、NBAの方が、五輪一大会よりもずっと高いのだ。

なぜ、東京五輪が、前回1964年のように10月に開催できないのか、真夏の東京を危惧する声が聞こえるたびに「米国のプロスポーツと日程がぶつかるから」とその理由が言われてきた。
正確には「米国のプロスポーツと日程がぶつかり、そちらの方が放映権も高額で、多くの視聴者が見込めるから」となる。

もっとも、地球には中国という国があって、彼らはバスケットボールが大好きで、米国よりもはるかに多くの人が、NBAも五輪のバスケットも見ている。

 

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February 19, 2020

オリンピックのバスケットボールを振り返る アメリカのライバルはリトアニアかスペインか?

東京五輪の注目の競技に男子のバスケットボールがある。
何と言っても1976年のモントリオール五輪以来の五輪出場である。

1964年の東京五輪当時、五輪で行われていた球技は、男子のバスケットボール、男子のホッケー、男子の水球、男子のサッカーと当初は、東京大会のみの実施ということで行われた男女のバレーボールのみだ。

バスケットボールは、16か国が参加し代々木第二競技場で行われた。
日本はカナダ、ハンガリー、イタリア、フィンランドに勝利し10位に入った。

代々木第二の収容人数はわずかに3202人。

一方、2020年の東京五輪のバスケットボール会場は、江東区に新たに作る 夢の島ユースプラザアリーナを予定していた。
バドミントン会場を夢の島ユースプラザアリーナA、バスケットボール会場の夢の島ユースプラザアリーナBとし、その建設費約364億円と計画。
建設予定地は東京メトロ有楽町線 新木場駅から徒歩15分とあった。

というのも、東京五輪招致委員会は、建設費の高騰などにより、競技会場の計画見直しを決め、バスケットボール会場は、さいたまスーパーアリーナに変更になった。

さいたまスーパーアリーナは、2006年の世界バスケットボール選手権の会場になったところだが、所在地は埼玉県さいたま市。
選手村から8キロ圏内にほとんどの競技施設を揃えるという招致プランは、早々に崩れていた。

それでも収容人数は約20000人。
過去の五輪バスケット会場と比べても見劣りしない。
参考までに、五輪バスケットボールの最高観客試合は34064人。
アトランタ五輪の男子決勝の 米国95-69ユーゴスラビア戦だ。
会場はジョージアドーム、2017年に解体されていて、今はない。

東京五輪のバスケットボールのチケットはプレミアチケットだ。
NBAのスターで固めたドリームチームを間近に見ることは、生涯まずない。

Basket2020

1936年ベルリン五輪でバスケットが五輪正式種目採用されてから、2016年のリオ五輪までに、アメリカは132勝5敗、勝率96%、金メダル獲得14回。
だが、4回金メダルが獲れなかったことがある。

バスケット王国アメリカにとって、五輪の金メダルなど、大学生の良い選手を集めれば金メダルは十分に獲れるという競技だった。
かつて五輪は、厳格なアマチュアリズムの規定にも縛られ、当然プロ選手に門戸は開放されていなかった。

1972年ミュンヘン五輪、このときのアメリカチームは学生界のセカンドチーム的なメンバーだった。それでも全く他チームの相手になることなく、決勝まで駒を進めた。
対する相手は、ソビエト式選手育成法がピークに達する直前のソ連。冷戦華やかなりし時代に当然のように米ソが激突したのである。
アメリカは劣勢の試合に終始するも終了3秒前にフリースローでソ連を1点差で逆転、ここで試合終了かと思われた。

が、フリースローの前にソ連がタイムアウトを要求していたとして時計は3秒前に戻される。ソ連のインバウンズパスは失敗、アメリカは再び勝利に沸くが、FIBA(国際バスケットボール連盟)会長のW・ジョーンズの指示でなぜか時計は再び3秒前に。ソ連のロングパスからゴールが決まり、アメリカが五輪史上初めて敗戦を味わうことになった。

この2回のタイムリセットは不当だとして、アメリカは銀メダルの表彰台をボイコット。銀メダルは現在でもミュンヘン市の銀行の倉庫に保管され、当時のアメリカ関係者は今も優勝はアメリカであると信じている。

4年後、モントリオール五輪に万全に合わせてきたアメリカに対し、ソ連は準決勝でユーゴスラビアに不覚、アメリカはソ連と対戦することなく金メダルを獲得。
さらに4年後、モスクワ五輪にアメリカは現れず、金メダルはイタリアを下したユーゴスラビアが獲得。
その4年後のロサンゼルス五輪にソ連は現れず、金メダルはスペインを下したアメリカが獲得。
ミュンヘン以来の、五輪での米ソ対決は1988年のソウル五輪まで、16年待つことになる。

その頃、ヨーロッパはバスケットボールの第2のメッカになり、ヨーロッパ出身の選手がアメリカの大学からNBAに入るケースも目立つようになってきた。
ソウル五輪、アメリカの準決勝の相手はソ連。
ソ連にとっても8年振りの五輪の舞台、またソ連にはサボニス、トカチェンコという210㎝級のセンターや後にNBAでも活躍する選手も含まれていた。

