アンチドーピング

January 12, 2016

陸上円盤投げ女子の永遠に破ることのできない世界記録

英国陸上競技連盟(UKA)は11日、陸上界にはびこるドーピングや汚職スキャンダルを受けて、すべての世界記録を見直すことなどを求めた。UKAは、「クリーンな陸上競技のための宣言書」を掲げ、重大な薬物違反は永久追放処分にすべきであると主張している。【AFP=時事】

英国陸上競技連盟はいいことを言った。全面的に賛成だ。
昨年、ロシア陸上競技連盟が組織的なドーピングを隠蔽し、今年のリオ五輪に出場できない可能性もあることは、ご存じだろう。
今年に入って早々に、あまりドーピングとは縁がないように思われていたオランダの元選手が衝撃的な告白をした。

1984年ロサンゼルス五輪の陸上女子円盤投げの金メダリスト、リア・スタルマン(オランダ)が8日、地元テレビ番組で現役時代のドーピングを告白した。現役引退前の約2年半、筋力増強作用のあるアナボリックステロイドを使用したという。AP通信などが報じた。 ロス五輪後に引退した64歳のスタルマン元選手は「東欧の選手に対抗するためにドーピングを始めた。 当時は抜き打ち検査もなかったのでリスクがなかった」と述べたと言う。【共同】


このブログでは、随分前から1980年代の陸上競技、特に女子は、ドーピングによると思われるとんでもない記録が世界記録として残り、『永遠に破られることはない』と指摘している。
女子の円盤投げは、灰色の種目の最たるものだ。

Embabrank

女子円盤投げの世界歴代記録をご覧いただきたい。
1位から10位まですべてが1984年から1989年にかけて作られた記録であり、6人の選手が旧東ドイツ、残りの4人も共産主義だった東欧圏だ。
彼女らが記録を出した大会は自国もしくは隣国での大会、それだけドーピング検査が緩かったということだ。

先のドーピングを告白したスタルマン女史だが、自己ベストは1984年、ロス五輪の直前に出した71m22、この記録が世界歴代17位で、ロス五輪で金メダルを獲った時の記録はなんと65m36でしかない。
繰り返すが、ロス五輪で引退した彼女は、『現役引退前の約2年半、筋力増強作用のあるアナボリックステロイドを使用した』。
1982年からロス五輪までクスリ漬けになっても65m36しか投げられないのだ。
ロス五輪は、ご存じのように東側諸国がボイコットした大会で、女子円盤投げも本来のメダル候補が全く参加しなかった大会であり、スタルマン女史の金メダルは偶然の賜物でしかない。

IAAFが世界記録の見直しをしない限り、人類最後の日まで世界記録保持者であろうガブリエレ・ラインシュ。
1988年のソウル五輪。
東ドイツ、ソ連といった東欧諸国は、8年ぶりに五輪に参加した。
東ドイツから女子円盤投げにエントリーしたのは、マルティナ・ヘルマン、ダィアナ・ガンスキーとガブリエレ・ラインシュ。

マルティナ・ヘルマンの実績は抜群だった。
1983年の第1回世界陸上ヘルシンキ大会で優勝(68m94)、1987年第2回世界陸上ローマ大会で優勝(71m62)、そしてソウル五輪も72m30で制した。
ローマとソウルの記録はそれぞれ大会記録として今も残っている。
一方の世界記録保持者としてソウル五輪に臨んだガブリエレ・ラインシュは、70mを超えることができず、67m26がやっと、7位で五輪を終えた。
とは言え、記録をよく見てほしい。
2年半クスリ漬けだったリア・スタルマンのロス五輪金メダル記録65m36を2m近く超えているのだ。

東ドイツやソ連といった国がどれだけ組織的なドーピングしていたかが判るだろう。

2012年のロンドン五輪。
女子円盤投げの競技終了後の結果はこうだった。
  ①サンドラ・ペルコビッチ(クロアチア)69m11
  ②ダリア・ピシチャルニコワ(ロシア) 67m56
  ③李艶鳳(中国)67m22

ところが、2012年5月に採取したピシチャルニコワの検体からアナボリックステロイドのオキサンドロロンの陽性反応が検出された。IAAFは出場停止処分とし、2013年4月には、ロシア陸上競技連盟は10年間の出場停止処分とし、2012年5月以降の記録抹消とした。
そして、ロンドン五輪で獲得した銀メダルを剥奪した。
その結果、メダル獲得者は下記のようになった。