そして76-82。
アメリカは16年前に続いてソ連に敗れたのである。

ソウルでの敗戦により学生選抜チームの限界を悟ったこと、ちょうどオープン化を図り、最高のスポーツ選手の集う祭典へと変貌を遂げつつある五輪の変革期にぶつかったこともあり、さらに4年後のバルセロナ五輪にはドリームチームが登場してくる。

アメリカとヨーロッパ勢やアルゼンチンとの力の差は縮まっている。
アテネ五輪のバスケットボール男子は、アルゼンチンがイタリアを下して優勝した。
3位決定戦でアメリカに敗れたリトアニアが4位、5位ギリシア、7位スペイン、11位にセルビアモンテネグロが入り、欧州勢の活躍が目立った。

大会直後のスポーツイラストレーテド誌は、次のように書いている。

70年代に自己満足していたアメリカ自動車産業に、日本メーカーが突如目覚ましコールを持ってやって来た。アメリカのバスケットボール界が、今そうしなければならないように、海外との競争から多くを学ばなければならなかった。

バスケットボールは、1992年のバルセロナ五輪にNBAのドリームチームが出場し、圧倒的な強さを示すとともに、世界中のバスケットボール界を変えた。

バルセロナ五輪に出場できなかったアルゼンチンが、バルセロナをきっかけに一貫教育を始め、アテネで金メダルを獲った。
一方、組織作りの上手い欧州は、NBAやNCAAにも負けない強力なリーグを作った。
欧州バスケットボールリーグ運合(ULEB)はスペインフランス、イタリアのプロリーグが中心となって1991年にバルセロナを本部に設立された。

アマチュアや女子も統括する国際バスケットボール違盟(FIBA)とは全く異なる組織で、男子プロバスケットの発展を目指している。

さて、1991年のソ連解体のあと、その後継であるロシアはバスケットボールでは振るわず、米露戦は、2000年のシドニーオ五輪の準々決勝で85-70でアメリカが勝利して以降ない。
ロシアはロンドン五輪で、ソ連時代のソウル五輪以来のメダル(銅)を獲ったが、リオデジャネイロ五輪の出場権は得られなかった。

筆者は、ソ連の後継はむしろリトアニアではないかと思っている。
ソ連時代もバスケットチームの主力は、リトアニア人だったことはよく知られていることで、ソ連から独立した1992年以降の8回の五輪にすべて出場し、銅メダル3回を含め、5大会で4強以上になっている。
 

男子の五輪最終予選は6月23日から4会場に分かれて競うが、リトアニアはホームに韓国、ベネズエラ、ポーランド、スロベニア、アンゴラを招き、1チームのみが東京へのチケットを手にする。

 

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April 20, 2019

前代未聞! 東京五輪のバスケット決勝は午前中試合開始

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は4月16日、オリンピックの競技スケジュールを発表した。
バスケットボールでは、5人制が7月26日から8月9日にかけてさいたまスーパーアリーナで開催。
決勝は男子が8日、女子が9日にいずれも11時30分から行われる。

 

五輪運営の鍵を握っているのは、米国のテレビ放映権料だ。
NBCテレビは開催地の決まっていない2032年までの五輪放映権を獲得しており、一大会あたり約1400億円。
そして、日本人のように夜通しで生中継のテレビかじりついて五輪を観るなんてことを米国人はしない。
就寝前にベッドで五輪を見る。これがベストだと思っている。
独占放映権を持つテレビ局は、米国時間の夜まで競技結果を放映せず、夜に録画を流す。
ネットのある生活をしていて、競技結果を夜まで知らないでいられようがない。
すると、テレビの録画放映は低視聴率にあえぐ。

 

これを打開する方法が、競技時間を米国に合わせることだ。
競泳は早々と午前中決勝が発表されていたが、バスケットボールの決勝、3位決定戦は米国時間に合わせることが公表された。
具体的にスケジュールを見てみよう。

 

2020年 東京五輪
男子決勝戦  2020年8月8日(土)11:30~13:30
男子3位決定戦2020年8月8日(土)20:00~22:30
女子決勝戦  2020年8月9日(日)11:30~14:00
女子3位決定戦2020年8月8日(土)16:00~18:00

 

男女の決勝、3位決定戦の4試合のうち、男女の決勝がいずれも午前11時30分開始。
しかも、男子決勝⇒女子3位決定戦⇒男子3位決定戦⇒翌日、女子決勝の順で行われる。
男子決勝が、午前中試合開始。そのあとに男女の3位決定戦をやるとは前代未聞だ。

 

バスケットボールは、東京五輪で行われるプログラムの中で、開会式、閉会式、陸上、競泳に次いで入場料が高価だ。
(1)開会式12000~30万円
(2)閉会式12000~22万円
(3)陸上3000~13万円
(4)競泳5800~10.8万円
(5)バスケット3000~10.8万円