  ①サンドラ・ペルコビッチ(クロアチア)69.11m
  ②李艶鳳(中国)67.22m
  ③ヤレリス・バリオス(キューバ)66.38m

ピシチャルニコワには大きな前科があった。
2007年の大阪世界陸上競技選手権大会では自己ベストを更新する65m78を記録し、銀メダルを獲得するが、ドーピング違反の嫌疑をかけられ北京五輪には参加できなかった。
北京五輪後の10月、ピシャルニコワは薬物違反があったと認定され、他の6人のロシア人選手とともに2年9か月の出場停止処分を受け、大阪世界陸上の銀メダルも剥奪された。

ピシチャルニコワ自己ベストは2012年の70m69。
もちろん、正式な記録ではなくなっているが、世界歴代21位に相当する。
この選手のような10年間の出場停止を受けるような、悪質なドーピングを繰り返す選手よりもベスト記録が上の選手が20人以上いるのが、陸上競技の世界なのだ。

先に書いたようにほとんど1980年代の永遠に破ることのできない世界記録は、当時の検体が残っていないため、今この時代にドーピングを立証することは難しい。
昨年、IAAF会長にセバスチャン・コーが就いた。
陸上競技のすべての世界記録を見直すこと スポーツ界に根付く多くのタブーを壊してきたコーの手腕に期待をしたい。


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November 17, 2015

ロシア選手がスピードスケートで世界新もドーピングの影がつきまとう

11月15日にカナダ・カルガリーで行われたスピードスケートのW杯男子500mで、パベル・クリズニコフ(ロシア21歳)が34.00の世界新記録を出した。
これまでの記録は、カナダのジェレミー・ウォザースプーンが2007年に出した34.03。
この記録をを8年ぶりに更新した。

ロシア、世界新と聞くといやな気分になる人も多いだろう。
陸上競技でドーピング疑惑に揺れるロシア。
陸上以外の競技の選手も当然白い目で見られている。

加えてパベル・クリズニコフは、2012年に帯広で行われた世界ジュニア選手権で、1000mに優勝、500mも3位に入ったが、レース後にメチルヘキサナミンに陽性となり、2年間の資格停止処分となった。
この2年の間には、地元開催のソチ五輪があったことは言うまでもない。

クリズニコフが陽性となったメチルヘキサナミンは、鼻づまり治療のための鼻孔充血抑制薬として用いられていた薬だが、興奮剤としてWADAによって禁止薬物に加えられた。
クリズニコフは、陽性発覚後、風邪のための鼻スプレーの薬物として用いたと主張した。が、当然通らなかった。

ドーピングによる資格停止が解けて、今年2月、オランダ・ヘーレンフェインで行われた世界距離別選手権に出場したパベル・クリズニコフは、①34.38、②34.54の驚異的な記録をそろえて初制覇をしており、現役最強のスプリンターであることは誰しもが認めること。

ご存知のように、ソチ五輪の男子のスピードスケートはオランダが圧勝し、日本もロシアも惨敗だった。
クリズニコフもどこかで唇をかみしめていたのかもしれない。

とはいうものの、今回のロシアのように大掛かりなドーピングが発覚すると、その国の他競技にまで影響が及ぼされるいい例だ。

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November 11, 2015

陸上界激震 ロシア集団ドーピング発覚で五輪出場停止!?

今年の夏 北京で行われた世界陸上に見入っていた人ならアリシア・モンタノの名前を憶えているかもしれない。
モンタノは、昨年の6月の全米陸上に妊娠9ヶ月で、800mを走ったその人だ。
北京では予選で転んでしまい、結果は出なかったが、TBSの世界陸上の番宣?VTRには身重で走る映像が何度も使われたので、ああと思う人もいるだろう。

今、再びモンタノが注目されている。
というのもロシアの陸上界の組織的なドーピング問題が、にわかに騒がしくなってきた。
特にロンドン五輪女子800mの金メダリスト マリヤ・サビノワと銅メダリスト エカテリーナ・ポイストゴワ(ともにロシア)が失格となりそうなのだ。
2人分順位が繰り上がるかもしれない4位以降の選手はちょっとドキドキしているかもしれない。
その内のひとり、ロンドン五輪でこの種目5位だったのがアリシア・モンタノなのだ。
世界お中距離は層が厚く、モンタノも五輪のメダルは初めてとなる。

そして、世界中の陸上ファンが注目しているのは、あのキャスター・セメンヤ(南アフリカ)が銀メダルから金メダルに繰り上がるか?ということだ。
セメンヤは2009年のベルリン世界陸上の同種目の金メダリスト。
過去にいろいろあった選手なのだが、あまりセメンヤが金メダリストになることに複雑な陸上ファンも多いようだ。

●ロンドン五輪陸上女子800m決勝
①マリヤ・サビノワ (RUS) 1:56.19
②キャスター・セメンヤ(RSA) 1:57.23
③エカテリーナ・ポイストゴワ (RUS) 1:57.23

凄い数字をお見せしよう。
上記の3選手の800mのベスト記録とそれが世界歴代で何位であるかだ。

キャスター・セメンヤ 1:55.45 世界歴代13位
マリヤ・サビノワ 1:55.87 世界歴代22位
エカテリーナ・ポイストゴワ 1:56.67 世界歴代56位

世界記録はヤルミラ・クラトフビロバ(チェコスロバキア=当時)の1:53.28。
1983年の記録だ。
この当時のドーピングの凄さに比べれば、サビノワの1分56秒台なんてかわいいもんだ。

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November 25, 2014

1500m自由形五輪金メダリスト 孫楊のドーピング問題は適切な処置だろうか。

中国反ドーピング機関(CHINADA)は24日、孫楊が5月17日に青島で行われた仁川アジア大会の選考会を兼ねた中国選手権で、禁止薬物のトリメタジジンに陽性反応を示していたと発表した。
トリメタジジンは狭心症や目まい、耳鳴りなどの治療に使われる薬の成分だが、興奮剤としても用いられ、今年1月から世界アンチドーピング機関(WADA)の禁止薬物リストに加えられている。
ただ、競技期間中の服用が禁止されている薬物で、競技期間以外は服用が許されている。

 孫楊は、中国選手権で200m、400m、1500mの3種目に優勝した。
 5月12日 200m自由形 ①1分46秒04
 5月14日 400m自由形 ①3分45秒12
 5月17日 1500m自由形 ①15分01秒33

ところが、詳細は公表されていないが、17日の1500mのあとのドーピング検査でトリメタジジンに陽性反応が見つかったようだ。
通常こうした場合、優勝した3種目の記録は認められない。
そのため、アジア大会の中国代表の座も手にすることはできなかったはずだ。

ことしの2月に行われたソチ五輪でも、孫楊と同じくトリメタジジンが検出された選手がいた。
ノルディックスキー距離女子のマリナ・リソゴール(ウクライナ)にトリメタジジンが検出されると、IOCは、リソゴールを失格、大会から追放という処分を取っている。

ところが、孫楊の場合は、17日の1500m自由形の優勝が取り消されただけで、12日の200m、14日の400m自由形1位の記録はそのまま、しかも1500mも合わせて、3種目で孫楊を仁川アジア大会の中国代表に選んだのだ。
そして孫楊は、仁川アジア大会で400m、1500m自由形、4×100mリレーで金メダルを獲得している。
ドーピング違反が見つかったのが、中国の国内選手権であるため五輪とは異なるルールで処分を受ける、と言う言い方もできるだろう。
だが、それが国際大会(アジア大会)の選考レースである場合、その理屈は通らないのではないか。

そして、孫楊は5月17日から8月16日まで3カ月間の出場停止処分を受けた。
報道には書いていないが、中国の水泳協会か、中国の五輪委員会が出した処分だろう。
本人は7月に「治療目的で服用していたもので、トリメタジジンが禁止薬物ということは知らなかった」と釈明している。
心臓病の治療薬として服用していたと言っているそうだが、心臓に疾患を抱える自由形の選手を私は知らない
また、3カ月間の出場停止処分は短いとは思はないが、孫楊ほどの大選手に対する処分が、すぐに公表されず、アジア大会も終わって2カ月も経ってから公表されるとはあまりにおかしくはないだろうか?