 

それだけメディア(放送する側からしても)価値が高いということ。

 

では、過去にアジアで行われた五輪のバスケットボールは、どういった扱いを受けたか。

 

●1988年 ソウル五輪(試合開始時間)
男子決勝戦  1988年9月30日 12時00分
男子3位決定戦1988年9月29日 21時30分
女子決勝戦  1988年9月29日 12時00分
女子3位決定戦1988年9月28日 21時30分
*男女とも決勝は正午開始。3位決定戦は夜試合開始。

 

●2008年 北京五輪(試合開始時間)
男子決勝戦  2008年8月24日 14時00分
男子3位決定戦2008年8月24日 12時00分
女子決勝戦  2008年8月23日 22時00分
女子3位決定戦2008年9月23日 19時30分
*男子は3位決定戦、決勝共に昼間開催。女子は夜開催。これは中国女子が強豪であり、4強に残る可能性が高かったためと推測される。結果4位で終了している。

 

ちなみに申し上げるが、バスケットボールにNBAのスター、ドリームチームが参加するようになったのは1992年のバルセロナ五輪からだ。
ソウル五輪は、米国代表も大学生主体のチームで、準決勝でソビエトに敗れている。
米国代表はこの敗戦を契機にプロ選手で構成されたドリームチーム結成を決定しているのだが、このときのソ連代表には、アルヴィーダス・サボニスがいた。

 

サボニスは、ソ連崩壊後はリトアニア代表として1992年 バルセロナ、1996 アトランタの両五輪で銅メダルを獲得し、1995年に31歳でNBAのトレイルブレイザーズに入団している。
このとき息子のドマンタス・サボニスが生まれている。
ゴンザガ大でプレイしていたが、八村塁とも1季だけチームメートだったのではないか。

 

アジアで開催される五輪は、しばし米国のテレビの犠牲になる。
昨年年行われた平昌五輪では、フィギュアスケートは全種目が午前10時開始、遅くとも午後2時半ごろまでに終了するスケジュールが組まれていた。
そういえば羽生結弦の演技は会社で見たなあと言う人も多いだろう。
これは時差は14時間の米国東海岸のテレビ視聴者に合わせたもの。
米国人はベッドでフィギュア観戦をし、午前0時半に競技終了とともに寝ていたのだ。

 

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March 30, 2019

ゴンザガ大4強逃す マーチ・マッドネス MLBを超えるテレビ放映権

バスケットボール男子の全米大学選手権(NCAAトーナメント)は30日、準々決勝2試合が組まれ、八村塁を擁するゴンザガ大はアナハイムでのテキサス工科大戦に69-75で敗れた。

Hondacenter

▲試合会場だったホンダセンター

アメリカでは3月から4月にかけて、マーチ・マッドネスと呼ばれるカレッジ・バスケットボールのNCAAトーナメントが爆発的な人気を呼ぶ。 
日本式に言えば、大学生のバスケットボールの全国トーナメントに過ぎない。
カレッジバスケットの人気は、アメリカに住んでいないことにわかりにくいかもしれないが、1992年のこの時期にニューヨークにいたことがあるが、誰もがカレッジバスケットの話題をする、そんな状況だった。
大学バスケットは、スーパースター依存ではなく、チームプレーを重視する玄人むけといわれる。
この年はデューク大が優勝し、その中心選手だったクリスチャン・レイトナーが、バルセロナ五輪のドリームチームにアマチュア選手として唯一選ばれている。

米4大テレビネットワークの一つ、CBSとケーブルテレビ局のターナー・ブロードキャスティング(TBS)は、NCAAとマーチ・マッドネスのテレビ放映権とインターネット配信権について14年間で108億ドルという契約を結んでいる。
1シーズンあたり7億7714万ドル、日本円に直して854億円という高額になる。

これが、どのくらいの高額であるか、比較するのは難しいが、米NBC放送は2014年のソチ五輪、2016年リオデジャネイロ五輪、2018年平昌五輪、そして2020年の東京五輪の計4大会のアメリカ国内向け独占放送権を、43億8000万ドル(約4856億円)支払っている。
単純に4で割ると五輪一大会あたり1200億円。

そしてMLB(大リーグ)の放映権は、1シーズンあたりESPNが7億ドル、FOXが5億2,500万ドル
ESPN単独で見れば、マーチ・マッドネスよりもその額は低くなってしまう。

大学スポーツの放映権料が、MLB、NHLという4大プロスポーツを上回るようになったのはこの10年あまりのこと。
米国がいかにスポーツ大国といえども、優良ソフトは決して多くない。
それゆえに希少コンテンツの価格は高騰する。
多チャンネル時代を迎えて、他局との差別化、ブランド化は一層厳しいはずだ。
そこでは高視聴率が約束されたイベントが必要になる。
ワールドシリーズ、スーパーボウル、ゴルフのマスターズと同様に大学バスケもその中にあるということだ。

 

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