北京五輪を成功させ、2022年冬季五輪の北京招致も確実視される中、不透明なドーピング騒動は、中国のスポーツ界にとってなにひとつ良いことはないと思うのだが…。



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July 31, 2012

ドーピングか? 葉詩文の驚異的世界新

ロンドン五輪競泳女子400m個人メドレーで、4分28秒43の世界新記録をマークして金メダルを獲得した中国の葉詩文のドーピング疑惑が持ち上がっている。

というのも男子の個人メドレーに優勝したライアン・ロクテの最後の自由形の記録が58秒65であるのに対し、葉詩文が58秒68とほとんど変わらなかったというのだ。
とくに最後の50mは、ロクテが29秒10、葉詩文が28秒43とロクテを上回ってしまう。
いくらなんでもそれはあり得ない。

葉詩文の昨年の世界水泳の同種目の記録が4分35秒78で5位だったことからも、いくら伸び盛りの16歳でも、1年間で7秒も記録を縮めることは考えにくい。

前世界記録 ステファニー•ライス (AUS)4分29秒45 北京五輪 2008年8月10日
葉詩文の金メダルタイム 4分28秒43
ライアン・ロクテの金メダルタイム 4分5秒18
萩野公介の銅メダルタイム 4分8秒94

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June 18, 2012

アジアの陸上界に根を降ろす中国女子の怪記録

ロンドン五輪の陸上短距離に出場する福島千里は100m、200m両種目の日本記録保持者だ。
100mの日本記録は2010年4月29日の織田記念国際陸上で出した11秒21。
今季のベストは今年の織田記念で出した11秒34。
とはいうものの、男女ともにジャマイカとアメリカが圧倒的に強い短距離界にあって、福島の記録は今季世界80位にも入らない。
だが、五輪や世界陸上のように1カ国3名のエントリーとして各国の4番目以降の選手を切っていくと世界33位くらいになる。とはいうものの、目標とする準決勝進出のためにはかなり記録を縮めなければならない。

2010年広州アジア大会100m、200m金メダルの福島だから、当然のことながらアジアで福島の記録を上回る選手はいない。
福島の次に中国の韋永麗が11秒41、そして日本の16歳土井杏南奈が11秒43で続く。

近年、アジアの陸上女子短距離の選手で、最も実績を挙げた選手といえばスサンティカ・ジャヤシンゲだろう。
2000年のシドニー五輪で、スリランカ人として1948年以来52年ぶりとなるメダル(銅メダル)を獲った選手だ。
その3年前のアテネ世界陸上、さらには2009年の大阪世界陸上の200mでも銀と銅メダルを獲っている。
200mを得意とし、100mでの実績は高くない。
が、100mの自己ベストは11秒04。
福島の日本記録を0.2秒近く上回る大変な記録だ。

ところが、ジャヤシンゲの11秒04はアジア記録ではない。
100mに10秒台というとんでもない記録を出した選手が2人もいたのだ。
一人は中国の李雪梅で10秒79、もう一人も中国の劉暁梅で10秒89。
この2つの記録は今から15年前の1997年に出されたものだ。

女子の100m世界記録は、フローレンス・ジョイナー(故人)の10秒49、1988年のソウル五輪の直前に出された記録だ。
女子の陸上では1980年代に出された世界記録がたくさん残っている。
当時の東ドイツやソ連の組織的なドーピングの残滓であると見られている。


同様に女子のアジア記録は、1990年代に中国人選手によって出されたとんでもない不滅の記録がたくさんあるのだ。
中国では日本の国体にあたる全国運動会(通称全運)が4年に一度開催される。
日本の国体と大きく違うのは、優勝者がほぼ五輪代表に選ばれること、そして表にウラに報奨金と称する大金が動くことだ。
選手は出身の省(広東とか河北とか)、直轄市(北京とか上海)、自治区(内モンゴルとか新彊ウイグルとか)ごとに争い、勝ったときに支払われるその母体からの報奨金は、五輪のそれを上回ったり、家が贈られたりするとも言われている。


下記の女子アジア記録の表をみてほしい。
中国人によるアジア記録は、1993年と1997年に集中している。
1993年、1997年ともに全国運動会の開催された年だ。*
1994年の広島アジア大会で中国競泳陣の大規模な組織的ドーピングが摘発され、2000年のシドニー五輪の開会直前には、ドーピング発覚を恐れた中国選手団が、大幅な選手の入れ替えを行うといった事件を経て、中国のドーピングは表には出にくくなるのだが、1993・1997年の全国運動会、特に陸上競技は、勝つためには手段は選ぶことはしないクスリ漬けだった、ということだろう。


*ジョイナーの10秒49を始めとする驚異的な世界記録は、ドーピングによるものではないかとの疑惑は誰しもが持っている。が、尿検体が既になく再検証することが出来ないため、記録を覆すことは出来ないでいる。


●陸上女子アジア記録 トラック競技等
100m 10.79 李雪梅 中国 上海全運 1997.10.18
200m 22.01 李雪梅 中国 上海全運 1997.10.22
400m 49.81 馬玉琴 中国 北京全運 1993.09.11
800m 1:55.5 東劉  中国 北京全運 1993.09.09
1500m 3:50.5 曲雲霞 中国 北京全運 1993.09.11
5000m 14:28.1 姜波 中国 上海全運 1997.10.23
10000m 29:19.12 王軍霞 北京全運 1993.09.08
マラソン 2:19:12 野口みずき 日本 ベルリン 2005.09.25

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October 13, 2010

北京五輪銅メダリストが英連邦競技大会でドーピング

現在インドのデリーで、英連邦競技大会が開催されている。
英連邦競技大会とは、かつての大英帝国がその前身となって発足した英国とその植民地であった独立の主権国家から成る緩やかな国家連合による競技大会のことをいい、五輪やアジア大会と同じ4年に一度開催されている。
アジアでの開催は、1998年のクアラルンプールについで2度目で、将来の五輪招致をめざすインドの試金石となっている。

そんな英連邦競技大会で陸上女子100mの金メダリストのドーピングが発覚し、メダル剥奪及び記録の抹消が決まった。
陸上女子100mは10月7日に行われ次のような結果だった。

1.OLUDAMOLA OSAYOMI (ナイジェリア)11.32
2.NATASHA MAYERS (セントビンセント・グレナディーン)11.37
3.KATHERINE ENDACOTT (イングランド)11.44

記録的には平凡な記録だ。
このOSAYOMIがどんな記録を過去に出しているか調べてみると

○北京五輪
100m 準決勝敗退 11.44(16人中13位)
200m 2次予選敗退 23.27
100×4リレーでは43.04を出して ロシア、ベルギーについで銅メダルを獲得している。
が、北京の100×4リレーは、アメリカ、トリニダード・トバゴ、フランスなどが予選で失格し、決勝ではイギリス、ジャマイカ、ポーランドが棄権もしくは失格した荒れたレースだった。
ナイジェリアにとっては棚ぼたの銅メダルだったのである。

それより以前、大阪で行われた2007年の世界陸上の100mでは、決勝に残るも8位(11.26)という結果が残っている。
いわば超一流ではない選手だ。
そのレベルの選手でもドーピングが普通に行われている。
その証拠にはならないだろうか。

OSAYOMIも含めて今大会でのドーピング発覚者は3人。
もともと英連邦大会は、英連邦域内における関係国間の結束を深め、親善に役立てようとの目的で始まったはずだ。
にもかかわらず、勝利至上主義の重圧によるドーピングのまん延など、抱えている課題は五輪と同じになっている。

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October 08, 2010

シェリーアン・フレーザーやっぱりドーピング

国際陸連は6日、北京五輪と09年世界選手権の陸上女子100メートル金メダリスト、シェリーアン・フレーザー(ジャマイカ)に、ドーピング(禁止薬物使用)違反で6カ月の出場停止処分を科した。
ロイター通信が報じた。
7月8日に暫定処分を受けており、競技会への出場は来年1月7日から可能になる(時事通信)。


シェリーアン・フレーザーについては、過去にドーピングの可能性があると当ブログで指摘したが、当たったようだ。
フレーザーは5月に中国・上海で行われたダイヤモンド・リーグ第2戦の検査で、鎮痛剤のオキシコドンに陽性反応を示した。
本人は禁止薬物とは知らず、歯の痛みを抑えるために服用したとしていた。

今後新たなドーピング違反が発覚するか、6ヶ月の出場停止のみで終わるのか注目していきたい。


筆者が指摘していた文章を再録すると下記のようになる。


シェリーアン・フレーザーは、昨年北京五輪の100mでは10秒78で金メダルを獲った。
この記録はトーリ・エドワードと並んで2008年のランキングトップの記録なのだが、実は2007年まで、彼女はは無名の選手だった。

2007年に大阪で開催された世界陸上、シェリーアン・フレーザーはジャマイカチームに帯同していたが、出場したのは4×100リレーの予選のみ。
リレーの決勝も、個人種目も全く出場しなかった。
100mの年ごとのベストは次のようになる。

2006年 11.74
2007年 11.31 ジャマイカ代表補欠
2008年 10.78 北京五輪金メダル
2009年 10.73 ベルリン世界陸上金メダル
▲1年間に0秒53縮めている

筆者は陸上競技の専門家ではないので判らないが、果たして女子選手が100mで、1年間に0秒5も縮めることなどあるのだろうか。
まるでジョイナーのようだ。

ジョイナーといえば、年度別の記録は今となってはなかなか出てこないが、銀メダルだったロス五輪と金メダルを獲ったソウル五輪の200mの比較が出来る。
1984年 ロス五輪銀メダル  22秒04
1988年 ソウル五輪金メダル 21秒34
▲4年間で0秒7縮めている


●参考記事
100mの自己記録を1年間に0.5秒も縮められるものか?

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April 19, 2010

塚田真希9連覇達成 ライバルの佟文はドーピング発覚

4月18日全日本女子柔道選手権が行われ、アテネ五輪金78㎏超級メダリストの塚田真希が、決勝で杉本美香に一本勝ちし9連覇を達成した。
最初の優勝は20歳のときで、現在28歳。
9連覇は男子の山下泰裕と並ぶ前人未到の快挙である。
ちなみに女子で塚田に続く記録には、田辺陽子の6連覇がある。

各階級2枠がある今年9月に東京で開催される世界柔道選手権に、塚田は78㎏超級にまず決定、無差別級は塚田、杉本美香、田知本愛の3人から2人を試合直前に選ぶことになった。

塚田といえば、北京五輪での佟文との決勝を思い出す。
有効を取ってリードしながら、終了間際に逆転負けを喫したあの試合だ。
金メダルを決めた、あの佟文の勝ち誇った笑みはなかなか忘れられない。


その佟文だが、昨年のロッテルダムで行われた世界柔道で78㎏超級3連覇を果たしていたが、このほど同選手権のドーピング検査で陽性反応を示し、国際柔道連盟(IJF)が世界選手権優勝タイトルの剥奪と出場停止2年間の処分を下す方針を決めた。
禁止薬物の詳細は明らかになっていないが、佟文は事情聴取に対し、「中国で食べた豚肉に禁止薬物が入っていた」などと反論しているという。

佟文のドーピング疑惑は以前から噂されていた。
中国では、4年に一度、五輪の翌年に中華人民共和国全国運動会が開催されている。日本の国体と言う人もいるが、その盛り上がりは国体の比ではない。
高額の報奨金が舞い、薬物、買収、不正はなんでもありともいわれるスポーツの祭典だ。
中国代表の選手の中には、世界選手権よりも全国運動会を優先する選手も多い。

であるにも拘らず、佟文は昨年のこの大会(2009年10月開催)では78㎏超級の試合当日にケガをしたとして、救急車で運ばれ、試合会場に現れなかった。
ドーピング違反が発覚することを恐れ、逃げたと思われる。
この大会以降、試合に出場していなかった。
仮に中国国内でドーピングが発覚していたら、選手生命は絶たれ、おそらくそれ以上の目に遭っていただろう。
問題は、北京五輪の際に既に薬物に染まっていたかだ。

Tsukadamaki


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August 20, 2009

2009年のセメンヤと 1983年のクラトフビロバ

ベルリンで開催中の陸上世界選手権女子800mで圧倒的な強さで初優勝したキャスター・セメンヤに対し、IAAFが性別検査の調査中であることが分かった。
つまりは、セメンヤは男子選手ではないか?という疑いが持たれている、ということだ。
セメンヤは、南アフリカ国籍の18歳。
確かに容姿をみれば少年のようにも見える。
もし、男性であれば記録を抹消することになるが、相手は18歳、慎重な対応が求められる。

女子選手だと思ったら、男子だった。
こういった例は今始まった問題ではない。
特に陸上競技では昔からある。

1936年
ベルリンのオリンピアシュタディオンで開催されたベルリン五輪。
1932年のロサンゼルス五輪女子100mで金メダルを獲った、サラ・ウォルシュ(アメリカ)は、ベルリンでの連覇を目指したが銀メダルに終わった。
ところが、40年以上経った1980年 サラは強盗に襲われ殺されてしまった。
この検死の際、彼女は外見は女性であったが、体には睾丸もあった両性具有者であることがわかった。
1992年までIAAFは両性具有者が女子の競技に出場することを認めていなかったが、現在もサラの記録、名誉とも抹消されていない。

クラトフビロワ
第1回の世界陸上が開催されたのは1983年 東西冷戦の華やかし頃のヘルシンキ。
このとき、チェコスロバキア(当時)に、とんでもない怪物選手がいた。
陸上や競泳のようなタイムを競う競技においては、時が経つに連れて記録は向上するというのが一般的だ。
例えば第1回世界陸上の男子100mの優勝はカール・ルイスで、タイムは何と10秒07。
先日世界をあっと言わせたベルリンのボルトの優勝タイムは9秒58。
なんと26年間で0秒49縮めてことになる。

Kratochvilovaところが、1983年当時は前述のように東西冷戦華やかりし時代。
東側諸国は組織的なドーピングによってメダルを浚い、国威発揚を諮っていた。
1980年のモスクワ五輪200mで銀メダルを獲っていたが、世界的な選手というほどではなかったヤルミラ・クラトフビロバ(チェコスロバキア)は、1983年になって急激に強くなった。
このとき彼女は32歳。
ヘルシンキの世界陸上では400mと800mに金メダルを獲った、のだが、その記録が26年経っても誰も足許にも及ばない不滅の大記録なのだ。
800mは1分54秒68、ヘルシンキの直前に彼女が出した1分53秒21の世界記録には及ばなかったが、男子かもしれない言われているセメンヤの昨日の記録 1分55秒45と比べると凄さが判るだろう。

セメンヤの昨日の記録は今季世界最高記録であるけれど、世界歴代13位という記録でしかない。
もちろん、現在も世界記録はクラトフビロバの1分53秒21。

この当時東ドイツ(当時)には、マリタ・コッホという短距離のスーパースターがいた。
コッホの400mのベストは47秒60。
これもまた、誰も足許にも及ばない不滅の世界記録なのだが、このコッホが、このシーズン(1983年)は400mではクラトフビロバには、適わない、とヘルシンキでは400mにエントリーを見送ったくらいクラトフビロバは充実していた。

ベルリンの世界陸上 女子400mではアメリカのサンヤ・リチャーズが自身初となる世界大会金メダルを獲った。
この記録が今季世界最高記録である49秒00。
26年前のクラトフビロバの47秒99と比べてみて欲しい。

クラトフビロバの当時の画像を見つけてきた。(上)
胸は全くなく、脚は男子選手よりも筋肉が発達していた。
当時から陸上関係者の誰もがドーピング違反を疑っていたが、今となっては立証できない。

1983年女子400m
1.47.99 ヤルミラ・クラトフビロワ (チェコスロバキア) 世界歴代2位
2.48.59 タタナ・コチェンボワ (チェコスロバキア)
3.49.19 マリヤ・ピニギナ (ソビエト)

1983年女子800m
1.1:54.68 ヤルミラ・クラトフビロワ (チェコスロバキア) 世界歴代3位相当(当時)
2.1:56.11 リューボフ・グリーナ (ソ連)
3.1:57.58 エカテリーナ・ポドコパエワ (ソ連)

2009年女子400m
1.49.00 サンヤ・リチャーズ (アメリカ) 今季世界最高 
2.49.32 シェリカ・ウィリアムズ (ジャマイカ)
3.49.71 Antonina Krivoshapka (ロシア)
サンヤ・リチャーズの自己ベストは48.70(世界歴代7位)

2009年女子800m
1.1:55.45 キャスター・セメンヤ (南アフリカ) 今季世界最高 世界歴代13位
2.1:57.90 Jジェプコスゲイ (ケニヤ)
3.1:57.93 ジェニファー・メドウズ (イギリス)

●参考記事
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録 400mリレー
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録
陸上女子の永遠に破ることのできない世界記録 (中国人選手編)

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